2021.11.24
近頃、話題の「学際」って何?むきだしの興味関心から生まれる「真摯な学術対話」が読...
こんにちは。
どうも、「ザッツ・京大」編集部でございます。
突然なんですが、皆さん。
京都大学には、いろんな国から、それはそれは沢山の留学生の方が来ています。
詳しくはこちら!
「探検!京都大学」京大データ
http://www.kyoto-u.ac.jp/explore/data/
留学生の方は、そのまま日本で研究を続ける人もいれば、自国に戻って大学で学んだ内容を活かした仕事をしたり、日本の企業に就職されたり、いろいろな道に進まれていますが、今回、編集部が取材したのは、日本で、滋賀で、クラフトビールの醸造所を立ち上げたお二人。
どういうきっかけで醸造所を始めたのか?
お二人の出会いは?
なぜ滋賀県なの?
いろいろと聞きたいこと満載でございます!
と、ここでクラフトビールと醸造所(ブルワリー)についてちょっと豆知識を
今回、ビール醸造所の取材を行うということで、ちょっと事前にどういう施設なのか調べてみました!
「クラフトビールってどんなビール?」という人もいらっしゃると思いますが、今のところ明確な定義はないそうです。
直訳すると“職人がつくるビール”。この言葉の通り、クラフトビールとは、小規模の醸造所でつくられた、こだわりのビールといったところです。大量生産ではむずかしい醸造法によってつくられた、バラエティに富んだビールともいえるでしょう。
日本では大手ビールメーカーがさまざまなビールを販売していますが、実は日本で流通しているビールの99%は、低温で発酵が行われる「ラガー」のなかの「ピルスナー」というスタイル。
つまり、世の中には知らないビールが限りなくあるということ。そうした未知のおいしさを味わえるのもクラフトビールの魅力です。
ブルワリーというのは、ビール醸造所のことで、文字通りビールを醸造(つくる)ところのこと。
海外では、ホームブルワリーが許可されているそうですが、日本では免許が必要。
設備の準備も必要だし、簡単にできるものではなさそうです。
やってきました近江八幡。なんだか時代劇の世界に来たみたいです。ちょっと近江八幡には歴史的な町並みが保存されていて、時代劇の撮影等に使われているそうです。いいとこだなぁ。。
と!近江八幡の紹介とか、観光に来たわけではありません!そう、今回ご紹介するお二人はこの滋賀県の近江八幡、まさにこの場所で起業されたのです。
いろいろなご縁があってこの場所なのか、時代劇が好きだからなのか?
お二人が起業したのは「TWO RABBITS BREWING COMPANY 二兎醸造所」
この建物は元々は電気工事会社の倉庫に使っていた場所だそうです。
その場所を、ご厚意もあって借りることができ、専門の方の協力してもらいながらも、できるだけ自分たちの力で、醸造施設とオフィスに改装されたそうです。
そして、このタンクの前に立つ堂々としたお二人が、今回の主人公。
左がオーストラリアご出身のショーン(SEAN COLLETT)さん。
右がモンゴルご出身のバト(BATBAATAR PUREV-OCHIR)さん。
ショーンさんが主にクラフトビールづくりを、バトさんが販売等を担当されています。
いやぁ、、お二人とも背が高いし、堂々としてます!
ご登場いただいたところで、詳しく聞いていきましょう!
二人が出会ったのは京大大学院のMBAコース。ショーンさんはガス業界で、バトさんはIT業界でキャリアを積み重ね、お互いに次のステップに進むためにMBAコースに入学されたそうです。音楽好きということをきっかけに徐々に仲が深まりました。
ある時バトさんは、ショーンさんが京都大学に来る前に、10年ほど地元のオーストラリアでホームブルーイング(自家醸造)の経験があったという話を耳にします。
音楽はもちろん、ビールも好きだったバトさん。これは!ということで、「モンゴルでクラフトビールをやりたいから、醸造のことを教えて」とショーンさんにお願いしたそうです。
「そうしたら、ショーンが「モンゴルじゃなくて、日本で一緒に起業しない?」って。逆に誘われたんです」(バトさん)
そこから、二人は一気に起業の話を進めていきました。
もちろん簡単に設立できたわけではなく、設立を決めてからは、ショーンさんは学業の傍らオーストラリアでクラフトビール醸造専門学校にも通い、醸造士の免許も取得。バトさんはその間日本で起業に向けた準備をし、晴れてTWO RABBITS BREWING COMPANYが誕生しました。
お二人とも地元ではなく、日本で、それも醸造所。ビッグチャレンジ!
