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No.54

update.2019.03.11

世界と繋がる京大欧州拠点~グローバル化は避けられない?じゃあどうする?~

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こんにちは。ザッツ編集部広報Sです。

さて、皆さん私はどこにいるでしょうか?


なんと!ドイツ!Germany!Deutschland!

京大は京都だけじゃ無い!

ということはかねてよりこのザッツでお届けしてきたところですが、

実は日本だけじゃ無いのです。

今回ご紹介するのは、ドイツ・ハイデルベルクにある、京都大学欧州拠点。

欧州拠点とは?
京都大学は全学海外拠点のひとつとして、ドイツ・ハイデルベルクに欧州拠点を設置しています。
欧州拠点は、本学の欧州地域における研究教育活動の支援、本学教職員・学生の国際化の推進および広報・社会連携・ネットワークの形成を推進することを目的としており、併せて日独6大学ネットワーク(HeKKSaGOn)の日本側窓口を担います。
京都大学欧州拠点HP(https://www.oc.kyoto-u.ac.jp/overseas-centers/eu/)より

日本にいては決してお目にかかれない、この欧州拠点が何をやっているのかレポートしてきます!

いざ欧州拠点に!

雰囲気漂う街、ハイデルベルク。

路地を入ってみると、京都大学の看板が。

さて、チャイムがあることだし、押してみよ・・・うっ!

えっ・・・プリズン?

Prisonって牢獄だよね・・・?

あのなんとかブレイクとかいうドラマである、あれだよね・・・?!
Oldって書いてあるし、今は違うことに期待しよう・・・。

意を決してチャイムを鳴らしてみよう。
(ここで看守みたいな人が来たらどうしょう・・)

ピンポーン。

「はーい。京都大学でーす。」

なんとも陽気な明るいお返事が。

「あのー。ザッツ・編集部なんですが・・・」
「はーい!お待ちしてましたー!今いきまーす!」

牢獄とは言えないなかなか明るいお返事。
(モリモリマッチョな看守とかが来たらどうしよう・・・)

とっても素敵な笑顔の方が。
ていうか、なんで半袖?(まだドイツは冬ではないかと・・・)

「ベアンドです。オフィスまでご案内しまーす!」

どうやら看守のような怖い方では無いようだ。。

そして階段を上ると・・・なんだかおどろおどろしい落書きが・・・
「えっ?どうしたの」と言った表情で私を案内してくださるベアンドさん。
こんなんビビりますやん・・・

 

ご案内いただきました。

 

S:そういえば、「プリズン」ってありましたけど、学生牢って何ですか?

ベアンド:ああ、ここは100年ほど前まではハイデルベルク大学の学生牢だったんですよ。酔っ払った学生なんかを戒めるための施設だったみたいですが、もちろん今は使われてないですよ。

S:ほっ。なんだか安心しました。

ベアンド:この落書きはその学生らが自分たちがココに来たんだぞーっていうことで書いたみたいです。ここで過ごすことが自慢になったとか。
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そんな話をしつつ、暗い階段を上ると、扉がありました。

どうやらここは京大だ。
(だってKyoto Universityって書いてあるし・・・)

ドアを開けてみると、何と普通にオフィス。
ここまで落書きだらけだったけど、一安心・・・

さあさあ、そんなことを言ってないで取材だ!取材!!!

ここがどんなところなのか、オフィスのみなさんにお話を伺ってみました。

このオフィスは

副所長である学術研究支援室の神野さん、
京大から海外研修として来ている事務職員の森さん、
そしてハイデルベルク大学職員で現地スタッフのベアンドさんの

3名が働いています。

左からベアンドさん、神野さん、森さん


神野:このオフィスは2014年に京都大学の研究支援、教育支援、国際化推進を目的としてできました。
日独6大学ネットワークのHeKKSaGOnが2010年から始まっていて、その縁で同じくネットワークの大学であるハイデルベルク大学のご支援、ご協力をいただいて、この場所にオフィスができました。


ベアンド:私たちの仕事としては、京大生の留学支援やこちらの学生さんへの留学説明会といった教育支援や、ハイデルベルク大学とのジョイントレクチャー、他欧州の大学とのシンポジウム開催などの研究支援、あと情報収集としてドイツやヨーロッパの教育研究事情なんかを調査したりしています。


S:とても幅広いですね。


神野:ちなみに、ベアンドは日本に留学経験があるんです。日本語もできるので、ドイツ語の専門的な文書の内容を日本語で説明してくれたりと、とても助かっています。


S:ベアンドさんすごい・・・只者じゃないと思っていたが。。。


ベアンド:なかなか難しいですし、色んな依頼があるので大変ですが、みなさんと協力しながら進めています。


神野:森さんは「ジョン万プログラム」という、京大の事務職員の海外派遣プログラムでこちらに来ています。


森:海外経験を職員に積ませることで、大学も国際化させようという事業です。私自身、国際業務はあまり経験は無かったのですが、こちらで働けてとてもいい経験になっています。


神野:日本に留学していた学生がおしゃべりに来たり、学会帰りの教員が立ち寄ってくださったりといった場にもなっています。ぜひ、皆さんも気軽にご訪問ください。


本当に幅広い内容ですね。

お仕事も拝見。


神野さん:すみません。そろそろ京都との会議の時間なんです。少しよろしいですか?


