Institute

No.173

update.2025.11.26

知の探求! 学びの冒険「京大ウィークス2025」へ

この記事をシェアする

本学は、「京都大学」という名のとおり京都を拠点としていますが、実は北海道から九州まで、全国各地に教育研究施設を展開しているんです。そうした施設を毎年夏〜秋にかけて一般公開するイベント「京大ウィークス」をご存じですか? 今回は、数ある施設の中から「防災研究所 宮崎観測所(宮崎県)」、「理学研究科附属天文台 飛騨天文台(岐阜県)」、「犬山キャンパス ヒト行動進化研究センター(愛知県)」の3施設をメインにご紹介。現地のスタッフが工夫を凝らした講演・見学会の様子をレポートします!

📍【宮崎県】宮崎観測所(防災研究所)

子どもも大人も「地震のメカニズム」を楽しく学べる!

最初に紹介するのは、南国・宮崎県にある宮崎観測所です。今回は、2024年3月に学術交流に関する協定を締結した宮崎公立大学との初のコラボ企画。午前中に宮崎公立大学で講話を聞き、午後から宮崎観測所に移動します!

宮崎公立大学は宮崎市内中心部からすぐ近く。正門正面にある、南国風の花や植物が植えられた中庭が目を惹きます。

まず話してくれたのは、宮崎公立大学の山下裕亮准教授。山下先生は昨年まで、宮崎観測所に所属されていました。

講話のテーマは、地元の日向灘で頻発する地震について。そのメカニズムをはじめ、備え方や地震が発生したときの対応など、わかりやすく説明してくれました。山下先生が力強く「地震は対策していれば、乗り越えられないものではありません!」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

日向灘では昨年もM7の地震が起こっており、今後も繰り返し発生が予想されるとのこと。地域の方々の関心も高いようです。

続いて、防災研究所の松島信一教授の講話。松島先生は宮崎平野の地下構造の特徴と揺れや被害の想定などを解説した上で、南海トラフ地震の周期やメカニズムについて話してくれました。

松島先生によると、宮崎平野の揺れに影響を与える地下構造については今後更なる調査が必要とのこと。また、地震の予測や地中深くのメカニズムは「未だにわからないことが多いのも研究の醍醐味」という山下先生の言葉もあり、探求の奥深さが感じられました。

講話の最後には、ほかの研究者の方々も登壇しての質疑応答とディスカッションが行われました。質疑応答は事前に集めた質問のほか、会場でも受けるスタイル。ざっくばらんに質問が飛び交っていました。

手を挙げるかわりに色紙を使って質疑応答を行うなど、参加者が楽しめる工夫がみられました!

山の中の観測所へ! ひんやり涼しい坑道(こうどう)を探検

午後からは、宮崎観測所に移動。市街地にある宮崎公立大学に対して、宮崎観測所は市内中心部から車で30分以上かかる山裾にあります。未舗装路を抜けた先に、宮崎観測所を発見!

苔の生えたコンクリートとヤシの木の入り口が現れ、まるで映画のセットのよう!

宮崎観測所が設立されたのは1974年。建物の裏山には、総延長約300m弱の観測坑道(横穴)がつながっています。今回のイベントでは、この坑道を見学しました。

とても暑い日でしたが、坑道内の気温は常時18℃前後。薄暗い空間を歩いていると冒険心がくすぐられます!

坑道内にはいくつもの観測機器が設置されており、地震動や地面の伸縮などを24時間観測しているとのこと。60年代にはこの伸縮データから、地震の予知ができると期待されていたそうです。今はその方法での予知は不可能とされているそうですが、基礎研究などに利用されるとともに政府機関などにデータを提供するため、今もデータ収集を続けているのだとか。

縦・横・上下の三方向の揺れを測る計測機器。計測機のそばでジャンプして地面の揺れを計測します!

