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No.21

update.2017.03.10

京大の「知」を支える、大学附属図書館を探検〜後編

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こんにちは、ザッツ・京大編集部です。
今号は前回に引き続き、京大が世界に誇る図書館をご紹介します。
(前篇をまだご覧になってない方は探してみてくださいね)
それにしても大学附属図書館の内部、すごかったですねぇ。まさか身近に国宝が保管されているとは夢にも思いませんでした。(詳しくは前号をご覧ください)
しかし驚くのはまだ早い! なぜなら、大学附属図書館ならではのサービスや活用法があるから。
それでは早速、職員の皆さんに突撃取材スタート!

これだけの膨大な本の数、
一体どうやって増えたり減ったりしているんだろう・・・?

膨大な蔵書の影に、「学生に響く」図書選びの達人アリ!

「図書選びの達人」 -情報管理課課長補佐(兼)資料管理掛掛長 那須一夫さん

広報B: 達人、附属図書館にある大量の図書って、どのように選ばれるのでしょうか?
達人: 主には、この「週刊新刊全点案内」から、現在、館内の職員5名で選んでいます。


達人必須アイテム「週刊新刊全点案内」

これが毎週届くので、そのつどチェックし、購入する図書をリストアップします。そのリストを選書委員の先生にチェックしてもらって発注、という流れです。大体2週間に1回発注するのですが、コレ!という本を選び出すのはかなり大変です・・・。
洋書は私が選んでいますが、外国語ということもあり、選定は難しいですね。

広報B: 図書を選定する際のポイントはなんでしょう?
達人: この附属図書館は、基本、学部学生をメインターゲットとしているため、
主には彼らの自学自習に適うものを基準に選んでいます。
「学生のためになるもの」で、かつ「さまざまなジャンルをバランス良く網羅できること」を
心がけています。

広報B:学生が欲しい本があったら、リクエストを聞いてもらえる方法はあるのですか?

達人: もちろん!学生にはぜひ活用して欲しい「学生希望図書」申込み制度があります
(※本学の学部生、院生(聴講生、研修員、研究生含む)のみ利用可)。
WEBサイト上のフォーマットでリクエストを寄せて頂ければ、館内選書基準に照らし合わせて、
購入するかどうかを決定します。
学生さんからのリクエストにはできる限り応えるようにしていますよ。
今はWEBサイト上のみでリクエストを受けていますが、
もっと広い間口で学生からリクエストを寄せてもらえる仕組みができたらと思います。
学生さん、もっと図書館のリクエストサービスを活用して!

広報B:いや~、本当に大変な作業ですね・・・! 達人、この業務におけるモットーは何ですか?
達人: 学生たちにとって役に立つ図書を用意するために、「選ばなければならない宿命」と思って、
日々全力で選んでいます!

学生にとって価値ある図書選びを宿命とする、そんな図書選びの達人の絶え間なき努力があるからこそ、これだけの充実した蔵書が日々スタンバイされているのですね!

それにしても実にたくさんの蔵書数。
効率的に探し出す便利な機能はないのかな・・・?

お望みの図書も資料も、「KULINE」でサクサク検索!

京都大学蔵書検索「KULINE」では、本学の所蔵するたくさんの図書や雑誌がどの図書館・図書室にあるかを探すことができます。書籍のほか、電子ジャーナルや電子ブックを探すこともできます。
また、携帯電話やスマホからも利用可能です。

へ~、こんな便利なサービスなんて知らなかった!

これなら、広い図書館内をさまようことなく、効率的に探すことができますね。

「KULINE」の使い方など、もっと上手な図書館の使い方を学べる場はあるのかな?
図書館のかしこい使い方を学びたいなら!

お悩み別の「講習会」や「講座」を活用しよう!

附属図書館では、学生、教職員のみなさんが、図書館と、資料や電子リソースを使いこなして研究や学習に効果的に活かしていただくための、さまざまな講習会や講座を行っています。論文やレポートに取り組む「前」に受講して、検索・資料入手の基礎をしっかり身につけておきましょう。
▼図書館の催しをまとめてチェック!月ごとの講習会・イベントカレンダーを公開しています!
詳しくはこちら。
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/support/index.php?content_id=4
こんなにバラエティ豊かな催しがあるんですね!
これは使わない手はない!

検索の達人に学ぶ! 編集長、お役立ち講座を体験!

・・・ということで、「雑誌論文入門講座」を体験しました!
「1・2回生のための雑誌論文入門講座 -ワンランク上のレポートを目指そう!-」
この日の講師は、「検索の達人」 -情報サービス課参考調査掛掛員 梶谷春佳さん
達人: 資料探しを本だけで済ませていませんか? それだけでは不十分! 雑誌論文も探しましょう。雑誌論文には、図書よりも新しい研究成果などが掲載されています。
講座を通して、雑誌論文活用の基礎をマスターしましょう!

【この日の講座内容はこんな流れ】

  1. 雑誌と論文の基礎知識
  2. 雑誌・電子ジャーナルの検索
  3. 雑誌論文の検索
  4. 京都大学で手に入らないときには・・・
  5. 文献リストの作成、引用のルール
  6. 館内雑誌ツアー


(左)講習会は、3階の講習会室にて実施。当館ウグイス嬢の梶谷さん(広報Y:あれ? 達人じゃなかった?)による館内放送も流れるので、当日飛び入り参加もOK。(中央)珍しく真剣な広報B。検索のコツや便利な裏技なども教えてくれます。確認問題など実践も交えながら教えてくれるから、身につきやすい内容。(右)ダントツで手のかかる広報Bに優しく教えてくれる達人。丁寧に教えてくれるから心強い!

