フルーツのおいしさを科学する! ~果樹園芸学の世界へようこそ~

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こんにちは、「ザッツ・京大」編集部です。

まだまだ暑さが続きますが、季節はもうすぐ食欲の秋、実りの秋!

みなさんは京大の中に果樹園があるのをご存じでしょうか?

北部キャンパスにある農学・生命科学研究棟の裏手には、なんと! 果樹園が広がっているのです。

吉田キャンパス北部構内の北端には、実は、さまざまなフルーツの樹が植えられているんです!

果樹のお世話をしているのは、果樹園芸学研究室の学生さんたち。

果樹園芸学? いや、そもそも、フルーツの研究っていったい……? お話をうかがってみましょう!

全国でも希少!フルーツを専門とする研究室。

と、言うわけで、今回取材したのは農学研究科 果樹園芸学研究室の山根久代准教授。

いろいろとお話をうかがいました!

――さっそくですが先生、「果樹園芸学」ってどんなことをするんですか?

「私たちの研究室は、果実のなる樹=果樹を専門とする全国でも数少ない研究室です。果樹生産の基礎となる科学を追求するだけでなく、新しい栽培技術や利用技術の開発など応用的な分野にも取り組んでいます」

――果樹園ではたくさんのフルーツが栽培されていますね。

「柿やブドウ、桃、梅など、さまざまな果樹があります。特にこの研究室は柿の研究が有名で、174品種の柿が200本以上植えられています

――柿の品種ってそんなにあるんですね……! 山根先生はどんなフルーツを研究しているんですか?

今、取り組んでいるのは、ブルーベリーとライチです。もともと15年ほど前から、モモ、ウメ、サクランボやリンゴを対象に、植物の休眠現象に関する基礎的な研究を行っているのですが、もう少し生産や消費に近い応用的な技術開発もできればと、数年前からブルーベリーとライチの研究も始めました」

――なんともオシャレな2種! どうしてブルーベリーとライチを選んだんですか?

日本で育てられている果樹の多くは、カキやウンシュウミカンなど日本在来のものや、リンゴなどの明治時代に西洋から苗を輸入して栽培が始まったものです。でもブルーベリーは歴史が浅くて、日本に入ってきたのは1950年代以降。だから研究があまり進んでおらず、まだわかっていないことが多いので、いろんな可能性があるんじゃないかと思って選びました」

――ミステリアスさに惹かれたんですね。ライチも最近入ってきたフルーツという感じがします。

ライチなどの熱帯果樹は、今まで日本では育てられなかったんですが、温暖化の影響で今後はビニールハウスで育てられるんじゃないかということで、栽培の機運が高まってきています。例えば宮崎県はマンゴーに力を入れていて、かなり成果を上げていますよね。マンゴーに続く次の熱帯果樹は何か、と国も注力しているのが実はライチ。最近は九州で国産ライチの栽培が始まっています」

今回の取材はオンラインで行いました。

 

科学の力でおいしさへの最短経路を探る!

――具体的にどんなことを研究しているんですか?

「ブルーベリーについては、いくつかのテーマを設けてあらゆる側面から研究しています。例えば、ブルーベリーのおいしさは何によって決まるのか?ブルーベリーに馴染みの少ない日本人は、ブルーベリーの何に惹かれるのかを解明したいと思っています。甘さや酸味のバランス、香り、見た目、食感など、魅力的に感じるポイントがわかれば、日本人が好きなブルーベリーの品種を作ることができる。そのために、おいしさを科学する、見極めることにチャレンジしています

――「おいしさを科学する」ですか! なんだかワクワクします! でも、「おいしさ」を決める要素はどうやって調べるんですか?

「やっぱり判断するのは人の知覚になってくるので、実際に食べて評価してもらう官能試験を行います。今までにも専門家による評価はされているんですが、消費者の好き嫌いは実際に一般の人に評価してもらわないとわからない。その試験を今年やろうと準備しているところです」

実験用のブルーベリーを収穫。研究する植物の育成も、学生が行います。実が収穫できなければ実験もできないので(!)、大事な研究活動の一環です。

――それが解明できれば、もっと日本人好みのブルーベリーができるんですね。

「そうですね。ブルーベリーにはいろいろな品種があって、味や風味がけっこう違うんです。だから、良いところと良いところを足したりして、まだまだ改良できる部分があるんじゃないかと。最短経路でおいしさに近づく方法を見つけられたらと思っています

――他にどんな研究テーマがあるんですか?

「ブルーベリーは健康に良いっていうイメージがあると思うんですけど、アントシアニンという抗酸化作用を持つ成分が果実に含まれているんですね。そのアントシアニンの量を多くするなど、機能性成分をもっと高めることができないか、という研究をしています。他にも、ゲノム編集に関する研究などさまざまなテーマに取り組んでいます」

ブルーベリーの実験を行う山根先生。研究の醍醐味は日々のちょっとした発見です。

日本でも栽培できる! 熱帯果樹への熱い視線。

――では、ライチについてはどんな研究をしているんですか?

画像解析の技術を利用して、ライチの実を壊さずに品質を評価できないかという研究を進めています。ライチの品種の中には、種が小さくて食べられる実の部分が大きいタイプのものがあるんですが、外から見てもなかなか見分けがつかないんです。それを何とか実を壊さず評価したいと考えています」

――え!? 実を壊さずにわかるものなんですか?

