2022.02.24
北海道・利尻島で京大生が「昆布干し」!?クラウドファンディングで300万円の支援...
すっかり涼しくなり、体を動かしたくなる「スポーツ」の秋を迎えました。
パリ2024オリンピック・パラリンピックで盛り上がった今年は、陸上競技の日本選手の活躍も目立ちました。そんな注目される陸上競技ですが、実は、京大の陸上部もかなり盛り上がっていることをご存じですか?2024年10月26日に創部100年を迎えた京都大学陸上部は、なんと、関西の大学選抜では敵なしで全国大会連覇を目指す選手や、入部後に飛躍的な成長を遂げ、日本学生記録を更新し国際大会出場を目指している選手がいるんです!
今回は、どんな環境でも高みを目指し続ける京都大学陸上部の活躍に迫ります!!
京都大学陸上競技部(以下:京大陸上部)がいつも活動している農学部グラウンドを訪ねました。夕方になると一角には準備体操をする部員の姿が数多く見受けられます。陸上競技は個人種目が多く、黙々と向き合うイメージがありましたが、部員同士で話が弾み、和気あいあいとした空気が部全体に広がっています!
――練習からすごくにぎやかですね。何名程度在籍しているのですか。
中川さん「全体で130名近く所属しています。ほとんどはプレイヤーですが、6名のマネージャーと4名のトレーナーもいて、選手のサポートにあたっています」
――大所帯ですね! 学生同士で支え合うと会話も弾んで楽しそうです。ところで、コーチや指導者の姿が見えないのですが、まだ来られていないのですか?
中川さん「いえ、来ていないのではなく、うちには『大人』がいないんです。大人――つまり、コーチがいないので、練習メニューは自分たちで考えているんですよ」
――なんと!学生の手で成り立っているのですね。
中川さん「はい。部内には長距離や短距離、投擲など、競技種目でパートを分けています。それぞれのパートを束ねているパートチーフに練習内容や取り組みをまとめてもらっています」
――なるほど。それぞれのパートに任せて練習を進めていくのですね。
中川さん「私は主将ですが、すべてに目を通しているわけではありません。もちろん、何かあれば、パートチーフを集めて話し合っています。4回生が中心になってチームを作りますが、主将やパートチーフ、部員の上下関係はあまりないようにしています」
――なるほど「大人がいない」、学生の皆さん自身が主体となり運営されていることは、京大陸上部の特徴とも言えますね!
中川さん「そうですね。もう一つの特徴は、部員の『競技力』の幅が広いことです」
――競技力の幅、ですか?
中川さん「はい。京大陸上部は、スポーツ推薦で選ばれた選手がいるわけではありません。そのため、初心者から全国大会の出場経験者まで、さまざまなレベルの選手が在籍しています。でも、その経験や競技力によって、レベル分けをすることなくみんなが一緒に取り組んでいます。だからこそ、京大陸上部に入ってから、記録が著しく伸びる選手も出てくるのだと思います。詳しくは、全国大会に出場する山中選手や篠田選手にぜひ話を聞いてみてください!」
昔ながらの強豪校にありそうな一軍、二軍みたいないものはないのですね。分け隔てなくチーム一丸となって競技に取り組んでいるということが分かりました。中川さん、ありがとうございました!
取材後、「三段跳びを見せてください!」とお願いしたところ、快く飛んでくれましたので、ぜひ動画でご覧ください。
では次に、どうやって全国レベルにチャレンジしているのか、全国で活躍する2人の選手からもお話を聞いてみました。
ということで、工学部4回生の山中駿さんにお話を伺います。
走り高跳びが専門の山中さんは、京都大学陸上部のなかでも目覚ましい活躍を見せています!
――関西学生陸上競技対校選手権大会(以下:関西インカレ)で3連覇、おめでとうございます!
山中さん「ありがとうございます。関西インカレでの優勝は、確かに嬉しい結果ですが、個人の記録よりも大学の団体記録として、自分の結果が京大の得点に貢献できたことが一番の喜びです」
――走り高跳びは、跳ぶバーの高さを競う個人種目ですよね。ちなみに、走り高跳びの醍醐味は何でしょうか?