S:はい!お忙しいところお邪魔します・・・

実は、欧州拠点では、日本のスタッフとSkype会議を行い、情報共有を定期的にはかっているのです。


とても真剣にお話をしています。

時差が8時間もあるので時間を合わせるのが難しそう・・・


ベアンド:私たちの業務を通じて日本とドイツをつなぐ窓口になれるよう頑張っています。
そうだ、私たちの仕事場はこのオフィスだけじゃないんです。
ハイデルベルク大学の他の施設にも行くので、ご一緒されませんか?


S:ここだけじゃないんですね!ぜひお供させてください。

 

ご案内いただきました。

ハイデルベルクは大学の町というか、ハイデルベルク大学の中に町があるようです。

一つのキャンパスに建物が固まっているというより、お店や民家に混ざってハイデルベルク大学の施設が点在している感じです。

外に出るとクリスマスムードが漂う感じでしたが、少し歩くとネッカー川に出ました。

ベアンドさん:山肌を人が歩いているのが見えますか?Philosophenweg、哲学者の道です。京都にもあるそうですが、川、山、道、大学など様々な共通点があることでお互いに親近感を覚えてお仕事をしやすくしているのかもしれませんね。


さすがに外に出ると厚着になるベアンドさん

S:確かに似た者同士、という点が京都とハイデルベルクの距離を縮めてくれているのかもしれませんね。

神野:次はジョイントレクチャーをすることもある大講堂にご案内しましょう!

S:大講堂!ぜひ見てみたいです!

神野:趣のあるお部屋でしょう?
ここで開催されることもある日独ジョイントレクチャーは、京都大学とハイデルベルク大学が協働して行っているものです。
双方の研究者による講演会でここハイデルベルクと京都で行われています。

ちなみにこちらは、講演がない時でもチケットを買えば入れるそうです。ハイデルベルクにお越しの際にはぜひ。


ジョイントレクチャーの風景

図書館にも行ってみた

続いて、拠点スタッフのみなさんが時々、利用している大学図書館を森さんに案内してもらいました。
ここでは多くの学生が、留学生も含めて静かに調べ物等をしています。

S:これなんですか?

森さん:耳栓の自動販売機です。

S:なんと・・・そこまでして勉強するんですね。。。

国際部にも立ち寄ってみました。

そして、よく打ち合わせに行くというハイデルベルク大学の国際部。
建物1階の相談オフィスでは、留学生に様々なアドバイスをしたり、イベントの紹介などもしています。

ところで、ハイデルベルク大学に京大のオフィスがあるように、実は京大にはハイデルベルク大学の京都オフィスがあるんです。
その京都オフィスのサビーネさんが偶然いらっしゃったので、少し立ち話。

ハイデルベルク大学の京都オフィスについて詳しくはこちら。
https://www.huok.uni-heidelberg.de/index_jp.html

食堂は武器庫・・・?

色んな所を回っているとお腹がすいてきました・・・

神野さん:そろそろお昼にしませんか?

S:えっ!ぜひお願いします。

神野さん:ではメンザ(学生食堂)に行ってみましょう。実はここ、元武器庫なんです。

S:武器庫!?爆弾とか無いですよね・・・?

神野さん:あるわけないじゃないですか!

武器庫とは思えないくらい綺麗なカフェテリア。

量り売りになっていて、学生は安く食べられるみたいです。

さすがは大学の町。

残念ながらここは人が多かったので、もう一つのメンザに。こちらも学生はとても安くなっています。

ベアンドさんはパスタのセット、神野さん、森さん、広報Sは量り売りのランチにしました。


どれも美味しそう。。。

ちなみに、量り売りだとパンが1枚無料でついてくるそうです。学生(の財布とお腹)にとっても優しい・・・

そんな食堂を後にして、オフィスに戻ります。

もう少しお話を伺いました。

歩き回ってお疲れのところでしたが、ベアンドさん自作のお菓子とお茶をいただきながらお話を伺いました。


Q:色々と見せていただいてありがとうございます。


神野:いかがでしたか?こちらに来ることで私自身、様々な刺激を受けて物事に対する価値観が変わったり、視野が広がったり、日本の良さを見直すきっかけにもなりました。


Q:なるほど、私も学生牢から耳栓の自販機、学生向けの食堂と、色んな衝撃を受けました。確かにいろんな方に来ていただき経験してもらうことはいいことですし、このグローバル化と呼ばれる時代に必要なことですね。


