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No.163

update.2025.01.29

「カレーとは、一期一会」 メディアも大注目の「京大カレー部」に迫る!!

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1週間前の1月22日は「カレーの日」だったのをご存じですか? 「カレー」は、本当に多くの人に愛され、もはや国民食とまで言われていますよね。
というわけで、今回取り上げるのは、各メディアからもひっぱりだこの「京大カレー部」。部員が作る絶品カレーを食べたことのある方もいるのではないでしょうか。
そんな京大カレー部から、カレーへの熱い思いやこだわり、そして、京大カレー部考案のカレーレシピを教えてもらいましたので、是非お見逃しなく!

「このカレーには、未来がない」 こだわり抜いたカレーを提供する

京大カレー部は、2010年に総合人間学部のメンバー数名で結成され、当初は食べ歩きを中心に活動。今では、飲食チェーン店とのコラボ商品の開発やカレーのレシピ本を出版するなど、活動の幅を広げています。

今回、京大カレー部の部員2名がインタビューに応じてくれました。
こちらは、部長の大野那桜佳さん(農学部2回生)
こちらは、坂上信太朗さん(薬学研究科修士1回生)
普段の活動で使用している大学近くのコミュニティハウスにて。

――噂はかねがね伺っています。まずは、京大カレー部の活動について教えてください!

大野さん「はい。基本的にはカレー作りがメインです。部員同士で、『この前食べたあのお店のカレーが美味しかったね』と話して、そのカレーを再現してみたり、レシピ本を見ながらカレーを作ることもありますね。他には、学内外から、イベントでの出店の依頼を受けて、お客さんにカレーを食べてもらったりしています」

――やはりカレー作りがメインなのですか?

大野さん「そうですね。その他にも昼休みなどに部員が集まって、近くのカレー屋さんに食べに行ったり、週末、他府県にカレーを食べに行ったりすることもあります」

――カレー探訪ですか。楽しそうですね! ちなみに、学外のイベントに出店する場合、イベントの主催者から声を掛けられるのですか?

坂上さん「はい。イベントの主催者から、『こんなカレーを作ってほしい』と要望を言われることもあります。ただ、具体的にどんなカレーを作るかまで指定されることはないので、イベントの内容やその空気感に合ったカレーを作るように心がけています。例えば、以前あった着物のイベントでは、着物という和の要素に合わせて、和の素材を使ったカレーを作りました」

――イベントに合わせたカレーを提供するとは……もはやプロですね。出店の依頼を受けた後のカレー作りの流れを教えてください。

大野さん「まず『こんな案件が来たけど、誰か一緒にやりたい人はいますか』と呼びかけて、集まった部員で、どういうカレーを作るかを話し合います。当部には、カレー作りを主導する部員がいて、その部員を中心に試作が始まります。部員の家やコニュニティーハウスで試作会を開き、他の部員に試食してもらって、意見を出し合い、ブラッシュアップしていきます」

部員同士で何度も話し合って試作の検討をします。
試作の様子。玉ねぎを飴色になるまで炒めます!

――ところで、1年間の中で1番大きなイベント、晴れ舞台はいつなんでしょうか。

坂上さん「やはり、『11月祭(NF)』ですね。多くの人が来場しますし、ホームの京大が舞台なので。今年は、4日間の開催期間中、毎日異なるカレーを提供しました。9月頃から準備に取り掛かり、4つの班に分かれてどんなカレーを作るかを考えましたね。約1、2ヶ月間、週に2回くらいのペースで試作を重ね、『これが足りない』とか『この部分はもっとこうした方が良いのでは?』と、みんなで意見を出し合いながら進めました」

第66回京都大学11月祭(NF)の提供メニュー

1日目:スペアリブを骨から煮込んでやわらかいお肉が絶品の「欧風ホロホロスペアリブカリー」
2日目:キノコの香ばしさと濃厚なココナッツミルクが見事にマッチした「鶏ときのこの虜カレー」
3日目:鮮やかな色味で見た目も美味しそうな「すだち香るぶりの朱(あか)カレー」
4日目:爽やかなハーブと奥深いスパイスがたまらない「香り豊かなハーブフィッシュカレー」

