変化こそすべて!トップランナーが語る「挑戦」の極意。

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こんにちは!

『ザッツ・京大』編集部です。

気がつけば、世の中はクリスマス。あっという間に今年も残りわずかとなりました。

みなさんの2020年はどんな年だったでしょうか?

きっと多くの方が、勉強や仕事など日々の中で、さまざまな「変化」に直面する一年だったのではないでしょうか。

「変化」は、初めてのこと、慣れないことなど、ともすれば気後れしてしまうこともあります。でも、そこに踏み出すことで、また新しいものに出会えるはず。

編集部はそんなことを思いながら、2020年末、一人の卒業生を訪ねました。

それが、変化や挑戦を楽しみ、動き続ける卒業生の西村大介さんです。

西村さんは、京都大学教育学部出身。在学中はアメリカンフットボール部「ギャングスターズ」に在籍し、学生日本一決定戦「甲子園ボウル」での連覇だけでなく、すべての選手にとって夢の舞台である日本一決定戦「ライスボウル」で優勝を経験。その後はキャプテンを務め強豪チームを牽引しました。卒業後は保険会社に就職し社会人でもプレーを続け、2003年には日本代表に選出。ドイツで開催されたワールドカップでもなんと優勝!!

そして、2006年8月から2017年12月にかけて京大アメフト部のコーチ、監督を務めました(当時の「西村監督」が語った熱いメッセージはこちら!)。

その後、活躍の場をプロバスケットボール「Bリーグ」に移して、株式会社滋賀レイクスターズの代表取締役社長(兼GM)に就任。2020年11月からは、また新たに、長崎県初のプロバスケットボールチームである「長崎ヴェルカ」の経営に参加しています。

……どうですか、この動き。変化どころかもはや「激動」です。

今回は、新たな道を切り拓き続ける西村さんに、「挑戦」の極意についてうかがいました!

「日本一になりたい」という思いに理由はいらない。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございます。さっそくですが、西村さんはなぜ京都大学へ、そして「ギャングスターズ」に入ったのでしょうか?

「兄貴が京大でアメフトをやっていたんですけど、これが、弟の自分が見てもわかるくらい、明らかに体つきや人間性が立派に成長して『すごいな』と感じたんです。試合を見にいけば活躍していて。当時のアメフトは大人気だったので4万人のスタンドが揺れるんですよ。そんな兄貴の姿を見て、京大に行ってアメフトをやろうと決めました」

取材場所である会議室で、当時の様子を語る西村さん。

――なんと、お兄さんもギャングスターズの選手だったとは! それにしても未経験からアメフトというハードなスポーツに挑戦するのは大変でしたか?

「そうでもなかったんですよね。相手を倒すんだ、という意気込みで体をぶつけ合いながらも、心のどこかで試合状況を冷静に分析する点がすごく自分に合っていたと思います。ただ、日本一を目指していたので、練習量は並大抵じゃありません。新入部員のうち京大は経験者が1割程度。一方で強豪私立大学は9割が経験者ですから。そんなチームに勝たなければならないとなると、それは大変です。本当に毎日が限界を突破するような日々でした(笑)

――厳しい練習の日々を経て、1995年12月の甲子園ボウルで優勝、同シーズンの96年1月に開催された「ライスボウル」では社会人代表チームを破りまさに「日本一」に輝きました。さらに、96年の甲子園ボウルも連覇しています。ずばり、目標を達成できた秘訣は何ですか?

本気でやる、ということですね。当時の監督で恩師の水野彌一さんに叩き込まれたことが大きく二つあって。一つ目が『当事者意識』です。1回生であろうがレギュラーでなかろうが関係ありません。よく言われたのは、『社会人になった時に飲み屋で上司や会社の愚痴を言うような人間にだけにはなるな』という言葉。駄目だと思うなら自分が変えたらいい。どんな立場であっても当事者として物事に携われ、と教えられました」

(上)社会人代表の松下電工を破り「日本一」になった第49回ライスボウル。西村さんは1回生ながら出場して勝利に貢献しました。(下)多くの観客の見守る中、連覇を成し遂げた第51回甲子園ボウル。

――……むむ、ドキリとする言葉ですね。

そして、二つ目が『変化こそすべて』です。優勝したからといって、今年も同じやり方で戦略を組むのではなく、去年とは別のアプローチ――常に変化をもって臨む。この二つがギャングスターズのスピリットとしてあるので、日本一という高い目標を本気で目指せました」

京都大学アメリカンフットボール部「ギャングスターズ」の当時のパンフレットより。現在の爽やかなスマイルが影を潜めているのは、日本一を目指し「1年間笑うことを禁じた」からだそうです(!)。なんという覚悟と行動……。

――「変化こそすべて」ですか。立ち止まらず、変化するものこそが前に進めると。とはいえ、なぜそれほどまで「日本一」にこだわれたのですか?

