ザッツ京大

みんなの「エネルギー」。オープンラボ体験記

こんにちは。

『ザッツ・京大』編集部です。

 

いきなりですが、みなさんは、大学の「研究室」に入ったこと、ありますか?

私は高校の頃からひたすら文系人生。いわゆる「ラボ」(研究室・実験室)には無縁でした。

そんな、私のもとに、とあるイベントの情報がひらりと舞い込んできたのです。

その名も、「オープンラボ ようこそ! 大学の研究室へ」。

 

どうやら、

  • 京大の研究室に入れる
  • 京大の研究者と話ができる
  • というか、一緒にランチが食べられる

らしいです。

・・・・・・・・・・これは、「ザッツ」な予感。

 

参加資格は、学部生、大学院生が対象。ただ、京大生以外も参加OKとのことで、イベント名の通り、かなりオープン。

とは言え、私は何一つ当てはまらないので、方法は・・・・・・取材あるのみ!!

 

「エネルギー」は理系ですか? いいえ「みんなのもの」です。

調べてみると、この「ようこそ! 大学の研究室へ」は、エネルギー科学研究科のエネルギー社会・環境科学専攻が主催しているもの。

そこで、まずは取材のご相談ということで、企画担当の石井裕剛 准教授を訪ねます。

石井先生によると、今回の企画で伝えたいことは、大きく2つあるとのことです。

「1つは、「エネルギー」はいろいろな形で、みなさんに関わっていることを知ってもらいたいんです。・・・・・・例えば、今回は、8つのトピックスから、3つを選んで回る形式ですが、実はこれだけの分野があるんです」

そう言って、8つのトピックスについて説明してくれました。


A:エネルギー・資源の利用を評価する ← 【材料】

B:エネルギーと人間社会との関わりについて考えてみよう ←【経済】

C:木からエネルギー学 ← 【農学】

D:エネルギーシステムを支える拡張現実感技術 ←【情報】

E:大気の汚染を ”観る” ~その空気,吸っても大丈夫?~  ←【環境】

F:エネルギーのセキュリティーって何? ←【政治】

G:エネルギーの安定供給を支える地震工学 ←【地震】

H:エネルギーをめぐるリスクとコミュニケーション ←【コミュニケーション】


・・・・・・そうですよね。いろいろな場面で私たちに関わっていますよね。。

なのに、実は「エネルギー」と聞いて、私は「文系だからどこまでわかるかな」と少し不安に思ってしまっていました。。

石井先生は、笑いながら頷きました。

「まさに、そういう「壁」をなくしたいんですよ。「エネルギー」はみんなに関わっているものだからこそ、その問題解決も、「文系」や「理系」というものではないんです」

 

そして、悩みに悩みましたが・・・・・・。私は「A」と「D」と「E」を選択です。

「D」は、石井先生の研究室です。なぜなら、こんな研究が。・・・・・・気になります!!

さて・・・・・・何でしょう。

 

イベント当日。研究室でまずは実験開始!!

当日は、前日の大雨がウソのよう。夏空のように晴れ晴れです。

いったい、どんな研究室が見られるのか? わくわくしながら向かいます!!

 

最初に向かったのは、「A:エネルギー・資源の利用を評価する」(エネルギー社会工学)。

今日は、まずは実験を通して、材料、物質の中にあるエネルギーを感覚的につかんでみるとのことです。

・・・・・・ええと、物質の中のエネルギー? 感覚的につかむ? なんだか想像するのが難しい・・・・・・。

あ。 だから、実験してみるんですね!

 

小さなびんに、粉末シリコン(Si)1gと、少しの水(1ml)、そしてモールディンという小さなステンレス球(30個)を入れます。

そして、ひたすらシャカシャカと振る。

振る。

振る!!

このシャカシャカ(2分間)により、シリコンの表面が削れて、シリコンの中の部分が出てきます。そして、それが水と反応する。そうすると、何が出てくるのか・・・・・・!?

 

「はい。この状態で5分待ちます。しばし雑談タイムです」

・・・・・・おっと。でも、この雑談タイムでちょっとした事実が。

 


【雑談タイム】 参加者は京大生のみにあらず。西は兵庫。東は群馬まで!

明るい笑顔の奥村准教授が参加者との会話を盛り立てます。

奥村先生「ところでみなさんはどこから今日は参加してくださったのかな?」

「寝屋川市から来ました」。

「僕は、京都。京大生です」。

「姫路から来ました」。

・・・・・・えっ? (朝6時頃に出てきたそうです)

「ワタシは、群馬から来ました」

・・・・・・ええっっ! どうやって??

