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No.48

update.2020.04.09

特別リレー企画!おもろい先輩に聞いてみた ~おもろい大学にようこそ!~ #01

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File#01:好きなことを好きなだけ。オランダの発酵食品と腸内細菌を調べる3週間

みなさんこんにちは。
『ザッツ・京大』編集部です。

4月がはじまり、桜の色も日々、移り変わっています。
今月は、その「はじまりの季節」ということで、特別企画!

4週連続で、京都大学の「おもろチャレンジ」に挑戦した「おもろい」先輩方を紹介します!

「おもろチャレンジ」は、京都大学独自の海外渡航支援制度。
学生が自分で渡航先や活動内容の計画を立てるという、珍しいシステムです。
これまで多くの先輩が、自らの興味を追求すべく海外へ飛び出してきました。
詳しくはコチラ

京都大学には、一体どんな「おもろい」学生がいるのでしょうか?
おもろチャレンジャーの先輩方に、学生生活について聞かせてもらいましょう。
新入生諸君はもちろん、京都大学をめざす受験生のみなさんもぜひご覧ください!

はじまりは、微生物と栄養学への興味

最初にご紹介するおもろチャレンジャーは、農学部4回生の片所杏野さん。
発酵食品に興味があるという片所さんは、2回生の9月にオランダへ渡航し、3週間ホームステイをして現地の食文化などを調査しました。


【今回の取材場所はココ!:農学部図書室】

片所さんがよく利用するという農学部図書室。専門書が揃っているのはもちろん、静かで落ち着いた雰囲気なので勉強にも集中できそう。


――おもろチャレンジについてうかがう前に、まずは京都大学に入学しようと思った理由から教えてください。

「もともと農学部に行きたいと思っていたんです。理由は2つあって、ひとつは微生物への興味。小学生のときから、肉眼では見えない世界があって、そこにいろんな形や種類の生き物がいるということにおもしろさを感じていました。
もうひとつは、栄養科学への興味です。高校生のとき、ストレスで体重が激減してしまったことがあったのをきっかけに、栄養について考えるようになりました。
それで微生物と栄養科学の両方を研究できる学問を探していたところ、京都大学の農学部に発酵や醸造についての研究室があるということを知って。入学をめざすことにしました」

――なるほど。「研究したいこと」が先にあって、そこから大学を選んだんですね。おもろチャレンジについて知ったきっかけは?

「入学当初からもともと海外に行ってみたいという気持ちが強くて、『ILAS(アイラス)セミナー(海外)』という少人数の授業を受講していたんです。タイのバンコクへ2週間の研修に行くというプログラムに参加して、そこで一緒に受講していた先輩がおもろチャレンジのことを教えてくれました。
留学は費用と語学のハードルが高くて半ばあきらめていたのですが、おもろチャレンジなら自分の好きな分野で挑戦できるというところにすごく魅力を感じて。すぐに応募しました」

――そうなんですね。渡航先はどうしてオランダに?

「正直言ってどこでもよかったんですけど(笑)。渡航先ではホームステイをして、現地の人と同じ生活を送ることにより、自分の身体がどのように変化するのかを調べようと考えていました。それで、ホストファミリーを探すためにいろんな友達に聞いて回ったのですが、そのなかに帰国子女の子がいて。オランダで受け入れてくれる家族を紹介してくれたんです」

「デブ菌」「痩せ菌」とは? 腸内細菌からわかった身体の変化

――地域にこだわりがあったわけではなかったんですね!オランダには3週間滞在したんですよね。どのような生活をしていたんですか?

「ホストファミリーに私と同い年のマリケという女の子がいて、ほとんどいつも彼女と一緒に過ごしていました。食事も、渡航前に計画していた通りホストファミリーと同じものを食べることが多かったです。
オランダでの朝食と昼食は、ハムやチーズのオープンサンドと牛乳といったシンプルなメニューがほとんど。でも夕食は、野菜をたくさん使った栄養バランスのいい料理を作っていました。一緒にキッチンに立って料理のお手伝いもしたので、作り方を学べたのもうれしかったです」

片所さんが特に気に入った料理は、アップルパイだったそう。ビスケット生地の土台に、スライスしたリンゴをバラの花びらのように敷き詰めて焼き上げます。日本で作るときは「紅玉」を使うと現地の味に近く仕上がるのだとか。

――身体の変化を感じることはありましたか?

「日本での食生活とはまったく違う3週間だったので、最初は体調に支障が出るのではないかと心配していたのですが、特に問題なく健康に過ごせました(笑)。ただ腸内細菌を調べてみると、渡航前と渡航後では変化が見られました」

――腸内細菌?

