ザッツ京大

ヘルシー弁当の「秘密」。

こんにちは。

ザッツ京大編集部です。

今回のテーマは「食」。

実は、京都大学と京都大学生協がコラボレーションしたお弁当があるんです。

そう。知る人ぞ知る。

「ヘルシー弁当」です。

 

 

……もう、名前からして余分なものが入っていません。

 

さて、このお弁当。

私は出会ったその日から、「京大名物」になるんじゃないか。

いや、知らなかっただけで「名物」だったのではないか。と思いながら、日々、もぐもぐしていたのです。

 

なにしろ、その名の通り「ヘルシー」(500Kcal以下・野菜4種以上・塩分3g)なだけでなく、

  • おいしい

  • 満腹感がある

  • 安い(税込400円)

の三拍子。

 

そして、ヘルシー弁当を食べながら考えたのです。

「なぜ?」と。

なぜ、おいしいのか? なぜ、満腹感があるのか? なぜ、こんなに安いのか?

(「ヘルシー」なのに。。)

そして、京都大学健康科学センターと京都大学生協のコラボレーションということは、そこには何かしら秘密(ザッツ)があるかもしれない、と。

 

さてさて。

「ヘルシー弁当の秘密」、はじまりです。


登場人物紹介。

今回取材させていただくのは、「ヘルシー弁当」を担当する京都大学と京都大学生協を代表するお二人。

まず、「ヘルシー弁当」の監修を務める京都大学環境安全保健機構・健康科学センターから松崎慶一 助教。

ヘルシー弁当の生みの親。創設メンバーの一人です。

もともとは腎臓病を専門とした内科医。現在も京都大学で、健康診断などをフィールドにした研究や、京都大学保健診療所での診療などを行っています。

 

そして、京都大学生協・食堂企画室からは、管理栄養士の馬渕直子さん。

創設メンバーだった前任・飯田朋子さんの後継者。ヘルシー弁当担当歴・6か月。管理栄養士としての視点も活かしながら、各店舗の売り場を回り、POPに目を配り、お弁当を買う学生の会話にも耳を傾け、ヒントとアイデアを探すその姿はプロフェッショナル。

 

環境安全保健機構 健康管理部門/健康科学センターの詳しい情報はコチラ

京都大学生活協同組合・ヘルシー弁当の詳しい情報はコチラ


 

「おいしい」秘密。「特別ではない」。

京都大学と京都大学生協のコラボレーション「ヘルシー弁当」は、2015年10月からテスト販売が開始。半期の販売ながら初年度には約4,700食を販売。それが2017年度には約14,500食と右肩上がりのお弁当(生協で販売しているので、もちろん一般の方も食べられます)。

そんなファン増殖中のヘルシー弁当の魅力はいったいどこから? 松崎先生、馬渕さん、教えてください!

 

松崎先生「先に、お話ししておきますが、このお弁当に、京大が発見した新たな物質が食材として使われているとか、遺伝子の組換えを行っているとか、そういう話はないですよ(笑)。」

……なるほどっ!……いやいや……その辺りは、少し期待をしていたんですけれども。。

松崎先生「(笑)。まずですね。「おいしい」に関わらず、なぜヘルシー弁当が販売できているのかというと、それはもう生協さんのおかげです」

……と言いますと?

松崎先生「すべては、生協さんに厨房があるからです。「おいしい」理由のひとつは、「作りたて」。そして、それが提供できるのは、生協さんだからです。そして食材も、生協さんの基準をクリアしているものだから安全で安心できるんです」

 

ヘルシー弁当の主菜の面々。どれもまさに「主役」です。
左上:しっかりとした食べ応えが魅力の「ハーブチキン」。
右上:プリっとした鰯がまるごと入った「鰯醤油煮」。
左中:暑い季節に「酢」がおいしい「肉団子酢豚風」。
右中:すっきりした後味の「梅シソ入りトンカツ」。
左下:ご飯がすすむ。「漬込み香ばし焼鯖」。
右下:風味が素敵なアクセント。「鶏塩麹柚子胡椒」。

 

……なるほど、「作りたて」ですか。それは納得です。

ただ、私が「おいしい」と思った理由の一つに、いわゆる世間の「ヘルシー」を冠したお弁当は、野菜だけとか、とても薄味とか、「味気ない」食べ物になっている印象があるのに、これは味がしっかりしていると言いますか……。

馬渕さん「味がしっかりしているというのは、それは本当にそうなんです。なぜなら、ヘルシー弁当に入っているものは、すべて大学の食堂で提供されているものと同じものですから」

……ええと……つまり??