「夜行バスで。・・・・・・あとさっき、同じ大学の女の子も、このイベントにきてました」

ええええっっっ!?  群馬から2名来学!?

・・・・・・なんだか、いろいろな人が集結しています。


 

さて。5分経過。

この検知管で、何が出ているのかを調べます。

小川助教(写真上・中央)と大学院生の諸先輩が、慎重に測ります。

 

下から検知管を入れて・・・・・・。

すると、写真のように、検知管の色が(手元に近い部分)が少し水色に変わりました!

(実は・・・・・・上の検知管の写真は、私たちの次のグループが行った、よりわかりやすい色の写真です。笑)

そう、シリコンと水が反応して出てくるもの、それは水素だったのです!!

 

奥村先生によると、

「この実験でわかるのは、水という元々エネルギーを持っていないものの中から、シリコンの「エネルギー」を使って、水素を取り出したということです」

とのこと。

・・・・・・なるほど。これがシリコンというモノの中に持っている「エネルギー」ってことなのですね。ふむふむ。

さらに話は「材料」にとどまらず、製品、地域、国といった単位でエネルギー・環境を理解すること、物質の活性化からエネルギー・環境の解析評価まで広く研究していることまで。・・・・・・材料という細かな視点だけでなく、エネルギーを全体的に捉えることや、環境への影響など、より大きな視点まで、実に幅広い!

実験の後、さらに展開する石原教授の講義に聴き入ります。

 

エネルギーの課題を解決! 現場ニーズ×研究シーズがみんなを救う!?

続いては、「D:エネルギーシステムを支える拡張現実感技術」(エネルギー情報学)に向かいます。

ここは、下田教授と、いろいろ教えてくださった石井准教授のいる研究室です。

AR(拡張現実感)は、現実の映像とそこには本来存在しない映像(情報)を組み合わせて見せるもの。それによって、例えば、プラント(工場施設など)の補修や解体作業の現場で、配管の中の様子や、放射線量の多い場所や少ない場所などを、直観的に示すことができるとのことです。

まずは石井先生のお話からスタートです。

 

例えば、下の写真で学生さんが真剣に見つめているこのタブレット。

なんと「モノに触れずにモノの長さ(大きさ)が測れる」という驚きの機械!

なにしろ、画面に映すだけで、ケースも壁も測れてしまうのです。

是非、動画も併せてご覧ください!!

石井先生によれば、「タブレットに付けたカメラは市販のものです。このカメラは、写した点の奥行きを測ることができるので、こうした応用ができるんです。ちなみに、物だけでなく、人や動物も測ることもできます。ただ、着ている服や色などで、得手不得手が出ますね」とのこと。

・・・・・・すごい。

そして、実はこれ、原子力プラントなどの作業で活躍するものだそうです。

例えば、原子力プラントを解体していくときには、ただ壊して瓦礫を搬出というわけには行かず、壊した瓦礫をさらに細かくして「除染」するらしいです。その除染の前にどれだけの量の瓦礫が発生するのか、予め測量・計算をしておくことで、効率的に作業を進めることができるとのことでした。しかも、非接触で測れるので、高い建物や、放射線量が高くて危ない場所なども映すだけで測れるのです。・・・・・・想像できていませんでしたが、エネルギーの現場ではそういうことが起きているということですよね。。

 

そして、こちらは、VR(仮想現実)。ヘッドマウントディスプレイとハンドコントローラーを装着して、いざバーチャルリアリティの世界に。

ちなみに、参加者のみなさんが驚きまくっている映像はこちら。

これも実は、「現場」での作業。そこで起こる「危険」を疑似体験によって学ぶためのものなのです。

・・・・・・あらためて、エネルギーは「ただ使うだけ」のものではなくて、いろいろな課題があるのだと感じます。そしてここには、その課題解決を可能にする研究が。「 そんなことができるの?!」という驚きの連続です。参加したからこそ、体験できる「最先端」でした。

あらゆるところで対話が自然に発生。参加者も研究者と笑顔でトーク。

 

大気汚染を「目撃」。これがPM2.5ですか?!

