Campuslife

No.11

update.2017.08.17

泣く子も黙る?アメリカンフットボール部「ギャングスターズ」の実態に迫る(前編)

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京大 農学部グラウンドに響く、体と体がぶつかり合う音、選手たちの息づかい、
そして選手をサポートするためにグラウンド狭しと駆け巡るスタッフの掛け声。
こんにちは、ザッツ・京大編集部です。
今回ご紹介するのは、ザッツ史上初となる体育会系クラブ、
アメリカンフットボール部「ギャングスターズ」です。

さて、皆さんはアメリカンフットボールにどんなイメージをもっていますか?

カレッジスポーツの花形、アメリカンな競技、ワイルド、マッチョ、こわもてな人たち……

だんだん連想ゲームのようになってきたのでこの辺でやめておきますが、「激しいスポーツ」、「ルールが良く分からない」、「選手はバリバリの体育会系ノリ」というイメージをもっている人が多いんじゃないでしょうか。何を隠そう、私もその一人。

どうしてこのようなイメージが定着しているのか考えたところ、アメフトに関わっている人以外、接する機会が少ないからだという答えに行き着きました。

“サバンナの掃除屋”と言われるハイエナだって、子どもをかわいがるし、お茶目な一面もあるはず。しかし生態をよく知らないために、“サバンナの掃除屋”という一面的なイメージでくくってしまうのです。

アメフトも同じ……いや、違うか。とにかく百聞は一見にしかず。実際にアメフト部を訪ねて、チームや選手たちの真の姿をお伝えします。

 

マジ凄いギャングスターズの歴史

取材の前に、まず予習。京大のアメリカンフットボール部「ギャングスターズ」は1947年に創部され、今年で70周年を迎えます。
2017年6月11日には創部70周年を祝して、農学部グラウンドにて法政大学アメリカンフットボール部「オレンジ」との記念試合が行われました。試合は、前半ギャングスターズが主導権を握り、後半オレンジが追撃する大接戦。手に汗握る激しい攻防の末、見事24-16でギャングスターズが勝利しました!

試合後には、京都市内のホテルで記念式典が開かれ、多くの支援者の方々との交流を通じて、選手をはじめチーム関係者は日本一への決意を新たにしました。


スタンドは満員、試合前からボルテージもアップ!

 


試合前のセレモニーには門川大作京都市長にご臨席たまわりました

 


かっこいい、ギャングスターズの入場シーン
この後、熱戦が繰り広げられました

 

ちなみに70年という歴史は、全国で10番目、関西で4番目、国公立大学としては最長。その長い歴史の中で、これまで学生日本一6回、社会人チームを倒しての日本一が4回と、数々の栄光を手にしてきた名門チームなんです!

しかも国公立大学でこのような成績をおさめているのはおそらく極めて稀ではないかと思います。きっと舞台裏には、我々の想像を超える何かがあるはず。

 

ということで早速レポートにまいりましょう。

 

選手を支えるサポート体制もマジで凄かった!

取材班が真っ先に練習しているところを取材しようとしたところ、今回ご案内していただいているマネージャー兼広報担当の長野さんから、「まずはクラブハウスをご案内します。その方がクラブの全体像をつかんでもらえると思うので」とのお言葉。
なるほど。さすが、名門チームのマネージャー。

クラブハウスがあるのはキャンパス内ではなく、叡山電車の某駅近くにある住宅地の一角。白壁の4階建ての建物は、部を応援している様々な方からの寄付金によって建てられたというのだから驚きです。しょっぱなからチーム関係者のギャングスターズ愛が伝わってきます。


まさかこの中に屈強な体をした猛者が100人以上もいるとは思うまい

 

「どうぞ、中へ」という長野さんの言葉に吸い込まれるようにクラブハウスの中に入ると、下駄箱に選手たちのドデカい靴がズラリと並んでいます。チーム名の通り、ギャングみたいな強面の男たちが鋭い目つきでトレーニングしているのではないか?と、腰が引ける取材班。

「どうぞ、どうぞ」と促され、まずは1階にあるトレーナールームへ。ここは、学生トレーナーが選手のフィジカルケアをする部屋。ちなみにチームの学生スタッフは、マネージャーの他にトレーナーや戦略を立てるアナライジングスタッフなどが在籍し、活動内容も多岐に渡ります。その中でトレーナーは専門家と連携し、ケアだけでなくトレーニングメニューも作成しているのだとか。かなりガチですね!

 


突然の訪問にも関わらず、スラスラと流れるように
トレーナーの役割を紹介してくれた学生スタッフの夏原さん。
トレーニングについて語る姿はきりっとしています。

 

つづいて、同じく1階にあるトレーニングルームへ。入ってビックリ!まるで専門ジムのようにトレーニングマシーンが並んでいるではありませんか!!!