山中さん「競技自体の醍醐味は、結果が明確なことですね。バーが残るか、落ちるか。成功か失敗かが一瞬でわかる競技は他にはないと思います。もちろん、結果的なところで言えば、自己ベストを更新していくというおもしろさもあります。ただ、大会によっては、例えば自分と同じようなレベルの人が多く集まっている大会は、優勝することそのものが嬉しいです。また、日本陸上競技選手権大会のように実績のある選手が多く出場している大会では、チャレンジャーとして挑むので、緊張感があります。どの大会も共通していることは、『自分の力をどれだけ出せるか』ですね」
――自分の全力を出し切るために、大会に向けて意識していることはありますか?
山中さん「大会までの1ヶ月間における練習内容の組み立て方については、細かく考えています。特に気を付けているのは、ウェイトトレーニングなどの筋力強化や、走り込みといった基礎体力強化、走り方や飛び方といった競技専門の練習などの『配分』についてです。陸上競技ならではの特性もあると思いますが、なにより大事なのは、試合で最高のパフォーマンスを発揮すること。練習ではなかなか高い記録を出せなくても、試合本番にコンディションを最高の状態に合わせられれば、プラス10~15㎝程度は練習の時より自然に伸びることも多いです」
――そ、そんなに伸びるんですか!? すごいですね。本番にいかにピークを持ってくるかが大事なのですね。ちなみに、京大陸上部にはコーチの方がいないと主将の中川さんから伺いました。練習内容などはどのように考えているのですか?
山中さん「自分よりも良い成績を残している選手に、どういう練習をしているか聞いたりしています。大切なのは、自分にあった練習を行うことです。専門のコーチの方がいたとしても、方針が異なっていたら成績は伸びないでしょう。自分の感覚を大切にしながら練習に取り組める今の環境が、自分にはあっていると感じています」
――中学・高校時代を経て、大学4年生を迎えた今も走り高跳びを続けるモチベーションは何でしょうか。
山中さん「常に目標を掲げることがモチベーションにつながっています。今の目標は、『学生のためのオリンピック』と呼ばれる、来年開催の国際大会『FISUワールドユニバーシティゲームズ』の出場資格を得ることです。そのためには現在の自己ベスト2m23㎝を更新することを目指して、練習に取り組んでいます。まずは関西学生記録である2m26㎝を、次に日本学生記録であり『世界陸上』の参加標準記録である2m33㎝が目標です。現状では、2m26~7㎝くらいの実力を持っているので、今後はあと5~6㎝の向上を目指していきたいと思っています」
――本当に数㎝を超えていく競技なのですね……。明確な目標に向かって、日々練習に向き合っていることがよくわかりました。最後に、9月下旬(取材時:9月上旬)に控えている日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)は3連覇がかかっているかと思います。ぜひ意気込みを教えてください。
山中さん「『ユニバーシティゲームズ』を目指すうえで、日本インカレでは好成績を残すことが大切です。3連覇できるように、調整を続けていきたいです」
――山中さん、ありがとうございました!『ユニバーシティゲームズ』出場に向けて頑張ってください!
続いてのインタビューは、ピンク色の髪色が印象的な工学部4回生の篠田佳奈さん。
篠田さんは、やり投げが専門で、高校時代は全国大会への切符を掴めなかったのですが、京大陸上部に入部して以降、メキメキと記録を伸ばしているようです。なんと、関西インカレでは、山中さんと同じく、3連覇を成し遂げました。
――57m63cmという記録は、自己ベストを1m以上更新したとお聞きしました。凄まじい記録の伸びだと思うのですが、連覇を遂げた現在の感想を教えてください。
篠田さん「関西インカレでは60mを目標にしていたので、届かなかったことが少し残念でした。でも、自己ベスト更新と優勝という最低限の目標は達成できたので、良かったです」
――ええと、「最低限」がすごい高いレベルじゃないですか?! 篠田さんは大学に入ってから記録を非常に伸ばしたとのことですが、何が大きく影響したのでしょうか?
篠田さん「そうですね。高校と大学では練習メニューが大きく異なって、特にウェイトトレーニングに力を入れたことがあると思います。フィジカル面での体づくりがしっかりできるようになり、その結果、パワーが増して投げる力がついたと感じています。それと、京大陸上部にやり投げをしている先輩がいたことも大きいです。高校時代は私しかやり投げの選手がいなかったのですが、京大では先輩にアドバイスをもらって自分で考えて、ということができるようになりました。入部当初は50mを目標に掲げていたので、今振り返ると順調に記録を伸ばすことができました」
――3年間で7m以上記録を伸ばされているのですね。記録更新にむけて努力を続けられたと思います。モチベーションを維持するためのコツはありますか?