「渡航前と渡航後に便を採取して、バイオ系の企業に腸内細菌の解析を依頼したんです。帰国するときマリケも一緒に日本へ遊びに来たので、彼女の腸内細菌も検査しました。
腸内細菌には、俗に『デブ菌』『痩せ菌』と呼ばれているものがあって。前者が多いと太りやすく、後者が多いと痩せやすい身体になるといわれているのですが、私は渡航後に痩せ菌が減り、デブ菌が増えてしまっていました。
でも3週間同じ食生活をしていたマリケは、痩せ菌が多かったんです。オランダにはすらっとしたスタイルの人が多い印象でしたが、もともとの体質が関係しているのかもしれません。日本人の腸内細菌環境に、西洋の食事はあまり合っていないという可能性もあります

腸内細菌の検査結果のグラフ。ピンク色の「バクテロイデーテス門」がいわゆる「痩せ菌」、水色の「ファーミキューテス門」が「デブ菌」とのこと。同じ食生活をしていたにも関わらず、片所さんとマリケさんの腸内細菌の状況は異なっています。

――現地ではほかにどんな調査をしましたか?

「発酵食品についてどのような意識を持っているのか、30人ほどに聞き込み調査を行いました。クイズ形式で、いくつかの食品の中からどれが発酵食品かを当ててもらったり、好きな発酵食品を聞いたりしたんですけど、そのなかで『発酵』という言葉自体を知らない人が多いと気づいたんです」

――それは意外ですね! 日本では健康食として人気ですが……。

「健康にいいということでブームになったから、日本では有名になったんだと思います。でも、オランダの代表的な発酵食品であるチーズには油分も多く含まれているし、必ずしもヘルシーとは限りません。そのことも、認知度に関係しているのかもしれないと思っています」

ホストファミリーのみなさんと一緒に。マリケさんは日本にすごく興味があって、着物の着付けもできるのだそう。

着付けなんて、まさか? と思ったあなた。これが証拠写真です。これは「エルヘア」という仮装イベントでの一枚。片所さん(中央)の着物はマリケさん(右)のもので、着付けまでしてくれました。

自分の「楽しい」が基準。興味のままに、大学生活を満喫しよう

――さて、ここからは学生生活について聞かせてもらいたいと思います。京都大学のいいところって、なんだと思いますか?

「やりたいことができる環境ですね。ILASセミナーやおもろチャレンジがあったので、私は海外に行くことができました。
ただ、その環境を活かすためには、自分でやりたいことを見つける必要があります。私の両親も京大生だったんですけど、入学するとき『大学に期待しすぎるな』って言われたんですね(笑)。大学は、あくまでも学ぶ環境を与えてくれるだけだと。確かに、自分から何かしようという意欲がないと、せっかくの環境も活かせないと思います」

――なるほど。大学の環境や制度を活かすためには、意欲に加えて「知る」ということも大事だと思うのですが、片所さんはどうやって情報をキャッチしていますか?

「人とのつながりをつくっておくのは大事ですね。おもろチャレンジのこともに先輩に教えてもらったので。私はサークルに入っているので、そこでもいろいろと情報交換をしています。同じことに興味を持っている人からの情報は、役立つことが多い気がします

蝶をはじめとした昆虫を研究するサークルに所属している片所さん。蝶が集まる植物について知るため、キャンパス北部にある、この「理学部植物園」によく足を運ぶのだそう。(注:理学部植物園は一般非公開)

――今後の学生生活の目標は?

「今年から、希望していた発酵生理及び醸造学研究室に配属されます。与えられたテーマを研究しながら、並行して自分の好きなことも調べていきたいです。
今すごく興味を持っているのは、海外の人の腸内細菌。最近知ったのですが、ジャングルの奥地などには、生まれてから一度も抗生物質を飲んだことがない人が暮らしているそうです。そうした人を調査すると、生まれつきの腸内細菌がわかるらしくて。
研究室にこもるだけじゃなくて、フィールドワークを含む研究をしていきたいです

――最後に、新入生や未来の大学生のみなさんにメッセージをお願いします。

「単位の取りやすさで受ける授業を選ぶ学生もいるのかもしれませんが、私は興味のままに、いろいろな授業を受けています。
基準は『自分が楽しめるかどうか』。好きなことを好きなだけ追求できるのが大学生なので、今しかできないことをするのがいいと思います」

片所さん、ありがとうございました!

(※京都大学体験型海外渡航支援制度 ~鼎会プログラム「おもろチャレンジ」~は2020年度で終了しています。)