大きく異なるのは、どのマシーンも上級者向けであること。この時もイカつい体格をした選手が、「フンッ、フフンッ!」という息づかいと共に、巨大なダンベルを持ち上げていました。

 


専門ジムといって良いほど充実したトレーニングルーム

 

2階は食堂とミーティングルーム。選手たちは朝と晩、この食堂で食事をします。料理は、栄養士さんが献立をつくり、専属の料理人さんが調理。食事の面からもアメフト仕様の体に仕上げていくんですね。調理スタッフさんによると、毎日炊くご飯の量はなんと70キロ!

お米一俵が約60キロだそうなので、1日で米俵が無くなるという・・・

 


料理人さんの心がこもった料理が強い体をつくる基礎

 


真ん中のどんぶりでご飯を食べるのがデフォ
(右のテープと比較してみると大きさが際立ちます)

 

[ギャングスターズ的 ビフォー&アフター]

アメフト選手にとって大切なミッションのひとつが体づくり。ギャングスターズでも、激しいプレイに耐え、優れたパフォーマンスを発揮できる筋力・体力をつけるために、トレーニングと食事両面からアメフト仕様のボディメイクを行います。
全員もれなくガッチリ体型になっていくのですが、その中で「いちばん体型変わったで賞」をあげたいのが、OL(オフェンシブライン)担当の小嶋理記さん。
入部当時は身長180センチ・体重70キロとスリムだったのに、4回生になった現在は120キロのガッチリ体型にビルドアップ!


まるで別人。高校の同窓会に出たら話題騒然まちがいなし

 

3階、4階はミーティングルームとスタッフルーム

スタッフルームでは、綿密なプランを立案中。

トレーニングルームのマッチョな選手とはうってかわり、麗らかな女性スタッフが真剣に議論を交わしていました。
試合に勝つためのバックアップ体制が想像以上に整っています。


ライバルを打ち負かす戦略立案や、チームの運営業務が行われている中枢

 

ベールに包まれたGMの役割と活動内容とは?

衝撃的なことばかりに面食らっていたところ、「GMがクラブハウスに到着しました」と、長野さん。GM(ゼネラルマネージャー)といえば、いちばん偉い人やないですか!

本当にザッツ・京大の取材をOKしてくださったんですか?いい年した大人が学生の前でうろたえていたところ、GM兼キッキングチームコーディネーターの三輪誠司さんが登場。三輪さんはこちらのイメージとは異なり、笑顔あふれる紳士という雰囲気。安心したところでインタビューさせていただくことに。


とてもフランクなGMの三輪さん

─ GMというとスーツを着ているイメージがあるのですが、カジュアルなスポーツウェアを着ておられるので、こちらも緊張がほぐれました。

 

三輪さん: 今日はこれから練習ですから。GMといっても、クラブハウスの壁塗りやタイル貼り、練習器具も自作しているんです。

 

─ 本当のところのGMの役割は?

 

三輪さん: いやいや、壁塗りも練習道具づくりも本当ですよ。もう少し全体的な役割を説明すると、チームの体制づくりや実際のオペレーションということになります。具体的には、チーム運営に必要な費用を確保するための営業活動、さまざまな管理業務、PR活動、イベントの開催などです。こうした活動を学生スタッフと協力しながら行っています。

 

─ 現在、チームはどれくらいの方が所属されているのですか?
三輪さん: スタッフ40名を含め、約210名です。

 

─ かなりの規模ですね。そういえばギャングスターズは2016年に一般社団法人になったそうですが、どうして法人化されたのですか?

 

三輪さん: まず私たちはあくまで大学のクラブなので、法人かどうかに関わらず、学生たちが安全・健康にクラブ活動に励む環境をつくること、そして勉学と両立しながら人格形成につなげることが大前提です。

そうした中でギャングスターズはこれまで何度も学生No.1、日本No.1になった実績があるので、あくまで「日本一」になることを目標にしています。そして日本一になるためには、優秀な指導者と、質の高い練習が不可欠です。こうした環境を整えるためには、やはりお金が必要なんです。で、お金を確保するためには、しっかりとした組織をつくる必要がありました。

 

─ ちょっと生々しい話になってきましたが、それが現実ですよね。ここを曖昧にするのは良くない。若い読者にお金の大切さを理解してもらうためにも、『ザッツ・京大』ではしっかりと伝えます(キリッ)。

 

三輪さん: 意外に真面目なんですね(笑)。私たちの運営資金の多くはスポンサーの方々のご支援によるものですが、プロスポーツとは違い、広告面で多くの制約があります。そこで、京大のアメフト部ならではの特性を活かして、スポンサーさんの力になれることはないかと考えました。

簡単に説明すると、食品・サプリメント会社やスポーツ関連会社との提携、ベンチャー企業の採用支援、京大関連の教育・研究施設とのビジネスマッチングなどが挙げられます。先ほど取材してもらったトレーニングルームも、トレーニングマシーンを販売されている企業さんと提携させていただいたことで、あのような充実した設備が実現したんです。