地震と防災について学べる、練り上げられた企画

坑道見学の後は、防災研究所開発のスマホアプリ「逃げトレ」の解説。

スマートフォン上で、南海トラフ地震の津波浸水シミュレーションと、GPSで得られる自分の位置を地図上に一緒に表示し、襲来してくる津波と自分の位置を確認しながら避難訓練ができるアプリです。高台への避難経路を、実際の地形で事前に練習できるとのこと。津波到来時間や浸水深も確認することができます。

逃げトレとは…
本学教員らが開発した、南海トラフ地震(南海トラフ沿いを震源とする巨大地震)を想定した個人の津波避難トレーニングが出来るアプリ。
過去に、「ザッツ・京大」にて関連記事を公開しています。詳細は、こちらから!

他にも、プレートや火山の位置、過去の大地震などが分かる「ペーパークラフト地球儀」の制作にも挑戦しました。

地震と防災について学べる、盛りだくさんの1日

専門的な内容でありながら、小さなお子さんでも理解できて楽しめるように工夫が凝らされたイベントでした。地震のメカニズムを解明する研究ももちろん重要ですが、このように開かれた活動も、地域における防災意識の向上に貢献するのだと改めて実感しました。

📍【岐阜県】飛騨天文台(理学研究科附属天文台

空気の澄んだ中部山岳地帯へ。天文台で昼間の天体観測

次に紹介するのは、岐阜県の北東部(高山市)にある飛騨天文台の特別公開。昼の部と夜の部が開催され、昼の部に参加しました。

飛騨天文台は中部山岳地帯の山上にあるため、JR高山駅からシャトルバスに乗って向かいます。道中には、車1台通るのがやっとの険しい場所も。ヒヤヒヤしているうちに、天文台のシンボルともいえるドームが見えてきました

どんな体験ができるのだろうかと、ワクワク感が高まります!

到着すると、山上の清々しい空気と、イベントを担当する教職員・学生の皆さんの笑顔が迎えてくれました。

昼の部の参加者は43名。3班にわかれて、理学研究科附属天文台長の横山央明教授の講話を聞き、敷地内にある3つの望遠鏡施設を見て回ります。

この地に天文台を作ったのは、都会から離れていて街明かりの影響を受けにくく、また、空気が澄んでいるからと横山先生が話してくれました。ここではドームレス太陽望遠鏡(DST)太陽磁場活動望遠鏡(SMART)が研究で使われているそうです。

子どもたちが真剣に耳を傾けているのがとても印象的でした! ちなみに、理学研究科附属天文台には、飛騨天文台だけでなく、花山天文台(京都・山科)や岡山天文台(岡山・浅口)もあるんです。

まるでSF映画!? 真昼の恒星に大興奮「65cm屈折望遠鏡施設」/

待ちに待った施設見学! 私たちの班が最初に向かったのは、65cm屈折望遠鏡施設です。施設までの廊下を通り、ドアを開けて中に入ると、「望遠鏡」という言葉のイメージを覆されるような景色が……!

「スリット」と呼ばれるドームの隙間から、直径65cmのレンズが空に向けられています。

マンホールの蓋と同じくらいの直径65cmのレンズがはめ込まれた望遠鏡は、一般的なものとは桁違いの大きさ。屈折望遠鏡としては、東アジアでもっとも大きいそうですが、世界的には小さいほうなのだとか……。

望遠鏡ののぞき穴がかなり高い位置にあるな、と見上げていたところ、なんと、床が少しずつ上昇してのぞき穴まで近づいてきました。SF映画のセットのようで、参加者のテンションも急上昇!

スケールの大きさに圧倒! パシャパシャと写真を撮る皆さん。
望遠鏡をのぞける高さに位置を微調整!

さらにこの日は晴天に恵まれ、雲がちょうど切れていたことから、恒星を観測することができました。まさに幸運! 私たちが見たのは、うしかい座アルクトゥールス。昼間の星見たさに、望遠鏡の前には、今か今かと心待ちにする参加者たちの列が(笑)。

しかも、スマホで星を撮影できるとあって、これまた大興奮! 参加者にとって貴重な経験となったのではないでしょうか。

一生懸命スマホで撮影する参加者。
赤矢印で指している光がアルクトゥールスです!