馬渕さん「ヘルシー弁当用に、味つけを変えたり、そのための主菜を作ったりをしてはいないんです。つまり、生協の食堂で出しているものを、私たちのほうでバランス良く「選択」と「調整」をしてお弁当にしているんです。だから、その意味ではヘルシー弁当は「特別なお弁当ではない」んです」

……いきなり、コロンブスの卵的な。なるほど、イメージとしては、食堂のトレーに、主菜や小鉢などの品々をその中身と量をうまく選んでのっけてもらっているようなものでしょうか。

なんでも、生協さんのお弁当は、朝の9時前から作り始めて、でき次第、各店舗に車で運ぶとのことです。……すごいスピード感。まさに「作りたて」です。

松崎先生「ただ、メニューの開発やリニューアルは、健康科学センターと生協さんでかなり密な打ち合わせをしています。生協さんが提案してくれるアイデアに、こちらも意見を出しながら試作品を作ってもらい、試食、センター内のアンケート調査、改善と、ブラッシュアップを重ねていきます。みんなで育てるイメージで、私たちが「おいしいと思ったものを出す」のです」

……みなさんの「おいしい」という気持ちも集約されているのですね。そこにまた「安心」できます。

 

満腹感の秘密。「食べづらい方がいい」。

……あとですね。ヘルシー弁当は、パッと見は「小さい」ですよね。なのに、食べ終わったときになぜか「食べたなぁ」という満足感があります。実は……外食だと、つい大盛にしてしまうんですけど、そんな私でもなぜ満腹感を感じるのかなと……。

松崎先生「確かに、このお弁当を食べた人からは、けっこう「思ったよりもお腹がふくれた」といった声もいただきます。そうですね……このポイントは、「食べづらい方がいい」ということですね」

……「食べづらい」方が、ですか??

馬渕さん「そうですね。例えば、時間をかけて食べることで、満腹感が得られるんですよ」

松崎先生「はい。細かいサラダだとか、豆だとか。それをちょっとずつ食べる。お箸で一つひとつをつかんだりするので、時間がかかる。そしてよく噛む素材を使っている。「食べづらい」――つまり、よく噛んで、時間をかけて食事することで、満腹中枢が刺激されていると思いますよ」

……確かに、ヘルシー弁当の付け合わせの野菜には、お豆やトウモロコシ、オクラ、レンコンなど、きちんと噛まないと、口の奥へ送り込めない食材を使った丁寧な料理が入っています。

いろいろな人に「よく噛みなさい」と言われながら、身につかずにきてしまったことは否めないのですが……。それが、無意識に「よく噛む」ように、「時間をかけて食事をする」ように、お弁当に「動かされている」……これは、驚きです!

「食べづらい?」いやいや。噛んでおいしい副菜などなど。
左上:ツヤツヤのネバネバのオクラは歯ごたえも気持ちいい。
右上:シャキシャキ噛んでおいしい「根菜サラダ」とこんにゃくの和え物。
左中:箸も心もゆっくり「昆布豆」。
右中:きゅっきゅっとした弾力。副菜の定番「いんげんのごま和え」。
左下:緑鮮やかなブロッコリーと箸休めの「さつま芋のレモン煮」。
右下:噛みごたえがあるのは副菜だけはありません。「十五穀入りひじきご飯」も噛んで噛んで。

 

「安い」の秘密。 「売れ行きだけではない」。

……ちなみに、「税込400円」という値段は、かなり良心的なお値段と思うのですけれど。その辺りは、どうなのでしょうか?

馬渕さん「…………容器代も込みなので、生協としては……ギリギリのところでやっています(笑)。でも、松崎先生の言う「啓蒙活動」の意味合いも大きいですから。生協の中でもヘルシー弁当はそう位置付けられてます」

松崎先生「生協さんとはミッションが共通している部分があるから、この値段で作っていただけていると思っています。生協さんには本当に感謝しています」

馬渕さん「そうですね。年2回のメニューの見直しもそうですが、単に「売れる、売れない」だけでは、やっていません。例えば、大学生に不足がちな栄養素を補うために、どのようなメニューがいいか、摂取率の低い「魚」をどうおいしく食べてもらうか、そういった視点を持って考えています。……もちろん、マイナスが続いたら困るわけですけど(笑)。ちなみに、現在は、18種すべてのメニューが、合格ライン以上の食数が売れているんですよ」

……なんと、売れ行きだけではない? そして、啓蒙活動? ミッション? ……やはり、単なるお弁当とは「一味」違うようです。

 

「売れ行きだけではない」と言いましても、やはり生協さんの販売、お客さまに「届ける力」はすごいわけです。POPを作り、お昼時には大きく展開したり。松崎先生が「本当に生協さんのおかげです」というのがわかります。
左上:時計台生協ショップにて。大きなテーブルで展開されています。
右上:南部生協会館MATZの大きな看板。「医学、薬学の学生さんも多いので、特に販売に力を入れている店舗です」(馬渕さん)
左下:お客さまの買い方を観察する馬渕さん。ちょっとした言葉にヒントを見つけることもあるそうです。
右下:吉田ショップ。三角柱と呼ばれるPOPが目を惹きます。

 

コンセプトの秘密。「治療」と「健康」は違います。

聞けば聞くほど、そのシンプルな見た目と名前以上の何かを詰め込んでいる「ヘルシー弁当」。……そもそもなんですけれど、ヘルシー弁当は何のために開発されたんでしょう??

