People

No.174

update.2025.12.24

未経験から圧巻のステージへ~奇術研究会が届ける驚きと感動のマジック~

この記事をシェアする

大学からマジックをはじめたメンバーが約7割を占めながら、学園祭(京都大学11月祭、通称:NF)では圧巻のパフォーマンスで、期間中延べ1,500人以上の観客を魅了する京都大学奇術研究会KUMA。独自の「師匠と弟子」制度やプロの卒業生による指導で、日々技術を磨いているそうです。今回は、同研究会の建石大和さんと大森昌輝さんに、活動内容や驚きを生み出すマジックの魅力について伺いました!

初心者でも大丈夫。「師匠と弟子」の仕組みとは?

左から建石さん(工学部2回生、会長)と大森さん(工学部2回生)

――京都大学奇術研究会KUMA(以後、「KUMA」読み方:クマ)は何名で活動されているんですか?

建石さん「現在のメンバーは62人で、男性7割、女性3割という比率です。他大学の学生も3割ほどいます」

――大学からマジックをはじめられる方も多いそうですね。

大森さん「約7割が初心者からのスタートで、僕も初心者でした。新歓でKUMAのステージを見たとき、『マジックってカッコいい!』と思ったんです。先輩たちとの食事会でも、皆さんがいろいろとマジックを披露してくれて、その和気あいあいとした雰囲気に惹かれて入部を決めました

建石さん「僕も未経験だったんですが、友人に誘われて新歓に参加したのがきっかけで入部しました。目の前でマジックを見るのは初めてで、素直にびっくりしました。食事会では先輩たちがとても気さくに接してくれて、『こんな不思議なことができるけど、同じ人間なんだ』と思えたんですよね(笑)

新歓でのテーブルマジックの様子

――初心者ということで、入部をためらう気持ちはなかったのでしょうか。

建石さん「もともと未経験者が多いサークルと聞いていたので、特に不安はありませんでした」

大森さん「KUMAでは、先輩が後輩にマジックを一から教える『師匠と弟子』の体制をとっていますが、上下関係が厳しいというわけではなく、とてもフレンドリーな関係性です」

建石さん「毎年6月頃に、2回生以上が新入生にマジックを披露する場があり、それを見た新入生にどの演目をやりたいか希望を募ります。そこから各演目を担当する先輩にくっついて学ぶという流れです。人気が偏る場合もありますが、第3希望まで尋ね、1人の師匠に弟子は4人ぐらいまでと振り分けるようにしています」

インタビューに答える建石さん

――独自の師弟制度がおもしろいですね。普段はどのような活動をされているんですか?

大森さん「毎週水曜日と金曜日の18時半から例会があります。弟子が演目を一通り披露した後、師匠が進捗確認や修正点のアドバイスを行います。例会がない日も部室は解放していて、みんな自由に集まって個人練習していますね」

建石さん「大きなイベントは年に2回、11月に行われるNFと12月の学外公演です。ステージマジックの構成や演出を一から組み立てるので、3月頃から準備に取り掛かる必要があるんです。動画を撮って卒業生にチェックしてもらい、修正する、というサイクルを繰り返します。新入生も6月頃からNFに向けてステージマジックの練習をはじめます」

新入生にテーブルマジックを教えている様子
真剣な眼差しで、先輩からマジックの手ほどきを受けている新入生

プロの卒業生による指導でブラッシュアップ

――KUMAには創立50年の歴史があると伺いました。

建石さん「最初は10名程度でスタートしたと聞いています。現在は関西で一番大きいマジックサークルといわれていますが、コロナ禍で活動が途絶え、一時は存続が危ぶまれたこともあるそうで……。
そんな危機的状況下でしたが、卒業生の皆さんが資金面などでサポートをしてくれたおかげで、なんとか立て直すことができ、現在の規模で活動ができているんです

――卒業生あってのKUMAですね。プロマジシャンの才藤 大芽(さいとう たいが)さんもOBだそうですが、プロの指導を受けることは多いんですか?

大森さん「一般的な市販のテーブルマジックの場合、配信動画などを見れば勉強できますが、ステージマジックは構成が命で、マジシャンの個性が出ます。学生だけでの取り組みには限界があり、プロから目線の使い方などを含めて直接アドバイスをもらうことでブラッシュアップできるんです。素人の未完成の演目を指導することは簡単ではありません。才藤さんのような方に見ていただけるのは本当にありがたいですね」

建石さん「才藤さんは、去り際の配慮も徹底されています。スマートな登場で複数の演目を同時に披露し、僕たちの何倍も会場を盛り上げるのに、撤収はテーブル1個を持って帰るだけ……。技以外にも見習うところがたくさんあります」

前列中央で両手を広げているのが才藤さん。たっぷり指導を受けた後、KUMAのメンバーと記念写真

ステージに応じたパフォーマンスで観客の心をつかむ

――先ほど少し話に出たNFと学外公演について教えてください。

建石さん「NFでは4日間で計25回のショーを行います。昨年の来場者は1500人程度でした。今年は土日も含まれるので、合計で2500〜3000人は来てもらえると嬉しいです!」

大森さん「すでに9月からリハーサルをしています。みんなでステージを組み立てるところからはじめて、新入生たちとの絆も深まっています

NFで披露したハトのショー
NFで披露したスポンジボールマジックのショー

建石さん「今年の学外公演は、京都府立文化芸術会館で開催します。1回のみのショーなので、メンバーは10人ほどを厳選。基本的には卒業するメンバーの引退舞台になればと。NFで披露できなかった演目を追加することも視野に入れています」

昨年の学外公演にて。テーマは「Against nature」

――2大イベント以外に披露される機会はありますか?