研究の主力「太陽磁場活動望遠鏡(SMART)」へ/

続いて向かったのは、研究の柱のひとつとなっている太陽磁場活動望遠鏡(SMART)施設。望遠鏡は、高さ16mのタワー上に設置されています。4台の望遠鏡が組み合わさった形で、現在はそのうち3台(T1、T3、T4)が稼働しているのだとか。

案内された部屋のモニターには、その3台で撮影した映像がリアルタイムで映し出されていました。
T1は太陽の全体像、T3とT4は黒点だけを拡大して撮影しているのだとか。

SMARTで観測しているのは、太陽の爆発現象の一種である「太陽フレア」や、太陽表面の上で磁場に支えられて浮かぶガスの塊である「プロミネンス」など。こうした活動によってガス噴射が起こったり、強いX線が放出されたりすると、人工衛星や宇宙ステーション、宇宙飛行士の方々にも影響が及ぼされるそうです。

私たちの現在の生活には人工衛星からの情報が不可欠なので、太陽の活動を観測し、影響を予測する「宇宙天気予報」が注目されているとのことでした。

SMARTの見学後、研究棟の屋上に寄り道。澄んだ空気と周囲に広がる山々の景色を堪能しました!

黒点をピンポイントで観測するドームレス太陽望遠鏡(DST)施設

本日最後となる、ドームレス太陽望遠鏡(DST)施設に向かいます。

地面から熱い空気が上がってくると陽炎が発生して観測に支障をきたすため、DSTは25mという高所に設置されています。

SMARTは太陽の全体を観測するのに対して、DSTは太陽の一部をピンポイントで観測するもの。天文台といえばドームのイメージですが、ドームがあると熱がこもってしまうため、その名のとおりドームレスとなっており、壁面には冷却装置が取り付けられているのだそう。

DSTでも、黒点をリアルタイムで見せてもらいました。

円内の左側にある黒い点が黒点。小さく見えますが、これが地球よりも大きいというから驚き。

またDSTでは、黒点の周りの光を波長ごとに分けて観測する「分光観測」も行っているのだとか。

波長が違うと、光の色が変わります。波長に沿って色を並べたものを「スペクトル」といいますが、このスペクトル上に黒い線が現れていました。これは「吸収線」というもので、分析するとどんな原子がどれだけあるのかがわかるのだとか。

太陽の表面上でどのようにプラズマが運動しているのか、磁場の強さがどのくらい強いのかもわかると説明してくれました。

星空だけでない天体観測。飛騨天文台で感じたあたたかさ

天体観測というと星空のイメージがありましたが、太陽の観測がいかに重要かということがわかりました。大規模な施設は驚きに満ち、世界的に必要とされる宇宙天気予報につながる観測・研究が行われるということにも興奮します。スタッフの皆さんは、一般の方々に対して、天体観測の紹介を通じて研究の難しい話をできるだけ噛み砕いて解説してくださいました。この研究の意義をわかりやすく発信しようとするスタッフの皆さんの姿勢に感銘を受けました。

📍【愛知県】ヒト行動進化研究センター(犬山キャンパス)

\1,200頭のサル類が暮らす犬山キャンパスへ

最後に、愛知県の犬山キャンパスにあるヒト行動進化研究センターを紹介します。

ヒト行動進化研究センターでは、その名の通りヒトを含めた霊長類に関する研究が行われています。ここではなんと、6種・1,200頭ものサルが暮らしているのだそう。ヒト行動進化研究センター長の中村克樹教授からの挨拶の後、待ちに待った施設内の見学がスタート!