 

松崎先生「はじまりは、保健診療所で行っている保健指導のときに、「忙しくて食べる時間がない」とか「何を食べていいかわからない」という人が結構いたんです。そこで、京都大学の健康科学センターとして、具体的なモノを提示できないかなと考えたんです」

……なるほど。それでは「これを食べれば大丈夫」みたいな形としてお弁当を開発されたのですか?

松崎先生「いや、「これを食べなさい」、「これは食べないように」というのは、言わば「治療」の考え方で、それは私たちの考える「健康」とは違うんです。……私たちも、生協さんと真剣にディスカッションを重ねていく中でかなり考えたんです。「健康」ってなんだろう?と」

……「治療」と「健康」は違うと。……そうすると、「健康」って何ですか??

松崎先生「これはそんなに難しい話ではないんです。例えば、「健康」な状態で暮らしていたら、お酒を飲む日もあれば、ケーキを食べる日もありますよね。500Kcalどころか、とても脂っぽいものを食べたい日もあると思うんですね。でも、その「食べたいものが食べられる」状態であるということが「健康」なんですよ

……なるほど……。「健康」に対する感じ方が変わりました。「健康」って、何か今の自分とは別の……よくわからないけど「何かもっといいもの」になるものだと思っていたと言いますか。

ヘルシー弁当の裏側には、真剣に重ねられた幾多のディスカッションが。先生の説明にも熱がこもります。

 

ヘルシー弁当の正体。「教材」であり、「うねり」です。

松崎先生「だから、「ヘルシー弁当」は、自分で健康管理ができるようになるための「基準」がわかるもの。例えば、一日に摂るカロリーの目安って、個人個人で少し違ってきますけど、だいたい1800Kcalから2200Kcalなんです。だから、少しカロリーをひかえておこうかな、というときのお昼ごはんの一つの目安として500Kcal。4種類以上の野菜を摂るということも、塩分3gもそう。「このくらい」という目安を自分の中に感覚的に持つためのものなんですよ」

……その考えは、お弁当を食べているだけではわかりませんでした! てっきり、「これを食べていればOK」みたいに思ってしまって……。

松崎先生「もちろん、そうすることもできますよ。でも、学生さんにとっては、大学は社会に出る前の最後の教育の場です。大学を出て社会に出たら、誰も教えてくれなくなる。それなのに、「食」や「健康」に対して自分で何もできないのは、困りますよね。だから、ヘルシー弁当のテーマの一つは「食育」。教材みたいなものです。しばらく脂っぽいものや塩分の濃い食事が続いているな。だから今日のお昼は少し軽くしようかな、そういう風に、自分でコントロールできるようになって欲しいんです」

馬渕さん「それと、適量と同じく大切なのは、食べる「タイミング」です。よく学生さんが、生協の棚の前で「おなかすいた」と言っているのを、どの時間帯でも見かけるんです。きっと、食事の時間というものがあまり守られていないのかなと。でも、きちんと食事の時間に食べる、というのは大事です。そうすると、身体はその習慣に反応して消化液を出しはじめてくれるので、消化にも良いんですよ。あとは……食べることが「楽しい!」という気持ちは大事かなと思います(笑)」

「食べることは、まず楽しくないと」(馬渕さん)。「それは本当に大事。「食べる」とか「飲む」って本質的にはおもしろいこと。だから、「ごはんでも」って誘ったりするわけです」(松崎先生)

 

……自分で管理できるようになる、ですか……。確かに、それが「健康」でいるために必要だというのは、すごくわかりました。そして「楽しむ」ことも(笑)。

松崎先生「そうやって、自分の「健康」を考える人が増えていくこと、「健康」につながっていくというのは、私たちが目指しているところです。ヘルシー弁当は、大学を「健康」にする。「健康な大学」が社会を元気にする。そう思っているんです」

……おお。「社会を元気にする」。それがヘルシー弁当の究極のビジョンなんですね。大学が社会の一員として果たす役割に、ヘルシー弁当はつながっているという。

松崎先生「そうですね。社会の中で、大学が起点になって、みんなの「健康」を考えて、発信していく。それは私たちが京大で取り組んでいる「ヘルシーキャンパス運動」につながるわけです。ヘルシー弁当は、そういう「うねり」のひとつになればと思っています。それに……」

……それに……??

松崎先生「とても「らしい」と思うんですよ。食べた人が「自分で学び、考える」って。……とても京大らしいお弁当じゃないですか(笑)」

……松崎先生。「おいしい」オチまで、ごちそうさまでした。

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