神野:グローバル化についてはもはや選択できることではなく、今起こっている事実だと思うんですよね。だからこそ若いうちに海外に身を置いて苦労する、それが糧になる。起こったことは最終的には全ていいことだと自分は考えています。ここからそういったことを、わかりやすく発信できたらと。


Q:グローバル化は事実・・・なかなか重い言葉ですね。


ベアンド:確かにそうですね。グローバル化は避けられない。でもそこに挑戦していく人たちを応援していきたいと考えています。外国に行くといろんなことができるし、他の学生や研究者と繋がったり、考えてもいなかったワクワクしたことが起こります。
新しいこと、面白いことをやりたい!と飛び込んでいくことで、世界が広がっていくんです。
Sさんが感じたように、実際に来てみて、感じることはたくさんあるんです。


Q:どんな支援をしていきたいですか?


神野:研究者については、この拠点を利用してネットワークを広げていただき、共同研究につながるような支援をしていきたいと思っています。
オンリーワンの大学になることは、ナンバーワンを目指すより難しいでしょうが、京大に対してはそういった期待があるのではないでしょうか。それを担う研究者のサポートをしていきたいですね。


森:私はこれまで大学では経理や人事といった部署で働いてきました。国際関係の仕事に触れる機会は少なく、グローバルな視点を持つことはなかなか難しかったです。
でも、ここで仕事をするうちに京都大学の欧州での活動がすこしずつ見えてきて、大学がグローバルに動いているんだな、と実感しました。
当たり前のことなのかもしれませんが、私にとっては目が覚めるような新たな気づきでした。


Q:日本への留学を希望するドイツの学生についてどう思いますか?


ベアンド:日本の大学に留学してもらうこともそうですけど、ハイデルベルク大学の学生が日本、特に京大に留学してほしいです。京都はヨーロッパの多くの都市と比べて生活費はかからないでしょうし、この京大を取り巻く環境をきっと好きになってもらえると思います。
そこで、京大のファンになってもらう。末長い関係を紡いでいきたいです。


Q:中高生に向けてメッセージをいただけますか?


神野:「語学ができないから」と日本から出ることをためらう若者も多いと聞きます。でも、例えば海外で仕事をしている私たちもハイデルベルク大学のパートナーも完璧ではない、外国語としての英語を使って、十分にコミュニケーションがとれています。
もちろん、ある程度の英語はできた方がいいですが、まずは好奇心をもって新しい世界に飛び込んでみてほしいですね。
若いころの失敗は大したことないですし、とりあえずやってみてはどうでしょうか。


ベアンド:遠くの国に行くことで、そして他の文化を経験することで、人生観が変わるし、人生の可能性が広がります。今の中高生にはもっと広い視野を持つことが重要だと考えています。


森:海外で生活すること、学ぶことに不安はいっぱいあると思います。でも実際に来てしまえば、意外と何とかなるものです。
学生さんにはサマースクールや留学でどんどんこちらに滞在してもらって、そういえば京大の欧州拠点があったなーと思い出して、遊びに来てくれたりしたらとても嬉しいです


ベアンド:それに、外から得られるものは人生を変える「おもろい」ものだと思います。
ハイデルベルク大学に世界中のお土産を研究室に飾っている先生がいます。それはその先生が色んな国の人たちとつながろうとしているから、自然と集まってくるんです。
とにかく全てを受け入れ、自分の中の視野を広げること。そういった姿勢を持って飛び出していくことがすごく大事です。

Q:最後に一言

神野:とにかく一度、勇気をもって外に出てほしいです。お金や時間など障害はたくさんあると思いますが、そういった人たちの背中を押してあげたい、そう考えています。

みなさん、ありがとうございました。

取材を終えて

グローバル化は選択できることではなく今ある事実。
これは、世界中の誰しもが直面しており、京都大学もその渦の中に巻き込まれています。

その中、京大欧州拠点のみなさんは京都大学の世界への窓として、留学や研究などさまざまな交流の輪を広げようと頑張っています。

ただ、欧州拠点のスタッフが頑張るだけでなく、若い皆さんも世界に飛び出してみませんか。私が最初に面食らった落書きだらけの学生牢のような衝撃があると思います。

それを受け入れることが世界で活躍したい方にとって、グローバル化という現実へ踏み出していく一歩なのかもしれません。

それではまた次のザッツで。