医療を工学的なアプローチでサポート!-コロナ禍の逆境をバネに-

  • ザッツ (157)

こんにちは、「ザッツ・京大」編集部です!

 京都大学には『京都大学久能賞』という、科学・技術分野において独創的な夢を持つ、意欲ある女子学生を支援する賞があります(詳しくはコチラ)。

なんと、2020年度の受賞者は、コロナ禍の中で学生生活をスタートさせた当時1回生(現2回生)・工学部電気電子工学科の阿部玲華さん!

「医療を工学的なアプローチでサポートする」という夢に向けた活動で、史上初の1回生受賞という快挙を達成した阿部さん。高校1年次からロボット製作を始め、コロナ禍という状況においても意欲的に活動してきたことが今回の結果に結びつきました。

そのパワーの源は一体どこにあったのか? ニューノーマルな学生生活をポジティブに過ごすヒントをうかがうべく、阿部さんを直撃しました!

 

 

かわいいロボットとの出会いが、「つくってみたい」の原動力に!

――『京都大学久能賞』の受賞、おめでとうございました! 1回生での受賞に驚きましたが、「絶対にとってやろう!」ってお気持ちだったんですか?

「いえいえ、そんな! 受賞できるまで2回でも3回でも応募しようと考えていたので、まさか1回目で受賞できるとは思ってもみなくて、本当にびっくりしました。気持ちも沈みがちだったコロナ禍において、自分の原動力になればと応募したので、受賞を糧に頑張っていきたいと思っています」

――そもそも工学の道に進まれた原動力は、何だったんですか?

「中学3年生のとき、学校を休んで半年ほど入院しなきゃいけない時期があったんです。その間、ものすごく暇でYouTubeを見ていたら、村田製作所の動画がおすすめに出てきて。10体ほどのロボットがきれいに隊列を保ったままチアリーディングをする内容だったんですけど、それまで興味のなかったロボットがものすごくかわいく見えたんです。不安な入院生活のなか、その動画に励まされたので、私もこんなロボットをつくってみたい!と思ったのがきっかけです」

――「つくってみたい!」でつくれるものなんですか!?

「いえいえ! 実はそこから、すぐにつくり始めたわけでもなくて。高校1年生になったとき、地元の石川県でプログラミングの体験教室を探して行ってみたんですが、まわりが男性ばかりだったうえ、ロボットでサッカーをさせるという内容で、あんまり面白くなかったんですよね。すごく男性向けだなと感じて諦めていたんですが、夏頃に『ロボカップジュニア・ジャパンオープン2018』のオンステージリーグという、自律型ロボットにダンスや演技を披露させるコンテストを見つけて。レゴⓇブロックのプログラミングキットでも参加できるとのことだったので、何もわからない状態でしたが挑戦しようと決めたんです」

――初心者でも参加しやすそうな大会だったんですね。出来栄えはどうだったんですか?

「ロボットとしては小学生でもつくれるレベルでした (笑)。だけど大きなロボットを動かすチームが多かったなか、海の稀少生物をモチーフにしたかわいいロボットをつくったんです。そのパフォーマンスを通じて人々に持続可能な社会について訴えたい!という明確なテーマを立てて出場したので、『切り口が新しい』という評価をいただき、プレリミナリー部門で優勝することができました

――デビュー戦で優勝って! すごすぎる…。

「女子二人チームが珍しかったこともあったと思います。テーマに即して、動力には太陽光発電を使おうと、学校のリュックに取りつけたパネルで充電しながら登校し、そのリュックを担いでロボットたちと一緒にダンスを披露しました。高校生であることをアピールするため制服で出場したんですが、そのリボンもLEDで光るようにして。それで世界大会にまで行かせてもらえたので、もっと頑張りたいなと本を買って勉強し始め、次の大会に備えました」

ロボカップジュニアに出場するために、阿部さんが製作したクリオネ型ロボット

 

――いきなり世界へ…! 次の大会では、どんなロボットを?

「世界大会で社会貢献度の高いロボットを目の当たりにし、医療現場や災害現場などで人々を助けられるロボットをつくりたいと思うようになり、〈ほのりん〉という入院患者さんと一緒に体操するロボットをつくったんです。最初に憧れた、ポンポンを持ったチアリーディング型のロボットにして。

〈ほのりん〉のパフォーマンスで、『ロボカップジュニア・ジャパンオープン2019』のオンステージ・アドバンスドリーグでも1位をとることができました。それで、今度は医療従事者の方々にも実際に見ていただきたいと思い、『医美同源デザインコンペティション2019』にも応募することにしたんです」

――医療系のコンテストにですか?

