2017.03.08
京都で体験できる神秘の森を探検!

大空を自由に飛びたい。誰しも一度は、空へのあこがれを抱いたことがあるのではないでしょうか。そんな夢を実現するのが、京大グライダー部。
グライダーとは、ハンググライダーやパラグライダーとは違って胴体があり、人が乗って操縦する「航空機」のひとつです。今回は、主将の鈴木優心さんと主務の高田春風さんに、グライダー部の活動や魅力についてお話を伺いました!

――そもそも、グライダーとはどのようなスポーツなのでしょうか。
鈴木さん「グライダーは動力を持たない航空機で、滑空機とも言います。どうやって飛ばすかというと、いわば凧揚げのように、機体とつながっているひもを曳航装置ですごい速さで引っ張るんです。すると、グライダーは数秒後に離陸して、1分くらいで高度500メートル(1500フィート)まで上がります。そこからひもを切り離して、あとは毎秒1メートルずつくらい降下していくのですが、上昇気流を捕まえられたら、さらに高度を上げることができます。
競技(大会)では、上昇気流をうまく使って高度を稼ぎながら、決められたコースをいかに速く周るか、いかに長く飛行できるかなどを競います」
――そうやって飛ぶのですか!ではグライダー部について教えてください。
鈴木さん「メンバーは現在30人。工学部の学生が4割程度いて、あとはいろいろですね。僕は総合人間学部ですし、他にも文学部や法学部、農学部、理学部と多岐に渡っています」
――なるほど。ちなみに、70年の歴史があるそうですが、どのように結成されたのですか?
鈴木さん「結成された当時の経緯はよく分からないのですが、あまり知られていないグライダー競技のクラブを作ろうという動きがいくつかの国立大学で起こり、その中で京大グライダー部も誕生したようです」
高田さん「実はグライダー部って、意外といろいろな大学にあるんですよ。全国で50校以上、京大の所属する東海関西地区でも20校近くはあると思います」
――ずばり、京大グライダー部は強いのですか?
鈴木さん「最近勢いがあって、東海関西地区ではトップ争いをしています。去年の全国大会では、個人が3位、団体でも5位でした」

――強豪校ですね! 京大の特徴はなんですか?
鈴木さん「70年、代々引き継いできた操縦の技術や部の運営のノウハウに安定感があるのが京大の特徴だと思います。この部室の本棚にも、先輩から残されてきたものすごい数の資料があるんですよ。グライダー関係の雑誌や法律関係の本のほか、自分たちで作ったファイルなどもあります」

――秘伝のファイルですね(笑)。鈴木さんと高田さんは、どのようなきっかけでグライダー部に入部されたんですか?
鈴木さん「僕は高校までずっと野球をやっていたのですが、大学でしかできないような『変』なことをやろうと思っていて。それでグライダー部の新歓に行ってみたらすごく面白かったんです。あまりメジャーではないところに惹かれましたし(笑)、先輩方があたたかく、グライダー部という人の集まりにも魅力を感じて入部しました」
高田さん「僕は単純に空を飛ぶことにあこがれていて。京大にはグライダー部以外にも鳥人間サークルや熱気球サークル、ハンググライダーサークルなど空を飛ぶクラブがあるのですが、見た目のかっこよさでグライダー部に決めました(笑)」

――グライダー部ではどのような活動をしているのですか?
鈴木さん「平日は週に1回全員が集まるミーティングと、経験の浅い1回生のメンバーに向けた勉強会を開いています。それと月に1、2回、週末に合宿をして、朝から暗くなるまでグライダーを飛ばします。長期休暇には1週間くらい合宿に行きますね」
――勉強会ではどんな勉強をするのでしょう?
高田さん「グライダーがどうやって飛ぶのかというメカニズムを学んだり、グライダーに乗るための自家用操縦士という国家資格取得に向けて勉強したりしています」
――そうなんですね。では、資格取得までの流れを教えてください。
鈴木さん「まずは練習許可証を取るところからはじまります。練習許可証は仮免のようなもので、身体検査を受けて基準を満たしていれば、国土交通大臣に申請して取得できます。練習許可証が取れたら、インストラクターと一緒に飛んだり、インストラクターの管理のもと一人で飛んだりして練習を重ねていきます。一人で飛べるようになるのは、早い人で1年弱くらいですね。そして、一人で飛ぶことを『ソロ飛行』と言うんですが、ソロで30発飛んだという実績ができると、ようやく自家用操縦士の試験が受けられるんです」

――練習許可証があれば、資格がなくても空を飛ぶことができるんですね。
高田さん「そうなんです。ただ、毎年3月にある全国大会には、自家用操縦士の資格がないと出られません。多くの部員は、4回生でこの大会に出場できるよう、実績を重ねながら練習していきます」
――なんと、大会への出場権利が関係しているのですか。
鈴木さん「はい。ちなみに僕は今年の5月に資格を取りました! 次の合宿で、ライセンシーとしてデビューします。これまではインストラクターの立ち会いがないと飛べなかったんですが、自家用操縦士になると自分の責任で、好きなように飛べるようになるんですよ」