――4日間で4種類も!? それぞれの味を調整するのも難しそうですが、全体のバランスを考えるのも大変そうですね。

大野さん「全体のバランスを調整するために、4つのカレーの合同試作会を実施しました。他の班からのアドバイスによっては、カレーの方向性がガラッと変わることもあります。例えば、『このカレーにはもう未来がない』など。実際に、全く違うカレーを本番で販売した班もありましたよ(笑)」

――未来がない……なかなか辛辣ですね(笑)。方向性が変わると軌道修正が大変そうです。

坂上さん「経験を重ねると『このカレーにはもう未来がない』、美味しいけれどこれ以上進化はしないなと感じる時があって……。お客さんの予想を超えたカレーを作りたい! という思いがあるので、そこは譲れない部分ですね。当部のモットーである『カレー作りは一期一会』にもあるとおり、同じ味のカレーは二度と作れません。だからこそ、より高みを目指せるカレー作りに力を入れているんです

――「カレー作りは一期一会」! まさに金言。その出会いを大切にしながら、こだわりを突き詰めているのですね。

NFでは4日間でなんと5,000食以上を販売!
多くの人が「一期一会」の味を楽しまれたことでしょう。
NFの4日目に出店した京大カレー部のメンバー。

懐の深いカレーという料理に、自分の独創性を詰め込む。

――京大カレー部の活動内容がよくわかりました。続いては、2人の「カレー愛」についてうかがいたいと思います。ずばり、カレー作りの魅力とはなんでしょうか?

大野さん「自分で考えたカレーが自分好みの味に完成したときですね。たまに『これこそが自分が求めていた味だ! 』と思える瞬間があるんです。カレーを作るうえで、スパイスはもちろん大きな要素ですが、カレーのルーとなる玉ねぎやトマトの炒め具合によってカレーの味が大きく変わります。その全てがちょうど良く、完璧に決まったときは本当に嬉しいです!」

大野さんの好きなスパイスはスターアニス。八角として知られている独特な風味のもの。まだカレーには取り入れていないのですが、いつかスターアニスで美味しいカレーを作るのが目標とのこと。

――材料だけでなく、調理の加減も重要だと感じているんですね。そう考えると、カレーの可能性は無限大といえそうです。

坂上さん「そのとおりで、本当に無限にあります。私はカレー作りそのものに取りつかれています(笑)。特に1番好きなのは、鍋の中の香りが変遷していく時間です。なので、自分で作ったカレーを食べることにはあまり興味がないんですよね(笑)」

坂上さんの好きなスパイスはフェンネル。爽やかさが特長でココナッツに合わせるとおいしいそう。今まで一番自信のある創作カレーは「ぶり大根カレー」。……気になります。

――「結果」よりも「過程」、つまり「食べて味わう」ことよりも「作る最中の期待が膨らむ瞬間」に魅了されているんですね。そんな2人にとって、カレーをひと言で表すと何ですか?

坂上さん「うーん、そうですね。私の場合は『作品』ですかね。カレーを作ることは、まだ存在しない美味しいものを作り上げることで、オリジナルのカレーを完成させる過程が1番の楽しみなんです。試行錯誤を重ねながら、可能性を突き詰めていく瞬間が、カレー作りの1番の魅力だと思います」

大野さん「私は『パレット』ですね。カレーって、絶対こうでなきゃいけないという決まりは全くなくて。絵の具のように、何色を出してもいいし、どんな混ぜ方をしてもいいんですよね。スパイスや材料を組み合わせて、満足できるものが完成すると、まるで絵の具で好きな色を作れた時のような感覚になります」

――どんな材料や作り方でも、カレーになってくれる。まさにカレーの懐の深さであり魅力なんですね。

自由だからこだわりを持って、極みを目指す。京大だから、京大らしいカレー作り。

――話を聞いていると、カレー作りの自由さと京大の学風、少し似ているというか相性が良いように思います。実際にいかがですか?

