前人未到!アメフト最高峰「NFL」への挑戦~一番足の遅かった男が「スピード」で世界と戦う~

  • ザッツ (113)

こんにちは、ザッツ・京大編集部です。

突然ですが皆さんは「NFL」が何の略称かご存知でしょうか?
そう、National Football League!アメリカンフットボールの世界最高峰リーグのことです!
MLB(野球)・NBA(バスケットボール)・NHL(アイスホッケー)と並び、北米4大リーグの一つであるNFL。90年を超えるその歴史で、日本人選手が在籍したことは一度もありません。
しかし、そんな前人未到の地に足を踏み入れんとしている京大生がいるとの情報が。

さっそく京都大学アメリカンフットボール部「ギャングスターズ」の練習場を直撃しました!

 

日本一を狙いたい。その思いが未経験の「アメフト」を選ばせた。

取材場所に現れたのは屈強な大男……。工学部5回生の町野 友哉さんです。

――いきなりで失礼ですが、すごく体が大きいですね。
「今は身長197cm、体重132kgですが、世界のレベルからしたらまだまだ小さい方。現在も増量中で、パワーとスピードのバランスが取れる140kg弱に仕上げることをめざしています」

――もともとそんなに大きかったんですか?
「いいえ、高校生の頃は85kgくらいでした。身長があるので、当時所属していた野球部ではむしろ細い方でしたね」

町野さんは1日5食以上食べるのだとか。
特に夕食には米1kg(約6.7合)を1回生の頃から毎日食べているそうです。
「ただ体重を増やすのではなく、筋トレ・食事・休息のバランスを意識し、
少し増やしては筋肉に変えて、着実な体づくりを心掛けています」

 

――高校時代は野球部だったんですか。アメフトを始めようと思ったのはなぜですか?
「野球部では部としてはそれなりの好成績を収める一方、僕自身はなかなか思うように活躍できませんでした。それでも大学入学直後は野球を続けるつもりでしたが、ギャングスターズから勧誘を受け、自分の身長をより生かせるのはアメフトだと考えチャレンジしてみようと思いました。と言っても当時はアメフトのことはルールも何も知りませんでした」

――自分の長所を生かしたいという思いがきっかけになったんですね。
「はい。それに、ギャングスターズが本気で日本一を狙える環境であるという点にも惹かれました。練習環境も整っていますし、チームにそれだけの熱意と実力がある。自分も日本一になりたいと思いました

高校時代の町野さん。
この頃から比べると約50kgものビルドアップです。
体格の変化に加え、アメフトを始めて挑戦を恐れない性格に変わったそう。
「もともとは無難な方を選ぶ性格でした。まさか世界をめざすようになるとは」



――実際にやってみて分かった、アメフトのおもしろさは?
「ひとつは自分の体を武器に戦うという非日常感です。特に僕のポジションであるOL(オフェンシブライン)は基本的にはボールに触らず、チームメイトを走りやすくしたり、パスを通りやすくしたりするために、体を張って相手ディフェンスを抑えるポジション。ほぼ格闘技をしているようなイメージです。鍛えてきた肉体を武器に、今までの努力を全部ぶつけて勝利をもぎとる興奮は、他のものには代えられません」

町野さんのプレイ中の写真。
OLはチームのオフェンスの強さを決める重要なポジション。

 

――確かにアメフトといえば、屈強な男たちの、大迫力のぶつかり合いというイメージですよね。
「ただ、もうひとつの醍醐味はロジカルな頭脳戦なんですプレイパターンがオフェンスだけでも100通り以上あって、試合前にはそれらを組み合わせた戦術を立てて記憶します。相手の出方によって試合中に戦術を変える必要もあり、確かな記憶力と対応力が求められます。試合ごとに単発に戦術を立てるだけではなく、リーグ全体を通しての駆け引きもある中、戦術が功を奏して勝てることもしばしば。体を動かし練習するのみならず、グラウンド外での下準備が重要になる奥深さもおもしろさのひとつです」

現在はコーチとして部の練習に参加しているという町野さん。
同じポジション(OL)の後輩の動きをチェックし、細かくアドバイス。

 


――球技で基本的にボールに触らないってなかなか特殊なポジションかと思うのですが、入部当初からOLを希望したんですか?

