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No.17

update.2017.12.20

最高の焼きイモ体験を!~スーパー安納芋プロジェクト始動~

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い~しや~きい~も~♪」夕方、どこからともなく聞こえるこの声。みなさん一度は耳にしたことがあるのでは?

焼きイモの移動販売でひとつ買ってみます。割ってみると、あったかい湯気とともにほくほくのイモが出現!うん、甘くておいしい~(◜௰◝) これこれ、この味♪

・・・想像するだけで幸せ体験!でもこの焼きイモがまさに自分好みの味だったら、もっと幸せになれると思いませんか!?

そんな究極の幸せを追求すべく、日夜イモと向き合う学生がいます。
そして新たなプロジェクトが始動。その名も「スーパー安納芋プロジェクト」!!!

一体どんなオイシイプロジェクトなのでしょうか?めくるめくイモワールドへ、あなたをいざないます。

本日の案内人

左:河田 慎平さん(工学部4回生)、右:安井 美結さん(農学部4回生)。このプロジェクトは、学部の壁を越えた共同研究なのです!

どんなプロジェクトなの?

広報H:「プロジェクト内容も気になりますが、そもそもなぜ【安納芋】なんでしょう?」

河田さん:「安納芋は糖度が高いイモで知られていて、産地は鹿児島県の種子島なんです。でも他の地域で育てられた安納芋もありますし、種子島産の中でも品質にバラツキがあったりします。きちんとおいしさを保証し、「種子島産安納芋」の価値を高めたい。そんな地域の人の思いと、京大の持つ技術力を組み合わせて、安納芋のブランド力を向上させよう!というのがこのプロジェクトの目的です。」

種子島は、こんな素敵なところです!(ドローンにより撮影)

安納芋の畑。広大さに圧倒されます。

収穫された安納芋。ジャガイモみたいな形のも多いですね。

広報H:「なるほど・・・【安納芋=甘くてしっとりしたおいしいイモ】って私はなんとなく認識してたんですけど、ブランド化されてるわけじゃなかったんですね。天候や自然環境にも大きく影響されるので、品質にバラツキが出ちゃうのは仕方ないような気がするんですけど、やっぱりおいしいイモが食べたい!京大では、どんな研究をしようとしているんですか?」

河田さん:「全てのイモを一定の糖度で出荷できるよう、科学的に「おいしさ」の基準を設定してイモを選別したいと思っています。そこで登場するのがスモールデータ解析!これはいろんなイモのデータを基に、おいしさを高精度で測定できるシステムを構築しようというものなんです。」

情報学研究科の加納学教授のチームと、種子島の西表市などが協力し、5年後のブランド立ち上げを目指してプロジェクトが進んでいます!

実は河田さんには、壮大な夢が・・・

あなただけの最高焼きイモエクスペリエンスを

確かに、全てのイモを一定レベルのおいしさで提供することも大事です・・・が!

基準を満たさないイモとはもうサヨナラなのか!?人によって好みは違うんじゃないか!?

というギモンが・・・

あえて均一化の流れに逆らい、一人ひとりに合った焼きイモを作ること(いわば焼きイモのオーダーメイド)が、河田さんの野望なのです。

これが河田さんの思い描く構想図!バラツキを逆手にとり、自分だけの幸せ体験を提供しようというもの。


学内の「学際研究着想コンテスト」で発表する河田さん。彼の熱意があなたには伝わるでしょうか・・・熱すぎて手のひらでイモが焼ける勢い!(実は持っているのは生イモ)

河田さん:「これは僕の妄想なので、実現にはまだまだ遠いです・・・」

広報H:「エッあの熱さは一体どこへ!?急に弱気になってどうするんですか!焼きイモで幸福な未来を作りましょうよ!!」

安井さん:「そうですよ河田さん!今進んでいるところまで、私たちの研究をご紹介しましょう!」

イモのデータを集めよう!

この研究は、とにかくイモに関するデータがないと始まらない!
河田さんは、イモに光を当て内部の情報を読み取れる装置を使ってデータを集めています。


このブラックボックス(?)の中に・・・

マストアイテム「近赤外分光装置」が。近赤外線を当て、その反射光により対象物を破壊することなく表面や内部の様子を分析することができます。


真っ黒で分かりにくいんですが、穴が見えますか?白い円形のフタをひっくり返したようなものは、「リファレンス」。このリファレンスを・・・


こうして穴の上に置くと、下から反射光をキャッチ。これと比べて、イモの反射光にはどのような違いがあるか相対的に調べることができます。まずこんな波形が確認できました。


続いて生イモを置いてみます!


測定結果がコチラ。さっきの波形と全然違う!どの波長の光がどれだけ吸収されたかで、イモの水分量、デンプンや酵素の量などが分かります。


水を入れて体積を量る原始的なやり方も(笑)


イモをすり潰して混ぜた液体を入れると、糖度を測れるポケット糖度計。ただの水を入れてみたところ、糖度はゼロ。

広報H:「いろいろ方法がありますけど、これ一人でやるの大変じゃないですか!?」

河田さん:「そうですねぇ・・・蒸しイモは170個くらいサンプルを集められたんですけど、焼きイモはまだなんです。でも研究室の先輩が手伝ってくれるのでかなり助かってます!(;▽;)」


ありがたいことに、イモがまだまだどっさり待ち構えています。

他にも画像、比重などのデータをたくさん集めて、焼きイモにしたときの味や食感などの予測式を立てるのがひとまずの目標!


河田さんのスマホには、種子島の農家さんに協力してもらって撮影した画像データがたくさん入っていました。地道な努力が泣ける・・・

一方、どう焼けばおいしくなるのか?を研究しているのが、安井さん。農学部の実験室に行ってみました!

焼きイモレシピを作ろう!

こちらのマストアイテムは「ガスオーブン」!!さすがに火を起こして焼きイモは無理でした。


安納芋の断面って、こんな感じなんですね!農家さんいわく、オレンジ色のがおいしいんだとか。


実験ノートには記録がびっしり。温度は150℃、200℃、250℃、時間は60分、90分など、どんな条件だとおいしく焼けるのかを調査中。

安井さん:「イモの中にあるデンプンが糊のような状態になる(糊化する)と、酵素が作用してマルトース(糖)ができます。これが焼きイモが甘くなる仕組み!糊化には熱が必要なんですけど、この酵素は温度が高すぎると死んでしまうので、バランスが大事なんです。」

広報H:「へぇ~!どんな焼き方だとおいしくなるんでしょうか?」

安井さん:「今のところ、低い温度で長く焼くとおいしいという仮定のもとで実験を進めています!」

もちろん実験によって確かめていますが、実際に研究室のみんなで食べて確認もするそうですよ。イモ好きには嬉しいイモ漬け天国!!(※まじめに研究しています)


イモを切り刻み、「ホモジナイザー」ですり潰します。緩衝液(バッファー)と混ぜ合わせ、溶液を作ります。


それを基に糖量を調べる「高速液体クロマトグラフィー」。内部には管が通っています。

こちらが測定結果。山の部分が糖量を表しています。左の方が若干山が高いので、甘いってことですね!

こんな感じで、今はデータ集めにいそしんでいる河田さんと安井さん。違う学部ですが、研究室の先生どうしが意気投合してこの共同研究が決まったそう!
分野の垣根を越えたコラボレーションで、ぜひ人類を幸せにしていただきたい!!!応援していますよ!

活き活きと語る河田さん、焼きイモだけでなく実は●●のスペシャリスト・・・?続編あるかも!?乞うご期待!