篠田さん「やり投げが単純に楽しいので、続けること自体は苦にはならないです。数値で進捗が見えるウェイトトレーニングも、練習でやりを投げる感覚も好きです。込めた力がやりに上手く伝わった瞬間は、とても気持ちが良いです」
――気持ちの部分から端を発して、身体の動きや「やり」のリリースのタイミングに影響が出てしまうのですね。アスリートだからこそのお話で大変興味深いです! ちなみに、篠田さんを筆頭に、大学時代に成績を伸ばす選手が多いと伺いしました。自分の目標を達成する過程で、後輩に教えることが役立ったりすることはありますか?
篠田さん「はい、教えることが自分の理解を深める助けになっています。もともと言語化が苦手で『バーンと』とか『ガッと』とか言葉にしていたタイプなんです(笑)。だからこそ、感覚で行っていたことが一つひとつ自分の中で整理していくことでわかることが多いです。そのほかにも、仲間がいることは心強いなと感じています。投擲パートのメンバーは少数ですが、互いにアドバイスして励まし合いながら練習しています。試合時もコーチングをしてくれたり、応援してくれたりするので、目標を達成したときに、皆が喜んでくれる環境が本当に素晴らしいです」
――今後、大学院に進学されると伺いました。さらに忙しくなると思いますが、それでも陸上を続けるのは、やっぱり楽しさが大きいからですか?
篠田さん「そうですね、私の今の目標は、来年の『ユニバーシティゲームズ』の初出場を果たすことです。そのためにも、日本インカレに焦点を合わせて練習しています。初優勝、そして目標の60m超えを達成できるようにコンディションを整えています。
――篠田さん、ありがとうございました!
自ら情報収集し、練習内容を考え、トップレベルを維持してきた山中選手。先輩・後輩とコミュニケーションを取りながら成長を遂げた篠田選手。お二人の話の中に京大陸上部の強さを垣間見た気がしました。
最後に、中川主将から京大陸上部が掲げるモットーと、その想いを聞きました。
「京大陸上部のどの代でも共通しているのは、常に『強さ』を追求し続ける姿勢です。現状維持に甘んじるのではなく、どんな環境であっても強みを目指し続けることが大切です。この姿勢は、後輩たちにも強く伝えたいポイントです。
私立大学と違って、京大には推薦制度はありません。そのため、毎年競技力を維持するのは難しい面はあります。ただ、強い新入生が入ったからといって『今年は頑張ろう』と考えるのではなく、誰もが今の環境の中で常に最高のパフォーマンスを目指し続けるべきだと思います。どんな状況でも、妥協せずに強さを求めることが重要です。
この考え方は、特に自身の代で掲げたスローガン、『全部勝つ』にも表れています。自分たちの代では、勝つことにこだわり、そうした姿勢をチーム全体に浸透させようと努力しました。先輩たちの姿勢やチームの取り組みから影響を受け、強さと勝利に対するこだわりが代々受け継がれていることを感じています」
みんなで「全部勝つ」。
その目標が、個人競技でありながら、チームの思いを一つにして全員で勝ちに挑もうとするこのチーム――京大陸上部にとても合っているなと感じました。
今年の10月でちょうど100周年を迎えた京大陸上部。いつの時代も環境に左右されず、どんな時でも全力を尽くすその姿勢は引き継がれていき、これからも京大らしい「強さ」を体現するでしょう。
京大陸上部の皆さん、日本インカレ前の忙しい時期に取材を受けてくださり、ありがとうございました!!
後日・・・2024年9月21日から23日に開催された日本インカレの結果が届きました!
なんと、山中選手が自己ベストの2m23cmを更新して2位にランクイン。篠田選手は、目標の優勝・自己ベスト更新には届きませんでしたが、3位に入り昨年からの順位アップを達成!
大会を終えた山中さんと篠田さんからコメントをいただきました。山中さん「学生3連覇がかかった試合、万全の状態で挑むことができ、自己ベストとなる2m24cmを成功させることができましたが、ライバル選手がそれ以上のパフォーマンスを発揮し、惜しくも2位と言う結果で終わりました。優勝を狙っていただけに悔しさが残りますが、この経験を活かして大学院でさらに良い成績が残せるよう頑張ります」
篠田さん「優勝を目標にして取り組んできましたが達成することができず、自分の実力不足を感じました。ただ、やれることはやったので、最高の舞台を楽しむことができました。本当にたくさんの応援ありがとうございました。残りの試合でしっかりと結果を残せるように精進します」
京大陸上部のみなさん、お疲れ様でした!!
【京都大学陸上競技部】
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