「いいえ、入部当時はWR(ワイドレシーバー:パスをキャッチして攻撃を進めるポジション)を希望していました。入部前にはそういう話をしていたんですが、最初の試合でOLに配置されて(笑)。結局そのままOL一筋でやってきました。でも、今となってはOLだったからこそ、世界を狙えるレベルまで来られたと思っています

 

世界のレベルを知って、自分の力と課題を理解した。

――アメフトの魅力を伺って、今すぐ試合を見てみたい気持ちになりました!
ところで町野さんはアメフトで世界をめざしていると噂に聞きましたが、本当ですか?
「はい。今年の7月にはXFL(アメリカで開催予定のプロリーグ)のトライアウト※1でアメリカ・セントルイスに行きました。続けて、世界最高峰であるNFLのインターナショナル・コンバイン※2への招待を受け、10月中旬にドイツ・ケルンへと渡りました」

※1 トライアウト:スポーツ選手がプロリーグやチームに加入するため、関係者の前で能力をアピールするための機会。
※2 コンバイン:ドラフト候補生が参加する身体能力やメンタルテストのこと。NFLでは世界に才能を求め、アメリカ以外の地でも「インターナショナル・コンバイン」を実施している。

 

――噂は本当だったんですね!……と言うか、すでに「世界」のプロリーグ「XFL」や「NFL」に実際に挑戦してるんですか! そもそも、そこに参加者として呼ばれる人も限られますよね……。
「7月のXFLのトライアウトは140名が招待されました。NFLコンバインへの招待人数は例年世界で350名に満たないほど。先日のドイツでのインターナショナル・コンバイン招待者は34名でした。狭き門です。ただ、コンバインはゴールではないので、たゆまず努力を続けたいですね」

――なるほど、コンバインへの参加はあくまでもスタートだと。ストイックですね……! ではまずXFLのトライアウトについてお話を聞かせてください。アメリカではどのようなテストを受けられたのですか?
「立ち幅跳びなど身体能力を図る測定や、ポジションにおける動きを審査するテストを受けました。他の選手のテストを間近で見ることもでき、世界のレベルの高さを実感しましたが、一方で自分の技能も決して太刀打ちできないレベルではないということが分かりました。初めて世界に挑む機会だったので渡航前は不安もありましたが、終わってみると自信につながりました。今後の課題も確認でき、貴重な経験になったと思います」

OLの動きのテスト。背番号75が町野さん。
OLのプレイでは、力を効率的に出したり、受け止めるための基本的なスタンスの保ち方や、
相手選手を止める際の手の使い方「パンチ」が重要だそう。

 

――それではNFLのインターナショナル・コンバインには自信を持って挑まれたんですね。手応えはいかがでしたか?
「実は渡独直前に足に肉離れを起こしてしまい、ドイツでのパフォーマンスはベストなものだったとは言い難いです。十分注意していたつもりでしたが、少しでも力をつけていきたいという思いが強くなりすぎていたと今なら思います。受けられなかったテストもありましたし、受けられたテストもその時点のベストは尽くしましたが、やはり怪我をしていなければもっと良いパフォーマンスだっただろうと考えるととても悔しいです。

受けられたのはベンチプレス測定とポジションごとの動きの審査です。ベンチプレスは100kgを19回という記録。NFLだと30回上げるような選手もいるので、それは今後の課題だと思っています。ポジションドリルでは、痛む足をテーピングでガチガチに固めて臨みました。それでも、自分としては他の選手に遜色のないレベルのパフォーマンスができたと思います」

インターナショナル・コンバインでのベンチプレス測定の様子。
「ゆっくり動くと回数は上げられません。勢いで一気に上げました」

 

――世界最高峰のNFLですが、XFLのトライアウトとの違いはありましたか?
「テストの内容自体にはあまり違いはありませんでした。ただ、NFLインターナショナル・コンバインでは他の選手のプレイを見ても、XFL候補選手のプレイを見たときほど圧倒されませんでした。特にOL特有の基礎技術について、インターナショナル・コンバインでは他の選手よりも自分の方が優れている、と感じることもありました。XFLのトライアウトはアメリカ人選手が多く、国のスポーツとして長く親しんできたり、実際にNFLでプレイしたことのある選手がいたりするので、そういったことが表れていたのだと思います」

インターナショナル・コンバインでの順番待ちの風景。町野さんは手前から2番目。
選手が着ているグレーのTシャツは当日配付されたもの。
過去のトライアウトでも選手が同様のTシャツを着用していたため、
「NFLに来たな」と感動したのだとか。