自分の場合、それは単純に『日本一になったら、おもろそう』だからです(笑)。勝ちたい、日本一になりたいと思う気持ち、そこだけは理由なんてなくてもいいんです。学生に日本一になってみない?と聞いて、なりたくないですって返事がきたことは一度もありません。根拠のない自信をもっている人が多いからこそ、チーム全体としても日本一にこだわり続けることができたのかもしれません

今、生きているか? なぜ、生きるのか?「夢中」が教えてくれたこと。

――保険会社に就職されてからも社会人チームに所属し、プレーを続けられましたが、学生時代と変化はありましたか。

「ありましたねぇ、めっちゃ悩みました(笑)。なぜ生きるのかという哲学的な悩みです。京大にいる時は、なんで生きてるの?って聞かれたら『アメフトで日本一になるために生きてます』って、なんのためらいもなく断言できました。でも社会人になって、ふと同じ問いを投げかけられたらと考えた時、自分の中に解がないことに気づいたんです。生きている実感、熱量が学生時代と全然違ったんですよね」

社会人時代にも、ワールドカップで優勝を経験するなど、トップアスリートとして活躍していた西村さん。日本代表になって、国を代表する重みを感じたそうです。(左が西村さん)

――なるほど。日本代表を経験しながらも、大学時代には出会うことのなかった悩みにぶつかったのですね。そこはどう越えて行ったのですか?

「人との出会いが大きかったですね。営業に行くたびに阪神タイガースの話をしてくれる取引先のおじさん。普段は上品なのに浦和レッズに関してはとたんに熱くなる同僚の女性。その二人との出会いが、私の生きがいを紐解くきっかけになりました。お二人とも人間的に素晴らしく、仕事も含めて日々を生き生きと楽しんでいるんですよね。その人たちと話しているうちに、『夢中になること』が幸せの一つの形なんじゃないかなと思うようになりました

――「夢中」な人たちとの出会いがターニングポイントになったのですね。

夢中な人で不幸な人ってあんまりいないと思うんです。そこで私は、スポーツを通じて人が夢中になる環境を世の中に提供することを人生のミッションにしようと思ったんです。そう決めた時に、なぜ生きているのかという問いに対する一つの答えを見つけた気がしてスッキリしたんですよ」

リスクを取るのに必要なのは、自信ではなく勇気。

――その後、ギャングスターズに戻ってコーチと監督を歴任したわけですが、指導者から見て、京大生の強みはどういったところにあると思いますか?

まずは、『自己効力感』が高いところです。これは心理学の専門用語で、いうなれば根拠のない自信です。『何かわからんけれど、できるやろう!』となんでもチャレンジしようとする点ですね。京大生はこれがとても高い(笑)」

――そうなんですね(笑)。そんな京大生にむけてどんな言葉をかけていたのですか?

「入ってきた新入生によく言っていたのは、『かっこいい漢(おとこ)になろう』 です。この『おとこ』というのは立派な人物という意味です。最初にこういう人間になりたいというロールモデルを見つけてもらい、それを目指すように促します。そうして、その学生が弱音や愚痴を言ったときに、『今、お前はかっこいいか?』と問いかけました。すると、みんなしっかりと自分を省みるのです」

選手を送り出す、監督時代の西村さん。試合や練習中のコーチングだけでなく、「人」としての育成にも力を注ぎました。当時は、夏休みに学生を1か月間、アメリカに武者修行させるなど、独自のやり方で学生の成長を促したそうです。

――目指すべき人物像と自分自身に正面から向き合うのですね。ところで、学生を指導するという意味で、西村さん自身の監督としてのゴールはなんだったんですか?