達人: 雑誌論文の検索スキル取得は、早ければ早いほど役に立ちます。とはいえ、自力でスキルアップするのは難しいもの。ぜひ図書館の講座を活用して、論文やレポートに生かしてください!
これを知ってるのと知らないのとでは、論文やレポートに大きな差がでること間違いなし!
▼その他、附属図書館で実施されている各種講習会について、詳しくはこちら。
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/mainlib/service/workshops

これだけたくさんの資料がある附属図書館だけど、検索しても、ここにない資料があったとしたら・・・
やっぱり諦めて他の図書館に探しに行くしかないのかなあ・・・。便利なサービスはないのでしょうか?

京大にない資料も、「相互利用サービス」でカンタンにゲット!


「相互利用の達人」 -情報サービス課相互利用掛掛員 大西賢人さん

達人: 「相互利用サービス」を活用すれば、京都大学が所蔵していない資料や、資料の一部の複写を他の図書館から取り寄せることができます(有料)。(※このサービスの利用は学内者限定)
京大にない資料や図書があって困った時は、ぜひこのサービスを利用してください。
1階の相互利用カウンター、またはオンラインでお申し込みできますよ。

相互利用サービスには次の3種類があります。

「訪問利用」・・・他大学の図書館へ行って、閲覧する(紹介状を発行)
「文献複写」・・・他大学の図書館から文献のコピーを取り寄せる(有料)
「図書借用」・・・他大学の図書館から図書を取り寄せる(有料)
海外の資料だって取り寄せることができる、便利なサービスなんですよ。自力で探し出すのは時間も労力もかかるもの。でもこのサービスなら、国内の場合、1週間程でお望みの資料が手に入るんです!ぜひ活用してください!

(左)相互利用サービスの流れについて、丁寧に教えてくれる達人。とりあえず困った時は、このカウンターに立ち寄ってみて。(右)この看板が目印。

やー、便利なサービスがあるんですね。試験勉強中や論文執筆中に、文献収集の時間短縮できるのは助かりますよね!

そういえば・・・、これまでのサービスはほとんどが学内者向けのもの。学外の人でも、附属図書館を有効活用する方法ってあるのかなあ。こんな素晴らしい施設、学外の方でも利用できる方法があればぜひお教えしたい!

貴重書から研究成果まで!
世のため人のためになる京大の知を、広く発信!

「貴重書の電子化の達人」 -情報管理課電子情報掛掛長 大村明美さん
「研究成果論文の電子化の達人」 -情報管理課電子情報掛掛員 東出善史子さん


左から、「貴重書の電子化の達人」大村さん、「研究成果論文の電子化の達人」東出さん

広報B: マスターから、今、図書館は貴重書や研究成果論文の電子化に特に力を入れていると聞きました。
大村達人:はい。私たちの所属する電子情報掛では、主に次の二つを手がけています。
貴重書の画像をデータベース化する!
京大の研究成果、論文を電子化「リポジトリ」する!

(1)「自宅にいながら、国宝の画像が見れる!」
大村達人: 先日の取材でBさんも入った貴重書庫の資料等は、貴重なものゆえ、保存の観点から、なかなか一般の人は見ることが出来ません。持ち出すことも出来ないですし・・・
ですが、せっかくの価値あるものですし、もっと広くたくさんの人に見ていただきたい!そういう思いから電子化事業がスタートし、すでに20年近く続いています。
国宝「今昔物語集」や重要文化財40点をはじめ、これまでに電子化した資料は約4,000点におよびます。それらはインターネット上で公開され、誰でも見ることができます。
広報B:どういう方法でデジタル化をしているのですか?
大村達人:まず、原本をカラーマイクロフィルムに撮影し、それをスキャンしてデータ化します。ただ、カラーマイクロフィルムの生産が終了したため、昨年度からはデジカメで原本を直接撮影するようになりました。
保存することはもちろんですが、それを公開することも図書館の役目。
「こんな古典資料が、おうちでも見れる!」って、ほとんど知られてない「実は!」な図書館の魅力です。図書館でデータ化している画像は、出版、放送や教育現場での活用など、いろいろなところに提供もしていますよ。

(2)「あの山中教授のノーベル賞受賞論文だって見れちゃう!」
広報B:研究成果論文の電子化にも力を入れているんですよね?
東出達人: そうなんです! その理念となっているのが、「オープンアクセス」という考え方で、現在、学術界で広く促進されています。「すばらしい研究成果などの学術情報を誰もが入手できるように、広く世の中に向けて公開していく」動きで、学術研究の促進が目的。最近の動きとしては、2013年度に、文部科学省より博士学位論文のインターネット公開が義務化されました。
京大でも、「京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)」を構築し、発表された研究成果を続々とインターネット上で公開していますよ。

広報B:てことは、京大出身の有名な先生方の論文なんかも見れちゃうのですか・・・?

東出達人: もちろん!例えば、ノーベル賞を受賞された山中伸弥先生や、益川敏英先生の受賞論文なんかも見れちゃいます!京大のすばらしい研究成果をたくさんの人に見て欲しい!と思います。
掲載誌の出版社に公開可否・条件を確認する・・・など、実際の作業の中では、大変なこともありますが、できる限り公開していきたいと考えています。これほどまでに、日々すばらしい研究成果が発表されるのは、京大のスゴイところですしね!


研究成果も京大の宝物。それをここ図書館から世の中で発信しているんですね。
これも活用しないのはもったいなーい!

取材を終えて

前編・後編に渡っての大学附属図書館探検、いかがでしたか?
充実しまくりの蔵書だけでなく、管理技術やノウハウ、職員の皆さんのプロフェッショナルな仕事ぶりに京大を感じました。

利用案内など、詳しくはこちら
京都大学附属図書館ホームページ
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/mainlib/