中村先生による挨拶

早速、チンパンジー認知科学研究の「チンパンジースカイラボ」を案内してくれました。ヒト行動進化研究センターの足立幾磨准教授によると、野生のチンパンジーは平地ではなく、一般的に高さのある場所で生活するので、自然な環境をできる限り再現するため、天井を高くしているそうです

チンパンジースカイラボにて(1)
チンパンジースカイラボにて(2)

「チンパンジースカイラボ」では、チンパンジーと対面することができました!

名前を呼ぶと一直線に走ってきたり、足の裏を見せてくれたりするなどサービス精神が旺盛なチンパンジーです!

\骨格の違いから、ヒトの進化の過程を追求する

骨格標本室では、ヒト行動進化研究センターの平﨑鋭矢教授が、骨格標本を用いながらシカやライオンといった動物と霊長類との違いを説明してくれました。

ヒト行動進化研究センターはたくさんのサル類が飼育されているだけでなく、骨格標本やDNA情報といった資料の所蔵数も世界最大規模なんだそうです!

手前から3つ目がサルの頭蓋骨。霊長類はほかの動物に比べて、眼球が収まる頭蓋骨のソケットがしっかり窪んでいるとのこと。

骨格標本室の見学後には、引き続き平﨑先生による講演会が行われました。

講演テーマは「足の進化と歩行」。なぜヒトの足が今の形になったのか、サルの歩き方との比較や、骨格の違い、そして進化の歴史について学びます。

平﨑先生によると、440万年前にいた原始的な人類の一種であるアルティピテクス・ラシダスは、足の形が非常にチンパンジーに近かったそう。その後、約330万年前のアウストラロピテクスから180万年前のホモハピリスまでの間に、ヒトが長距離移動をしたり、狩りで走ったりするようになり、二足歩行が重要になったことで、今のような足の形になったんだとか。
「その時代の人間たちが歩き続けようとしたから進化した」という先生の言葉が印象的でした!

チンパンジーとは全然違うアカゲザルの暮らし

最後のプログラムは、「展示室」、「ニホンザルの放飼場(ほうしじょう)」、「アカゲザルの放飼場」、「研究者との懇談会」の4つから希望するものを2つ選ぶことができました。

その中から、展示室とアカゲザルの放飼場の見学を希望することに。展示室では、化石人類の骨格レプリカを見ることができました。

案内してくれた大学院生の方が、とても生き生きと楽しそうにお話しされていて、研究への思い入れを感じます。
1970年代に行われたフィールド調査の資料。

続いて、アカゲザルの放飼場へ。

ここにいるアカゲザルはみんな、センター内で生まれ育ったとのこと。野生動物の生態系に配慮しているということもありますが、一定の環境下で育った集団のほうがDNAの研究も行いやすいそうです。

広く開けた放飼場には、たくさんのアカゲザルが暮らしていました!

霊長類と研究員さんとの信頼関係にほっこり

約3時間のプログラムでしたが、盛りだくさんの内容で非常に充実していました。先生方がわかりやすく噛み砕いて説明してくれたので、参加者の方は理解しやすかったのではないでしょうか。

全体を通して特に印象に残ったのは、単に研究対象として飼育しているのではなく、霊長類と本センターの教職員との間に築かれた家族のような信頼関係のもと、霊長類にとって最適な生活環境が再現されていること。このような環境が整備されてこそ、多様なアプローチから私たちの行動の進化的由来を知るための研究が進められるのだと実感しました。

他にも、ユニークで多様な教育研究施設がたくさん!

📍【和歌山県】瀬戸臨海実験所(フィールド科学教育研究センター

📍【京都府】附属農場(農学研究科)

📍【滋賀県】信楽MU観測所(生存圏研究所)

📍【大阪府】複合原子力科学研究所

2025年の京大ウィークスのレポート、いかがだったでしょうか?

京大ウィークスでは、研究者の話を直接聞いたり、知らない世界に触れることができたりと、貴重な体験ができます。気になった施設があった方は、ぜひ来年以降のイベントをチェックしてみてくださいね!

※京大ウィークス2025の詳細は、京都大学公式ホームページ「京大ウィークス2025」を是非ご覧ください。