社会をリードする人材の輩出がチームの理念でした。ある意味『エリートを育てる』ということです。『エリート』は日本だとなんだかネガティブな意味も出るので使いづらい言葉になってしまってますが(笑)。ただ、もともと『エリート』は一番しんどいときにリスクを取る人のことを指します。最もリスクを取って、社会や時代をリードする、つまり誰もやったことのないことをやる、それが挑戦する人なんですよね

――「エリート」にはそんな意味があったんですね! 知らなかったです。

「はい(笑)。そして、挑戦には必ず失敗が内包されています。なぜなら失敗のない挑戦はその時点で挑戦ではありません。学生に期待するのは、30人中29人は失敗してしまうようなチャレンジングな生き方。そのうち1人がスティーブ・ジョブズになったら、その他の29人を雇ってあげたらいいんです(笑)。それぐらい思いっきり生きようや!って言いたいですね」

――なるほど! ただ、リスクを取ることに不安はつきものですよね。どうすれば決心できるのでしょうか。

それは、勇気なんですよ。よく『自信がないです』っていう人がいますが、それは『自信』がないんじゃなくて、『勇気』がないからなんです。京大出身の学者・登山家である西堀栄三郎 氏が『勇気は自信に先行し、経験が勇気を作る』という名言を残しています。これは私の座右の銘です。勇気をもつには経験しかないんですよね。自分自身で取り組む経験を何度もして、失敗体験をしっかり積んでおくことが大事だと思います」

種目や立場が変わっても、プロという舞台で続く挑戦の日々。

――ギャングスターズの監督を経て、滋賀レイクスターズの代表取締役社長(兼GM)、そして今度は2020年11月に誕生したばかりの長崎ヴェルカでプロバスケットボールチームの経営に参加されます。挑戦の連続ですが不安はないのですか?

「教え子たちに挑戦しろ、といっているのに、自分が挑まないなんてことはできません(笑)。おもしろそうなことは挑戦する。変化が多い方を選んでいくことが大切なんです

――ちなみに新天地「長崎ヴェルカ」では、何をするのですか?

「私の役割は、もちろんですが、チームを強く魅力的なものにすること。そして、その先にある3つの目標を達成することです。その目標の1つ目が、長崎で真の地域活性化を達成すること。2つ目がビジネスとしてスポーツチームの運営を成功させ、日本のスポーツ界に本気の革新をもたらすこと。そして、3つ目がナガサキという町だからこそ発信できる、世界に向けた平和のメッセージの発信です

「スポーツには言語や論理を越えた発信力があるんです!」と熱く語る西村さんの言葉は、さすがに説得力があります。

――チームとしての成功だけでなく、社会的な課題やスポーツ界、そして世界平和に結びつく大きなビジョンと挑戦なんですね!選手から監督そして経営者と、トップランナーとしてさまざまな経験をされてきたと思うのですが、スポーツに対する考え方は変わりましたか?

経営者としてプロスポーツに携わる上で最も大切にしているのは、ファンの方々に喜んでいただくことです。ギャングスターズにいるときは、ある意味で、誰も見なくても日本一になれればよかった。だから、そこは全然違います」

――なるほど。西村さんにとって、「プロ」の定義とはなんでしょうか?

それは、すごく平たく表現すると、『お金をいただくこと』ですね。価値を創り、提供できる人。スポーツであれば、近くで見たいと言って対価を払う人がいる。だからこそ、それに見合うプレーをしないといけない。重要なのは普通の人ができないようなプレーをすること。あとは、『かっこいい』こと。それはプレーだけでなく、ファンサービスや行動、生き方、個々のスタイルはあると思いますが、さまざまな面で『かっこよく』あるべきです

――だからこそ「プロ」は人を魅了することができるわけですね。それでは最後にメッセージをお願いします!

「そうですね、特に京大生や京大を目指す学生たちに伝えたいのは、京大には本当に『自由』があるということ。それを生かして、人がやらないことを死ぬほど突き詰めてほしいです。一番しんどいときにリスクを取る、挑戦者としての『エリート』であってほしい。誰が何と言おうと、おもろいねん!と思ったらやり切ってしまうのが京大生のいいところです。まずは夢中になれるものを見つけてください!」

「当事者意識」や「変化こそすべて」といったギャングスターズ時代に培った信念のもと、挑戦者でありつづける姿はまさに「かっこいい漢」、プロフェッショナルそのものでした。

西村さん、ありがとうございました!

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