ところで、「TWO RABBITS BREWING COMPANY」「二兎醸造所」という会社名を聞いて、すでにお気づきの方もいらっしゃると思うのですが、社名の由来は“二兎追う者は一兎をも得ず”ということわざから。
起業前にいろいろとアイディアを模索していた際に、ショーンさんの奥さんからこのことわざを教えてもらったことがきっかけのようです。
「逆に、一つのことに決めてこれを極めるべく精進するという意味に捉えることもできると考えられ、いい言葉だと感じました。」(ショーンさん)
会社のロゴは、奥さんが考えてデザインされたそうです。思いのこもったお名前なんですね。
すごいかわいいです。
グラスとか、スウェットとかも作られていて社名とマークのデザインに愛着も感じます。
奥様作のロゴマーク。
ショーンさんとバトさんは、起業するにあたっては、MBAコースの教員でもあった、Baber先生によく相談をしていたそうです。
取材していた日にも先生が来ていて、いろいろ話をしていました。コースを卒業されてからも交流があるんですね。
「起業については、MBAコースで学んだ理論があり、その理論に沿って決めました」(バトさん)
起業の場所を近江八幡に決められたのも、MBAコースの講義の中で得た知識を活かし、競合先、経費、販売拠点の想定などしっかりと市場調査を行った上で決められたそうです。単に雰囲気がいいからとかの理由ではないのですね(当たり前か!)
その際にもBaber先生には市場調査の条件をどうすべきかなどいろいろとアドバイスがありました。
醸造所の話を聞いた時はホントに驚いたそうです
Baber先生に当時の様子を詳しく話を聞いてみました。
「MBAコースの最終年、年末年始休暇明けに彼らが急にクラフトビールの会社を立ち上げたいと相談に来ました。
別のプロジェクトが進んでいる中での話だったので、思わず「No〜」なんて言葉がでてしまったほど、驚きました。
私は、週ごと・月ごとに取り組むべきテーマを彼らに課し、実現に向け二人をフォローしていきました。
ハードルはかなり高かったのですが、彼らはいつも与えられた課題以上のものを返してきました。それは、私にとってうれしい驚きでした。私は自分の意見を述べ、取り組み方をアドバイスしました。彼らはそれを参考にして改善を図り、計画を進めていきました。こうしたやりとりを繰り返した結果、こんなに短い期間で会社を立ち上げ、私もこうしておいしいクラフトビールを飲めるようになったワケです」
と先生は語っていました。
ショーンさんとバトさんにお話を聞くと先生のお知り合いの方を紹介してもらったり、醸造所の設立にBaber先生の尽力は欠かせなかったようです。MBAコースに入った縁ですよね。バトさんは先生のことを「ボス」と呼んでました!
学生時代のバトさんとBaber先生
バトさんが着てる服にはすでにロゴマークが!
少しだけ、クラフトビールを作っている様子を見学させてもらいました!
クラフトビールづくりの担当はショーンさん。
「クラフトビールを作るのはホントに楽しい。アートである以前に、科学。いつも何か新しい発見があります。ビール醸造はどんなところにも科学的な根拠があるんです」
クラフトビールの仕込みは毎日行っているわけではないそうです。
ただ、仕込みの日は朝早くから。
仕込みを行うショーンさん
いつもにこやかなショーンさんもこの時はキリッとされています
クラフトビールの原料は当然麦。煮込む時間や水の量等はその日の気候にもよって変えるそうで、味はもちろんのこと、原材料や醸造法など、ビールづくりに関するあらゆることにとことんこだわっていること。このこだわりが、TWORABBITSさんのオリジナリティが生み出すんでしょうね。「微妙な素材の配合で味が変わる」ようで、そこがまさにショーンさんのいう「科学である」というところでしょうか。
クラフトビールを仕込んでいる時には工場の中には、音楽がかけられているのですが、この音楽も麦の発酵具合に影響するそうです!
クラフトビールをタンクに詰めて出荷の準備。ここからはバトさんが仕切っていきます
さらに、バトさんとショーンさんは、地元の方と協力して、環境問題についても、取り組んでいます。
クラフトビールはすべて自然由来の原材料からできていて、それ故に水を大量に使用するという問題も。
自然にやさしいビールづくりを目指し、「TWO RABBITS BREWING COMPANY」では 水の使用量、廃棄量、エネルギー消費量を可能な限り抑えるように努めているとのこと。さらに、醸造時に出るモルト粕も地元の養豚場に提供しています。
「TWO RABBITS BREWING COMPANY」のinstagramでは、設立当時の様子が紹介されていたのですが、
ホントに短期間でここまで進んできた様子が伺えます。
ビール作りと、出荷の準備が終わり、一段落したお二人に、もう少しだけお話を聞いてみました!