「『入院生活を豊かにするデザイン』というテーマで募集されていたコンテストで、ロボットでの出場も高校生の出場も私が初めてだったそうです。そこで優秀賞をいただいたんですが、審査員長だった病院の先生から、『今後は患者だけでなく、医療従事者をサポートしていってほしい』と言われ、工学で医療をサポートしたいと考えるようになりました

――その思いが、『京都大学久能賞』につながったんですね!

ロボカップジュニア・ジャパンオープン2019での〈ほのりん〉のパフォーマンス

 

コロナ禍で生じた問題を意識してつくったロボットが評価された。

――京都大学の工学部を選ばれた決め手は何だったんでしょう?

「昔から京都という地が大好きだったんですよね。戦国武将にはまっていた頃(笑)、よく観光にも来ていて、いいところだなと。それで高校1年生のときに、オープンキャンパスに行ったんですよ。そのときは経済学部にも興味があったんですけど、女子高生に工学部を紹介する『テク女子』の企画に参加したことで、男性のイメージが強い工学分野も、京大なら女性に開かれた環境があるんだなと惹かれて。動画で見た村田製作所のロボットには、工学部の教授が関わっていたことも重なり、京大に入れば面白いものがつくれるのではと志望しました」

――だけど入学したときにはコロナ禍で…リモートでの大学生活はいかがでしたか。

「友だちと仲良くなるのに時間はかかりましたが、動画を見返せる授業が多かったので、ついていきやすかったのは良かったです。先生方やTAの先輩方に直接質問できるオフィスアワーがZoomで開かれていたのもありがたく、ものすごく利用していました。学内の研究室だったらわざわざ行っていなかったかもしれませんが、Zoomだったおかげで気軽に参加できた気がします」

――逆に距離が近くなった部分もあったんですね。

キャンパスライフに憧れていたのでショックだったんですが、落ち込むだけじゃ嫌なので、コロナ禍だからこそできることはないかと探すように。まずは授業が始まるゴールデンウィーク明けまでの時間で何かつくりたいと、〈Henry〉という、眠りをサポートするハリネズミ型のロボットをつくり始めました」

――時間があるから、よし、やろうって思えるのがすごいです(笑)。

「(笑)それまで受験勉強を頑張っていたのに、いきなり暇になり、ものすごく虚無だったので…。アイデアの発端は、コロナ禍で、医療従事者を中心に眠れない方が増えているというニュースを目にしたこと。私もなぜか眠りにくくなっていたので、医療従事者の方々をサポートする第一歩としてやってみようと決めました」

阿部さんが入学早々につくりはじめたハリネズミ型のロボット〈Henry〉

 

――〈Henry〉には、どんな機能があるんですか?

「眠りやすい音楽をかけつつ、一定時間、目を閉じたのを確認すると、音を消す仕組みです。私自身、眠りにくいときに音楽をかけるんですが、まだ眠っていないのに音が切れたり、途中でうるさくて起きてしまったりした経験があったので…。Apple Watchのようなウェアラブル端末で、眠ったかどうかを認識する方法もありますが、私も含め腕に何かをつけるのが嫌な人も多いと聞いたので、まばたき検知にしました。

それともう一つ、次々に変わっていく画像をぼんやり眺めていると眠りやすくなるという研究結果を見かけたので、まばたきをする度にLEDの色が変わる機能も組み込みました」

――盛りだくさんですね!

「もともとは眠りやすい音楽をかけるかわいいロボットをつくろうとしたんですが、いろいろリサーチしていくなかで機能を足していった感じです。実際、使ってみると、私自身、すごく眠りやすくなりました。

〈Henry〉にはラズベリーパイというコンピュータを組み込んだんですが、つくり終わった頃に、ラズベリーパイを使った作品のコンテスト(『みんなのラズパイコンテスト2020』)があることを知って。せっかくだからと応募したところ、ラズベリーパイ財団賞をいただけました

――応募ありきじゃなかったのに!? どういう点が評価されたんでしょう。

「ここでも『切り口が新しい』と言っていただけました。コロナ禍で生じた問題を意識したことや、まばたきで眠りを検知しようとしたのも新しい挑戦だと。とはいえ、まばたきをしなくなったからといって眠ったとは限らないので、本当は、身につけないもので確実に判断できるようにしたかったんですけどね。そのあたりは今後の課題ですが、途中段階でも評価していただけたのはうれしかったです!」

ラズベリーパイ財団賞受賞時の記念の一枚

〈Henry〉の機能を説明する動画。〈Henry〉も、動画も、とにかく完成度が高い!

 

きっかけさえあれば、工学分野に興味をもつ女性も多いはず!

――そのほか、どんな活動をされていたんですか?