最後にうかがったのは「E:大気の汚染を ”観る” ~その空気,吸っても大丈夫?~」。

こちらは、エネルギー環境学の研究室。

特に「PM2.5」を研究しているとのことです。

研究室の亀田准教授によれば、「PM2.5は、簡単に言うと大気中のチリとかホコリみたいなもの。ただ、その中には、いろいろな化学物質が入っていて、発がん性のものなどもあります。だから、いったいどんなものが入っているんだろうと調べるわけです」。

・・・・・・調べると言っても、どうやって?? 私もそう思いました。

亀田先生が、PM2.5を採取するための機械について説明してくれます。

亀田先生「●イソンの比ではない吸引力で、空気を吸い込んで、このフィルターに濾されて出てきます」

結果、フィルターに残ったのがこちら。

亀田先生「これがPM2.5です」

さすがに、学生さんもビックリ。

「え。こんなに取れるんですか?!」

「こんなにびっしり?!」

亀田先生、なんだかうれしそうです。

「そう。これが普通に大気の中にあるんです。 げっ!って思うでしょ」

・・・・・・思います。・・・・・・れ、吸ってるのか。

 

そして、これを分析するために、いざ実験室に!

おおっ! これぞ、まさに「ラボ」!! なんだか白衣を着た名探偵・ガ●レオがいそうな雰囲気です。

 

まず、先ほどの黒い物体(PM2.5)に入っている化学物質を取り出すとのこと。

亀田先生「そのためには、まず有機溶剤につけて、ダシを取るかのように抽出してあげます」

・・・・・・わかりやすいのですが、とてつもなく身体に悪そうなダシです。

そして、それを超音波洗浄機にかけて、抽出。すると言わば「ダシ汁」ができあがるとのこと。

ただし、先生によると、この中には「何万種という化学物質が入っているので、何が入っているのかを知るためには、それぞれ分けてあげなければならない」のだとか。

・・・・・・ええと、そんな気の遠くなること、できるんですか・・・・・・?!

 

「ガスクロマトグラフィー!!!!」

と、ネコ型ロボットは言ったかどうかは知りません(もちろん、亀田先生は言いません)。

ただ、この機械が、その高度な分析をしてくれるのだと言います。

この日は特別に、参加した学生さんが、実際に機械に触れてみました。みなさん、真剣な眼差しです。

さらに他の研究室にも。東野教授が、PM2.5の質量濃度を連続測定している研究室などを案内してくれました。

 

今まで見たことのない設備や機械があって、大学の研究室だからこそ、できること、わかることが、たくさんあるのだなぁ・・・・・・と、思わずため息が。

普段は足を踏み入れられない、研究室を満喫です!

 

学生と先生の「壁」ゼロ。「人」は新たな「出会い」で活性化する?!

さて。ひととおり、研究室を見て回ったら、もう一つの「見どころ」の昼食会がスタート!!

きっと、実際にラボを訪問する中で、もっと聞きたいこと、話したいこともたくさんできたのでしょう。

みなさん、ますます表情が輝いていきます。

最初に、石井先生は、このイベントの企画意図は2つあると言いました。

1つは、「エネルギーはいろいろな形で、みなさんに関わっていることを知ってもらいたい」ということ。

そして、もう1つは、

「学生さんが、「エネルギー」や「京都大学」に対して、作ってしまっている「壁」をなくしたい」

ということなんだそうです。

 

石井先生は、これまで学会などで学生さんと話しをしてみると、「エネルギーを専門に勉強していないと難しそう・・・・・・」とか、「京都大学の大学院はハードルが高そう・・・・・・」と、大学院への興味に一歩を踏み出せない学生さんも多いそうなんです。

「実際、京都大学以外の大学からうちの大学院にきてますし、私のところなんて経済をやっていた、生物をやっていたなんて学生もいますから。その「思い込み」がもったいないです。だから、その「壁」をなくしたいんです」。

 

そして、その「壁をなくす」という考えは、それは入試科目の「形」でも表れているそうです。

実は、エネルギー社会・環境科学専攻の入試科目は、

  • 「英語」

  • 「論述」

  • 「口頭試問」

の3科目のみ。

さすがに、驚いて聞きました。「えっ? 数学とか化学とか必要無いんですか?!」と。

 

先生、答えて曰く。

「特には必要ないんですよ。入る段階では。入ってから、もし自分のやりたいことに必要なら、そこから頑張ればどうにでもなるんです。それよりも、英語力や論理的に考える力。そして、自分のやりたいことや、人柄のほうが大事なんです」

 

それを聞いて、私は、とてもスッキリした気持ち良さを感じたんです。

ああ、本当に、文系も理系も超えたところなんだろうな、と。

その人が、「今どうなのか」だけではなくて、培ってきた基礎や人物、その人の「これから」を見てくれる。

・・・・・・まるで、みんなの中にある、「エネルギー」を信じてくれているみたいじゃないですか。

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