坂上さん「確かに、京大生はみんな議論が好きですし、意見と批評を分けて考えられるので、カレー作りの話し合いがしやすいです。他にも、モノゴトを突き詰められる人が多いという点でも相性が良いなと感じます。世界のカレーと日本のカレーとの違いを知るために、カレーの本場・インドにまで足を運ぶ部員が結構いたりと、そういった探求心を貫く部分もカレー作りとの相性が良いところかもしれません」

京大カレー部の部員がインドを訪問した際の写真

大野さん「京大には、やりたいことを始めたときに必ず周りに『面白そう!』と言ってくれる人がいます。そうやって人を巻き込んで、いろんなことにチャレンジできるのは、京大の大きな魅力だと思います。当部の活動も、自由な発想を後押ししてくれる京大だからこそ大きくなったんだと思います」

――高め合える仲間がいるのは、「面白そう!」と興味を持ってくれる人が多いからこそですね。それでは、京大カレー部の今後の目標を聞かせてください。

大野さん「メディアにも取り上げていただけるようになったので、今度は当部が作るカレーの魅力を伝えていきたいというのが1番の目標です。それと同時に、いつも当部のカレーを楽しみにしてくれているファンの方々が、今後もずっと食べ続けたいと思えるような、愛されるカレーを作り続けたいです」

坂上さん「私は、自分が作ったものを世界中の人に食べてもらいたいという夢があります。カレーに限らず、料理全般で、何か自分が作り上げたものを多くの人に届けたいですね」

――カレーという懐の深い料理に魅せられた京大カレー部。それぞれの楽しみ方でまだ出会わぬ最高のカレーを目指されています。自由だからこそ、突き詰める面白さがある。なんだかんだ似たもの同士の京大とカレーが出会い、さらに新たな魅力を生み出しているのかもしれません。

最後に、京大カレー部から簡単で絶品のカレーレシピ(前部長の石澤さん考案)を教えてもらいましたので、是非お試しください。

◎チキンカレー

《材料》4人前
油 大4
玉ねぎ 280g
ニンニク・生姜 各10g
ホールトマト缶 60g
鶏もも肉 400g
水 200ml
塩 小さじ1
パウダースパイス
 ・クミン 大2
 ・ターメリック 小1
 ・チリ 小1/2
ホールスパイス←お好みで別のスパイスでも可
 ・カルダモン 4個
 ・クローブ 4個

《作り方》
① 玉ねぎはケララ切り¹ 、にんにく・生姜はみじん切りにする。鶏もも肉は皮を取って一口大に切る。
カルダモンは割っておく。
② フライパンに油・ホールスパイスを入れて強火で加熱する。
カルダモンから気泡が出てきてホールスパイスの香りが立ってきたら、にんにく・生姜を入れる。
③ にんにく・生姜の香りが出てきたら、強火のまま玉ねぎを入れ、焦がさないように差し水をしながら飴色になるまで炒める。
④ 強火のままホールトマトを入れ、トマトの水分が完全に飛び、表面に油が滲み出るまで炒める。焦げやすいので焦がさないように気を付ける。
⑤ 火力を弱火にし、パウダースパイスと塩小さじ1を入れる。馴染むまで焦がさないように練り込む。
⑥ 全体が馴染んだら鶏もも肉を入れ、中火で炒める。
⑦ 水を入れて加熱する。沸騰したら弱火にして蓋をし、10分ほど煮込む。
⑧ 最後に味見をしながら、味が薄い場合は適宜塩を足して完成


¹縦半分にした玉ねぎを横半分にし、縦に薄切りにする切り方のこと。

【京大カレー部】

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