 

――2つのテストを振り返ってみて、今のお気持ちは?
「NFLとXFLという2つのリーグのテストを受けて実感したのは、手の届かない世界ではないということ。僕はOLの中では俊敏性に優れています。高校時代の野球部では一番足が遅かったのに、不思議な話ですよね。この強みは世界でも通用するものだと今回確認できました。今後も弱点をなくし、強みにはますます磨きをかけていきたいと思います」

 

背中を押してくれたのは、仲間の「おもろいやん」

――昨年は大学世界選手権大会の日本代表選手にも選ばれたんですね。
「実は、僕は入部当初から日本代表をめざしていたんです。勧誘を受けた時に、前監督に『お前なら7割の確率で日本代表になれる』と言われたことを真に受けて、それならがんばろうと。実際に4回生の時に選ばれました」

「日本代表」としてプレイした時の写真。「学生生活で一番の思い出です」

 

――世界を視野に入れ始めたのはいつですか?
「4回生の秋以降です。ギャングスターズでは定期的に外部コーチに指導をいただく機会があるのですが、4回生の秋に、元NFL選手で「ニューオリンズ・セインツ」や「ジャクソンビル・ジャガーズ」でプレイしていたOLのクリス・ナオール(Chris Naeole)さんがコーチに来てくれました。クリスさんのプレイを見ていると本当に格好良くて、自分もこんな風にプレイしたいと思いました。その後一度はギャングスターズを引退しましたが、やっぱりまだ続けたいという思いがくすぶっていて。どうせ続けるのなら行けるところまで行きたい、世界にチャレンジしてみたいと思うようになり、チームメイトや監督に相談したら、誰にも反対されなかった。おもろいやん、やってみたら、とみんなが背中を押してくれました。それで、世界最高峰に上り詰めて、まだ日本人の誰も見たことがない景色を見てやろうと腹を決めることができました」

やると決めたらやりとげたい性分だと語る。

 

自分の関心をとことん突き詰めてみてほしい。

――先ほど頭脳戦もアメフトのおもしろさの一つと教えていただきましたが、ロジカルな思考力を持ち合わせていることは、町野さんだけでなく京大生アスリートに共通していると感じます。町野さんが思う「京大らしさ」とはなんですか?
「よく言われることですが、僕にとっての京大らしさはやはり『自由の学風』です。自分のやりたいことをどこまでも突き詰められる環境が、京都大学の大きな魅力だと思います。僕は学生生活の多くをアメフトに捧げましたが、研究室の教授や部の仲間が僕の思いを理解してくれ、それが許される環境だったと思います。

後輩たちやこれから京都大学をめざす中高生の皆さんに伝えたいのは、やりたいことがあるならとことんやってみたらいい、ということ。先日ノーベル賞を受賞された吉野彰先生のように、自分の関心を突き詰めた成果が世界中の賞賛を受けるということは、誰にでも起こりうることです。一歩踏み出し行動してみた先に、おもしろい人生が待っているかもしれない。足踏みをせず、勇気を持って自分の関心と思う存分向き合ってみてください」

所属する工学部では太陽電池の効率性をテーマに研究中。
「身近なテーマながらも分からないことだらけで大変ですが、
先輩や先生に指導いただきながらおもしろさを探っていっています」

 

――最後に、今後の目標を教えてください。
「日本人初のNFL選手になって活躍することです。今回のテストの結果がどのようなものでも、世界への挑戦はまだまだ続けるつもりです。日本人だからNFLは無理、京大生だからスポーツは無理、ではなくて、日本人だろうと京大生だろうと世界で戦える力があるということを世界中に示したいと思っています」

強面な見た目とは裏腹に、物腰柔らかな町野さん。
夢に向かい、走り続ける姿が凛々しいです。

 

町野さんは2020年1月3日から8日にかけて、アメリカで開催されるCollege Gridiron Showcase& Symposiumにも参加予定です。今後も町野さんの挑戦から目が離せません!

町野さん、ギャングスターズの皆さん、ありがとうございました!

 

※College Gridiron Showcase& Symposium:世界トップ大学のシニア選手が招待を受け、各世界リーグのスカウトの前でプレイをする一大イベント。2015年の初開催以降、475名の参加者がプロリーグ参戦のチャンスを獲得している。

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