「現地で生産者の方に聞くと、『外から見たらわかるよ』って言うんですよ。私たちが見てもわからないんですけど(笑)。でも彼らが見てわかるなら、画像のどこかにその特徴を表す何かがあるとも考えられるので。今は何枚も何枚もライチの写真を撮って、外から見た写真と中身の写真を機械学習によってマッチングさせて、人工知能(AI)が何かを捉えるかどうか調べているところです

 

ライチの実で実験を行う学生さん。実験は学生が主体的に取り組んでいます。

こちらが、楊貴妃が好んだとも言われているライチ。右の画像は、機械学習モデルがライチ画像のどこに注視しているかをヒートマップで表した図。多彩な研究が進められています!(画像提供:大迫祐太朗 農学研究科果樹園芸学分野博士課程学生)

――なるほど……。今後新たに研究したいフルーツはありますか?

これから始めたいと考えているのはアボカド。ライチと同じく熱帯果樹で、輸入量がどんどん増えていて、最近では愛媛県が国産アボカドを作ろうとすごく力を入れています。今後はアボカドでも、画像解析の技術を使って、実を壊さずに熟し具合を調べられないかと考えています。なにしろ、アボカドって、切ってみたら熟し過ぎて黒くなっていたり、逆にまだ早くて硬かったりして、がっかりすることがよくありますよね」

開いて初めて真実を見せるアボカド。食べ頃かと思いきや、黒くなりはじめていたり……、一筋縄ではいきません。

――めちゃめちゃ、あります。あるあるです(笑)。買う時に色を見てみたり、触ったり。でも、切ってみるまでよくわからなくて……。

「(笑)。難しいですよね。だから例えば、スマートフォンやタブレットをかざして人工知能(AI)が判定する『アボカド食べ頃判定アプリ』とか、将来できたら良いなと思っています

一人ひとりが主人公。自ら考えるからこそ研究は面白い!

――日々どうやって研究を進めているんですか?

「20代の頃は、一日中、自分で実験していたんですけど、今は講義なども担当しているのでなかなか時間が取れなくて。だから最近は学生が主体ですね。私たちの研究室では、チーム制ではなく1学生1テーマでやっているので、それぞれが全く違うテーマに取り組んでいるんです。学生自身が主体となってアイデアを出して実験を進めていくので、一人ひとりが主人公という感じですね

――それはやりがいがありそうですね! 研究室はどんな雰囲気ですか?

私たちの研究室の特徴の一つが国際的なこと。毎年何人か留学生が在籍していますし、ミーティングも英語で行います。学生たちには国際感覚を養ってもらいたいので、国際シンポジウムでの成果発表にも積極的にチャレンジするように働きかけています。学生にとっても発表を目指すことがモチベーションになっているようですね」

――国際的な舞台で発表するチャンスがあるのは魅力的ですね。ちなみに、先生が思う「京大の特徴」はありますか?

「やっぱり、この自由さ。自由に研究テーマを考えて、自分が主体となって研究に携わることができる環境は、京大ならではだと思います。人からこうしなさいって言われるんじゃなくて、自ら考えることができる。自分で考えたほうが研究は絶対面白いと思うので。いろいろチャレンジできるのが魅力だと思います」

国際色豊かな果樹園芸学研究室のメンバー。撮影時にいなかった学生さんも、「誰一人“撮り”残さない」SDGs的な集合写真。(果樹園芸学研究室のWebサイトはコチラ

のめり込んでいった研究の世界。続ければ道は開ける!

――ところで、先生はどうして研究者の道を選んだんですか?

実は、研究者になりたいなんて、全然思ってなかったんです(笑)。農学部の場合は学部の4年生から研究室に所属するんですけど、その時に取り組んだ研究テーマが面白かったんですね。当時はサクランボについて研究していました。朝から晩まで実験して、家には寝に帰るだけみたいな感じで。毎日毎日、今日はこの実験をしよう、結果が出たからこれを基に明日はこうしよう、そんなことを続けていくうちに、気が付いたら博士課程まで進んでいました。いつの間にか研究にのめり込んでいたんですね」

――まさに研究漬けの青春……! 先生にとって研究の面白さはどんなところですか?

「本来は、誰も見つけていなかった新しいことを世界で最初に見つけたとか、そういうのが研究の面白さだと思うんですけど、そんなことって数年に1回くらいなので。私の場合は、例えばブルーベリーに薬剤を処理したら成熟が1日早まったとか、そういう小さな発見でも、おーっ!と思って楽しめるので。梅が開花していく様子を毎日見ているだけでも楽しいし。何気ない日々の研究生活を楽しんでいます(笑)」

――(笑)。でも、なかなか思うようにいかないこともありますよね?

「そうですね。ただ、何か決まっている結果が出てくるのも私は面白くない(笑)。そんな思い通りにいかんよなーという感じで、日々やっています。自然が相手というだけで大変なんですよ。その反面、同じ果樹でも品種が異なると全然違う反応を見せることもあって、植物は奥が深いって思いますね

――かつては全く想像していなかった「研究者」になってみて、自分のどんなところが研究者に向いていると思いますか?

「そうですね。私より賢い人や器用な人はいくらでもいるけど、どうして自分は研究者としてやってこられたのかなーと考えると、途中で投げ出さない、いろいろあってもずーっと続ける、そういう力があったのかなと思います

――最後に、記事を読んでいる方々に向けてメッセージをいただけますか?

何かをやることになったら、少しくらいの困難があっても続けてみることが大事です。続けていれば見え方が変わってくるかもしれない。流れに身を任せてやっていくうちに道が開けることもありますから」

夢中で取り組んでいるうちに、いつの間にか研究者になっていたという山根先生。

先生の研究のさらなる発展が楽しみです!

山根先生、どうもありがとうございました!

ちなみに国産のものだと、ブルーベリーは6月~8月頃、ライチは6月~7月頃、アボカドは10月~12月頃が旬とのこと。

みなさんも、ぜひスーパーでチェックしてみてくださいね!

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