 

─ ここにきて、やり手のオーラを出してきましたね。そもそも三輪さんがアメフトをはじめたきっかけと、GMになられた経緯を教えいただけますか。


チーム運営の話題になると熱が入り、表情もキリッとかっこいい感じに

 

三輪さん: アメフトをはじめたきっかけは、高校3年生の時にギャングスターズが甲子園ボウルに初出場し、アメフト好きの友だちに甲子園に連れて行かれたことです。それまでアメフトに興味はなかったのですが、観衆の熱狂ぶりを見て、「グランドの真ん中には俺がいるべきだ」と思ったんです。それで京大に入学することに決めました。

─ その辺のド直球に進む強さがイカにも京大な感じですね。それで、大学卒業後もクラブに関わっておられたのですか?

三輪さん: いえ、卒業してから30年間は、“お金(寄付金)は出すけど口は出さない”という、模範的なOBを貫いていました(笑)。
民間企業に務め、主に海外で仕事をしていたのですが、50歳になり、京都で学生の支援や産学連携に関わる仕事をしたいと考えるようになりました。そんな時に声をかけていただき、最初はお手伝い感覚で参加したのですが、いつの間にかGMになっていました(笑)。

─ 運命ですね。それでは最後に、ギャングスターズが日本一になるためにGMとして力を入れていきたいと考えていることは?

三輪さん: 先ほどもお話したように、チームが成長していく環境づくりが私の役目です。そのために、スポンサーの方々と我々が長期的にWin-Winの関係を築けるようがんばりたいと考えています。


アメフト初心者のアバウトな質問にも丁寧に答えてくださった三輪さん、ありがとうございました!

 

柔らかい口調の中から、明確なビジョン、それをかたちにする戦略と実行力を兼ね備えておられることが伝わってきた三輪さん。インタビュー後、「そろそろ西村監督もクラブハウスに来るので、ぜひインタビューを」とのお言葉。

マジですか?!
「ありがたいのですが……、監督もお忙しいでしょうし、またの機会に……」
「何をモゴモゴ言ってるんですか。呼んできますね」

これって、いちばん恐れていた展開じゃないですか!
なぜ、取材班が怯えているのか?
理由はコレ!


■写真:チーム公式サイト〜監督コメントより

顔が怖い!まさに鬼の形相。この写真はギャングスターズの公式サイトに掲載されているもの。チーム関係者以外の人が見ることを想定したサイトでの写真で、この気合いの入り様ということは、この感じがデフォルトと考えた方が良い。

目が合った瞬間、「気合いが入ってないッ!!」と怒鳴られるのではないか……。

顔がこわばり落ち着きをなくしていると、背後から「失礼しますッ」と、魂がこもった力強い声が響く。

西村監督だ!!

 

果たして、無事インタビューを終えることができるのか?!・・・と思いきや、

あれ・・・?
人違い・・・?

公式サイトの写真とはうってかわってのほんわか笑顔。

 

いったい、どうなってしまうのか・・・?!

 

(後編に続く)

 

[取材を終えて]

クラブハウスを訪れ、GMにお話をうかがい、ギャングスターズが強いチームをつくるためにしっかりとした体制を整えていること、そしてGMが、物腰が柔らかく、理論派であることが判明。

後編では、西村監督のインタビューの他、練習リポート、主将インタビューをお届けします!
なお、2017年は8月から公式戦が始まります。

スケジュールは次の通りです。

 

〈秋季リーグ戦〉

8月25日(金) 関西大学戦   18:45K.O. @西京極陸上競技場兼球技場

9月9日(土) 龍谷大学戦   17:00K.O. @神戸市立王子スタジアム

9月22日(金) 関西学院大学戦 18:45K.O. @西京極陸上競技場兼球技場

10月 7日(土) 立命館大学戦  15:00K.O. @宝が池球技場

10月21日(土)  同志社大学戦  12:00K.O. @西京極陸上競技場兼球技場

11月 4日(土) 桃山学院大学戦 15:00K.O. @EXPO FLASH FIELD

11月18日(土)  甲南大学戦   14:00K.O. @EXPO FLASH FIELD

 

<ポストシーズン戦>

11月26日(日) 西日本代表校 4回戦 13:00K.O. @名古屋市港サッカー場

(関西学生Div.1 2位vs西日本代表校3回戦勝者)

12月 3日(日) 西日本代表校決定戦 決勝 14:05K.O. @万博記念競技場

(関西学生Div.1 1位vs西日本代表校4回戦勝者)

12月17日(日) 毎日甲子園ボウル 13:05K.O. @阪神甲子園球場

1月 3日(水) ライスボウル K.O.時間未定 @東京ドーム

 

詳しくはギャングスターズ公式サイトへ
http://gangsters-web.com/