大森さん「地域の小学校や、地蔵盆・クリスマスのイベントなどでステージに立つ機会があります。毎年声を掛けてくださるところもありますね」

建石さん「子ども向けのイベントなら風船やカラフルなシールを使います。マンションの住人が集まるようなイベントの場合は、ステージ上に何人か呼んで、ユーモラスなトークを交えてマジックすることも(笑)。空気を読んで、その場で内容を変更するケースも珍しくありません」

インタビューに答える大森さん

――なんと臨機応変な! 実際にやりがいを感じるのはどんなときでしょうか。

大森さん自分なりに工夫したマジックの『現象』が成功した瞬間は楽しいです。試行錯誤しながら形にしていくプロセスに達成感を覚えます」

建石さん「マジックショーの依頼を受けたとき、普段は内輪だけで披露しているネタに挑戦することがあります。例えば、結婚式場のパーティで鳩を出すとか。『これは一般の方にウケる』、『これはマジシャンにウケるだけだ』など試しながら学習していくので、披露した際に大きな歓声をもらうとやってよかったなと心から思います

――マジックを披露するうえで、心掛けていることはありますか?

建石さん「テンポの良いステージマジックが好きなので、ゆっくり歩くより軽やかに動いたり、『現象』が起きている瞬間は客席を見て拍手をもらう時間を作ったりします。演技に合わせて曲のテンポやリズムを選びますし、京大生への期待に応える意味で、たまに賢いキャラを演じることもありますよ(笑)

大森さん「僕はいつかプロのマジシャンが『お客さんを楽しませる心がとても大事』と言っていたことが忘れられなくて。良いマジックではなく、楽しませるマジックにこだわっています

せっかくなので、テーブルマジックを実演してもらうことに!

今回披露してくれるのは、ザッツ編集者が引いたトランプの数字とマークを当ててもらうマジック。(スペードのジャックを引きました!)

1回目。パラパラとトランプを落とす建石さんに「ストップ」と声をかけて止めたトランプのカードは見事、スペードのジャック。すると、「これだと僕がタイミングを調整していると思いますよね」と話す建石さん。
2回目。今度は落ちるトランプの間に、好きなタイミングで指を差し込んで欲しいと指示がありました。指を差し込んで選んだ1枚のカードを抜き取ります。すると、またもやスペードのジャック……。「今度は指を差し込むときにカードを落とすスピードを僕が調整した、と思いますよね」とほほ笑む建石さん。
3回目。最後はトランプの山を2つに分けるよう指示がありました。言われた通りに分けてみると……その境目も、やはりスペードのジャック!

1回目より2回目、2回目より3回目と、どんどん「ありえない」状況になっていく様に圧倒されてしまいました。
建石さんが「実は3回ともやっていること(タネ)は同じです。でも見せ方を変えることで、お客さんにはどんどん難しいことをやっているように思わせる。そこが演技であり、構成なんです」と話してくれました。その巧みさにあっぱれです!

「自由の学風」だからこそ、好きなことに打ち込める

――では話題を変えて、お二人にとって京大の魅力とは何でしょう?

建石さん「何かをはじめようと思ったら、その分野に特化している友人や先生がまわりにいる。自分で自由に動ける環境なので、マジックに時間を割く日があれば、勉強に打ち込む日もある。すごく都合のいい場所です」

大森さん「京大は『自由の学風』として知られていますが、確かに他大生に比べると自由な時間が多いと思います。課外活動や自分のやりたいことに、とことん向き合えるのがいいところです

――授業も多いと思いますが、勉強とサークル活動の両立は大変では?

建石さん「僕の場合、授業に出たならきちんと集中して勉強します。その時間内で何かしら賢くなることを常に意識していますね」

大森さん「次の予定まで30分空くときとか、そのスキマをうまく使います。勉強時間をまとめて取るより、短く積み上げるタイプです。無理に長時間確保しても僕はやらないので(笑)、スキマを活用するようにしています

授業で、回折格子(種々の波長が混ざった光を波長ごとにわける光学部品)による光の波長測定実験をする建石さん
大森さんが授業で行った、pH(ペーハー)変化の分析化学実験

――マジックの経験が勉強につながることはありますか?

建石さん「僕は工学部物理工学科の機械システム工学コースに在籍しています。夏休みの実習でCAD(コンピューター支援設計)に興味を持ち、自分で3Dプリンターを買いました。ゆくゆくはマジック道具もモデリングして、部員に共有できたらいいですね。KUMAは関西最大級のマジックサークルだからこそ、もっと仲間を増やして、ステージマジックを盛り上げていきたいと思います」

――最後に、中高生や受験生に向けてメッセージをお願いします!

建石さん「受験には必ず終わりが来ます。京大に入ると、刺激をくれる素敵な仲間がたくさんいますよ。この記事を読んだ方は、KUMAのステージをぜひ一度見に来てください!」

大森さん「大学ではやりたいことに打ち込める時間がたくさんあります。今は苦しさを前借りしていると思って、この先の楽しい未来に向かってがんばってほしいです」

KUMAポーズでパシャリ

たくさんの人を笑顔にするマジック。師匠と弟子、そして仲間同士で力を合わせながら、これからも魅力あるステージをたくさん届けてください。応援しています!

【京都大学奇術研究会KUMA】

● 公式サイト:http://magickuma.g3.xrea.com/

● X(旧Twitter):@kyodai_magic

● Instgram :@kuma_kyodaimagic