――それは楽しみですね! ところで、京大には、グライダーが2機あると聞きました。
鈴木さん「はい。一つが赤い機体で二人乗りの『飛翔(ひしょう)』です。これは練習用に使っています。もう一つが一人乗りの青い『蒼月(そうげつ)』。蒼月はドイツ製の『ディスカス』というシリーズ名で知られる高性能な型式の機体です。そのほか、同じ東海関西地区の大学と合宿が重なったりすると、他大学の機体に乗ることもあります」
高田さん「蒼月は、操縦が難しく上級者向けの機体です。乗るにはライセンシーであることに加えて何十時間もの飛行経歴が必要なんです。上昇気流に乗りやすく早く周れる反面、スピンという危険な状態に陥りやすいところもあって、技量が安定している人でないと危ないんです」
鈴木さん「僕もまだ蒼月には乗れません……」
――なるほど、機体によって難易度が違うんですね。


――合宿では飛びまくるというお話でしたが、どのくらい飛ぶんでしょうか。
鈴木さん「理想は1日70発です。これは天候がよく、上昇気流がなくて機体がすぐに帰ってきた場合の数字です。とはいえ、上昇気流があって機体が長く空にいるというのもまた理想的な状態なので、飛ばす数が多ければいいというわけでもありません」

――うまく上昇気流を捕まえて一人でずっと飛んでいたら、他の部員に「早く交代しろ」って怒られませんか?(笑)
高田さん「そういうこともあります(笑)。とくに二人乗りの機体は練習用なので、滞空できても30分もすれば地上から『降りてきてください』って催促されることが多いです。でも滞空時間の長さはグライダーの目標の一つでもあるので、京大では一人乗りの機体の場合は技量の限り飛ぶことが認められています」

――これまで、最長でどのくらい飛んだのでしょうか?
鈴木さん「僕は40分くらいですね。ただそのときは二人乗りの機体を使ってソロで飛んでいたので、30分を超えたあたりから『早く降りてこい』って言われて、しかたなく降りました(笑)」
――それは残念(笑)。でも40分も空を飛んでいられるなんてうらやましいです! 二人にとって、グライダーの魅力ってなんでしょう。
鈴木さん「グライダーは上昇気流がある限り、理論上いつまでも飛べるし、どこまでも行ける。それがすごく魅力的でロマンを感じます。それと、邪魔するものがなくどこまでも続いていく、そんな空に魅了されています」
高田さん「普段の訓練で上昇気流がないときは、離陸してから5、6分で降りてくるのがほとんどなんですが、上昇気流があると体感でわかるんですね。エレベーターみたいに体が下に押し付けられる感覚です。それを感じた瞬間が一番わくわくします。上昇気流がないと、曳航装置から離陸した後の500メートルくらいが最高高度なのですが、上昇気流さえ捕まえれば、1000メートル、1500メートルと上がることも可能なんです」
――聞いているこちらもわくわくします。グライダー部に入って印象に残っていることを教えてください。
鈴木さん「ソロで40分飛んだとき、同じ空に部の先輩が二人飛んでいて。無線で連絡を取り合いながら、三人で誰もいない、果てしない空を独占した経験はすごく楽しかったですね!」
高田さん「僕は同期が初めてソロで飛んだときですね。合宿中はみんな忙しいのに時間を取って集まり、『頑張ったね』って集合写真を撮ったのは、グライダー部の絆が感じられるいい思い出です」

――壮大な空と仲間……最高ですね! 今後の目標はいかがでしょうか?
高田さん「部としては、秋にある東海関西地区の競技会で結果を出すことですね。これが全国への予選会になります」
鈴木さん「僕としては東海関西地区に照準を合わせて、トップまたはそれに近い順位で全国に行きたいと思っています」
――お二人にとって京大の魅力とは何でしょう?
鈴木さん「自由なところですね。高校のときは面白くない勉強もたくさんありましたが(笑)、大学ではたくさんある授業の中から興味のある授業を選んで勉強できます。部活も自由に活動ができる環境が魅力的です」
高田さん「いくらでも勉強ができる環境が整っているのがいいですね。また僕はグライダー部の主務として大学とやり取りすることが多く、活動資金が集まらず困っていたときは、寄付金集めのプロジェクトを紹介してもらったり、新歓のときにも手伝ってもらったりと、周りの人たちがサポートしてくれるところがいいな、と思います」
――二人の夢や目標についても教えてください。
鈴木さん「今、ようやくライセンスを取って、自分の判断で空を飛べる生活がはじまろうとしています。まずは蒼月に乗って全国を目指したい。そして卒業後も、空と関わりながら生きていきたいと思っています」
高田さん「僕もみんなと一緒に全国へ行きたいですね。グライダーは一人では飛べなくて、たとえば合宿や訓練を計画・運営する『ピスト』や、曳航装置を操作する『ウインチマン』など周りの人のサポートが必要です。みんなで協力して、全国大会につなげたいです」
――最後に、中高生や受験生、グライダー部に入りたいと思っている人へのメッセージをお願いします!
鈴木さん「大学でしかできないこと、大学だからこそ出会える価値観を、積極的に探してほしいと思います。京大は変な人や変なサークルが多いので(笑)、さまざまな価値観に出会えますよ!」
高田さん「京大は頑張れば頑張った分だけ楽しいところ。人生の中でこれだけガッツリ空を飛べるのは、おそらく大学だけなので、是非グライダーにも挑戦してみてください!」

グライダー部の活動がないときも、つい居心地がよくて部室に来てしまうという鈴木さんと高田さん。部員のみなさんとワンチームで全国をめざしてほしいと思います! 今後の活躍を期待しています!