— 京大のクラスメイトで、現在はビジネスパートナーでもある相手のことを一言で表すと?
ショーンさん 「MAJIME。とてもまじめです」
バトさん 「まじめ?! う〜ん、改めそう言われると、まじめかな。確かに、仕事に関してはとことんまじめですね。でもそれはショーンも同じ。日本でビジネスを成功させるためには、まず質の高い商品を提供することが必須です。そして、お客さまや関係者と良い関係を築く必要があります。そのためには、まじめであることは大事ですね」
ショーンさん 「主に僕がビールづくり、バトが営業を担当するというように、僕たちはお互いの持ち味や個性を引き出し合える関係なんです。言葉では言い表せないバランスがあるように感じます」
— 日本でクラフトビールの醸造会社を立ち上げるのは、大きなチャレンジだったと思いますが、実現できた理由はなんだと思いますか?
バトさん「MBAコースで学んだことはもちろんですが、素晴らしい先生や仲間、多くの人と出会えたことがとても重要でした。その「出会い」によって未来が開けました」
ショーンさん 「歴史のあるクラフトビールづくりは、やりがいのある仕事です。僕たちは幸い、いろいろな人と出会い、力を貸してもらい、夢をかたちにすることができました。でも本当に大切なことは、続けることだと思っています。そのために、いつも自分に向上心や探究心を忘れてはいけないと言い聞かせています」
— これからの目標は?
バトさん 「滋賀県や日本各地にパブやビアカフェを展開して、より多くの人にTWO RABBITS BREWING COMPANYのビールの魅力を知ってほしい。コアの部分を大切にしながら、会社を成長させていきたいですね」
ショーンさん 「お客さまに喜んでもらえる、おいしいビールをつくり続けること。そして、日本にもっとクラフトビールが広まり、定着するように取り組みたいと考えています」
つまり、お二人とも……
「TWORABBITSのクラフトビールをもっと世に広め、楽しんでもらうこと!」
自分たちが好きなこと、情熱を燃やせることを見つけ、全力で取り組むショーンさんとバトさんから、元気と勇気をもらいました!
出来上がったビールを片手に
お話をお伺いしました!
取材に訪れた日は、ちょうど近江八幡ならではの古い蔵をリノベーションしたビアカフェがオープンする日でした。お二人の目標でもある、「TWORABBITSのクラフトビールを楽しんでもらうこと」、+それが実現できる場所です。どんどん目標を実現していっていますね!
朝からみなさん大忙しの様子でしたが(大変な時にいろいろお話を聞かせてもらってすいません!)、ショーンさん、バトさん、スタッフの方に加え、ご家族の方もカフェに集まりすごい楽しそう!
徐々に徐々にお客さんも集まりはじめ、アットホームで賑やかなスタートになりました。
近江八幡に行くことがあったら、皆さんもぜひ行ってみてください!
OPENからお客さんが続々と。
皆さん美味しそうにビールを飲んでらっしゃいます。
羨ましい!
近江八幡で醸造所を起業した留学生のお二人。いかがでしたか? すごいチャレンジですよね。
お二人もスタッフの方もとても魅力的でした!
MBAコースで学んだことをどんどん実践していく姿を見て、コースの仲間も、先生も応援しているのでしょうね。
社会に出てチャレンジする卒業生の姿は頼もしいものでした。
卒業後の進路を毎年いろんな道に進む卒業生がいるので、この卒業生取材、シリーズ化したいなぁなんて個人的には思っています!
と、いうことで、取材はここまで!
取材なので朝から我慢をしていましたが、お二人自慢のクラフトビールをいただきます!
それでは、また次回のザッツで!
あっ、あともう一つ。
実は、今回のショーンさんとバトさんの取材は、同時に留学生の卒業後を取材するムービーの撮影も同時に行っていました。
留学生のその後を紹介する映像 "Free Thinkers” はこちらでご覧いただけます(全編英語です)。
「Alumni profiles: "Free Thinkers"」
https://www.kyoto-u.ac.jp/en/about/publications/movies/alumni
ショーンさんバトさん以外の留学生の卒業後も紹介していますので、ぜひご覧ください!