「女子中高生にプログラミングの楽しさを知ってもらおうと、所属していた京都大学の機械研究会のメンバーに手伝ってもらう形で、夏休み頃に『KufeL』というチームをつくりました。そこから準備を進めて『サイエンスアゴラ2020』*に出展し、オンラインでプログラミング体験を提供する企画を実施しました。普段なら移動がネックになるところ、コロナ禍だったからこそ、いろんな企画や大会に参加できたのは良かったなと感じています」

*科学と社会の関係をより深めていくことを目的としたオープンフォーラム。その考えに賛同し、各年のテーマに沿った企画を実施できる参画者を募っている。

サイエンスアゴラ2020で使用したプログラミング説明動画の1シーン

 

――女子中高生をターゲットにされたのは、なぜですか?

「進路選択に迷っている女子中高生に、女性が少ない工学の分野も視野に入れてほしかったからです。『ロボカップジュニア』も、女子中高生の出場者が本当に少なかったんですが、実際に出場してみて、女性でも参加しやすいロボット製作の分野があるなと思ったんですよ。

ほかにも『KufeL』ではロボットを貸し出し、『ロボカップジュニア』のオンステージに出場する人を応援する活動をしています。対象は、グループ内に女子が含まれてること。実際、希望する子が見つかり、そのグループの初出場に向けて、Zoomでプログラミングを教えたり、ステージングのアドバイスを送ったりしています」

――Zoomの普及で遠方の人たちとも交流しやすくはなりましたよね。

「一方で難しいのは、SNSや掲示板で発信しても、興味がわきそうな人に届きづらいこと。やってみて初めてわかる面白さもあるので、できれば中学や高校に行ってプログラミング体験を提供したいんですが、コロナ禍だから叶わなくて…。『京都大学久能賞』でいただいた賞金をロボットやパソコンを準備するために使い、動けるようになったら進めていきたいなと考えています」

――ぜひ実現させてほしいです! そもそも女子に工学の魅力を伝えたいという思いは、どこから湧いてくるんですか?

日本って工学分野に関わっている女性が、海外と比べてものすごく少ないんですよね。アメリカの大学だと工学部の男女比は1:1ぐらいなのに…。そもそも女性が興味を持てない分野じゃないし、もったいない。もともとは私も、男性がつくるガンダムのようなイメージを抱いていたんですが、興味を持ち始めて以降、女性目線だからこそつくれるロボットがあるのではと思うようになったんです。きっかけさえあれば進む女性だって多いはず。その可能性を広げたいという思いで動いています」

他にも『Virtual Robo Cup Asia-Pacific 2020』のオンステージプレリミナリー(セカンダリー)部門に出場して2位を受賞。阿部さんにとっての大学1年次は、コロナに負けず積極的に活動した1年間だった

 

何にでも参加することで経験値が上がり、視野や道も広がる。

――京大工学部での1年間は、振り返ってみていかがでした?

いろんな人の意見を聞いて、自分の意見を発展させていくのが、大学の講義の醍醐味だと考えているんですが、それがすごく面白かったです。みんなの発想が面白く、そういう見方もあるんだなと思えることが多かったので、京大に来て良かったと感じています。

それに入学して思ったのは、工学はいろんな分野に結びつきやすいということ。医療や環境、商業分野などの問題を解決するのにも、工学というアプローチがあるなというのは、京大に入ってから思ったことです」

――今後、どう成長していきたいという目標はありますか?

「まずは工学の基礎を身につけ、今後は、人間がロボットをどう最適化して使えるかを考えていきたいです。コロナ禍の対策として、遠隔医療の充実も大切ですが、ほかにも注射や配膳システムの自動化など、より簡単にできることもありますからね。すぐに実現できることも考えていきたいし、医療だけじゃなくいろんな分野に目を向けて、その時々の社会の需要に合ったものを提案していきたいと思っています」

――期待しています! 最後に、コロナ禍に負けず頑張った先輩として、京大の新1回生や、これから京大をめざす人たちにメッセージをお願いします。

『コロナ禍だからやる気が出ない』と捉えるんじゃなく、自分の原動力を上げるために、少しでも気になったことには挑戦してみてほしいです。最初は難しそうで嫌だなと思っても、挑戦してみると楽しくなることが多いですし、参加したことで得られるもののほうが苦労よりもはるかに大きい。私自身、ロボットの知識がほとんどないままレベルの高い大会に参加し 、世界大会まで行けた経験から、とりあえずやってみることが大事だと思えるようになりました」

――とりあえずやってみれば、たくさんのことが得られると実感されているわけですね。

私が大切にしている言葉に、『チャンスの神様には前髪しかない』というものがあるんですよ。チャンスの神様には後ろ髪がないので、あとからやりたいと思っても手遅れになる。やらないと後悔することが多いので、ちょっとでもやりたいと思ったら、とりあえずやってみたほうがいいと断言できます。何にでも参加することで自分の経験値が上がり、ものの見方や道も広がるので、ぜひいろんなことにチャレンジしてみてください!」

コロナに負けない積極的な活動に元気をもらいました。阿部さん、どうもありがとうございました!

 

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